「フェロモン」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0002217 市川 眞澄]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0002217 市川 眞澄]</font><br>
'' 公益財団法人東京都医学総合研究所 ''<br>
'' 公益財団法人東京都医学総合研究所 ''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月11日 原稿完成日:2015年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月11日 原稿完成日:2015年8月17日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/ichirofujita 藤田 一郎](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br></div>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/ichirofujita 藤田 一郎](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br></div>


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[[image:フェロモン2.png|thumb|300px|'''図2.哺乳類のフェロモン候補'''<br>上から、[[wj:アジアゾウ|ゾウ]]([[w:(Z)-7-dodecen-1-yl acetate|ドデシニルアセテート]])、[[wj:ヤギ|ヤギ]]([[w:4-ethyloctanal|エチルオクタナール]])、ブタ([[wj:アンドロステノン|アンドロステノン]])、ヒト(PDD, [[w:pregna-4,20-diene-3,6-dione|pregna-4,20-diene-3,6-dione]])、マウス([[w:2-sec-Butyl-4,5-dihydrothiazole|ブチルジヒドロチアゾール]]、[[w:3,4-dehydro-exo-brevicomin|デヒドロブレビコミン]])]]
[[image:フェロモン2.png|thumb|300px|'''図2.哺乳類のフェロモン候補'''<br>上から、[[wj:アジアゾウ|ゾウ]]([[w:(Z)-7-dodecen-1-yl acetate|ドデシニルアセテート]])、[[wj:ヤギ|ヤギ]]([[w:4-ethyloctanal|エチルオクタナール]])、ブタ([[wj:アンドロステノン|アンドロステノン]])、ヒト(PDD, [[w:pregna-4,20-diene-3,6-dione|pregna-4,20-diene-3,6-dione]])、マウス([[w:2-sec-Butyl-4,5-dihydrothiazole|ブチルジヒドロチアゾール]]、[[w:3,4-dehydro-exo-brevicomin|デヒドロブレビコミン]])]]


 地球上には様々な[[哺乳類]]が生活しているが、その大半は[[wj:ネズミ|ネズミ]]や[[wj:タヌキ|タヌキ]]のような[[wj:夜行性|夜行性]]であり、そのため[[視覚]]よりは[[嗅覚]]が重要な役割を果たすものが多い。図2に、代表的な哺乳類のフェロモンとして報告されている物質のいくつかを示す。
 地球上には様々な[[哺乳類]]が生活しているが、その大半は[[wj:ネズミ|ネズミ]]や[[wj:タヌキ|タヌキ]]のような[[wj:夜行性|夜行性]]であり、そのため[[視覚]]よりは[[嗅覚]]が重要な役割を果たすものが多い。'''図2'''に、代表的な哺乳類のフェロモンとして報告されている物質のいくつかを示す。


* [[w:(Z)-7-dodecen-1-yl acetate|ドデシニルアセテート]]はゾウの雌から放出され雄の[[wj:アジアゾウ|ゾウ]]にフレーメンを誘起する<ref name=ref2><pubmed>9279465</pubmed></ref>。フレーメンとは[[wj:ウマ|ウマ]]や[[wj:ヒツジ|ヒツジ]]の雄が雌の[[wj:尿|尿]]や[[wj:外陰部|外陰部]]の匂いをかいだあと頭を上げ[[wj:上唇|上唇]]をめくりあげ、目をむいてしばらく陶酔に浸るようにじっとその姿勢を保ち続ける行動が有名である。ゾウでは長い鼻を高々と上げるポーズをとる。ドデシニルアセテートはウマ、ヒツジには効果がない。
* [[w:(Z)-7-dodecen-1-yl acetate|ドデシニルアセテート]]はゾウの雌から放出され雄の[[wj:アジアゾウ|ゾウ]]にフレーメンを誘起する<ref name=ref2><pubmed>9279465</pubmed></ref>。フレーメンとは[[wj:ウマ|ウマ]]や[[wj:ヒツジ|ヒツジ]]の雄が雌の[[wj:尿|尿]]や[[wj:外陰部|外陰部]]の匂いをかいだあと頭を上げ[[wj:上唇|上唇]]をめくりあげ、目をむいてしばらく陶酔に浸るようにじっとその姿勢を保ち続ける行動が有名である。ゾウでは長い鼻を高々と上げるポーズをとる。ドデシニルアセテートはウマ、ヒツジには効果がない。
* [[w:4-ethyloctanal|エチルオクタナール]]は[[wj:シバヤギ|シバヤギ]]の雄効果(詳細は後述)を引き起こす。[[wj:東京大学|東京大学]]農学部の森らにより報告された<ref name=ref3><pubmed>24583018</pubmed></ref>。脳内の[[視床下部]]に作用し、[[性腺刺激ホルモン放出ホルモン]]([[gonadotropin releasing hormone]], [[GnRH]])の[[分泌]]さらには[[下垂体]]からの[[黄体ホルモン]]の分泌を制御し、排卵を誘起する。
* [[w:4-ethyloctanal|エチルオクタナール]]は[[wj:シバヤギ|シバヤギ]]の雄効果(詳細は後述)を引き起こす。[[wj:東京大学|東京大学]]農学部の森らにより報告された<ref name=ref3><pubmed>24583018</pubmed></ref>。脳内の[[視床下部]]に作用し、[[性腺刺激ホルモン放出ホルモン]]([[gonadotropin releasing hormone]], [[GnRH]])の[[分泌]]さらには[[下垂体]]からの[[黄体ホルモン]]の分泌を制御し、排卵を誘起する。
* [[wj:アンドロステノン|アンドロステノン]]は[[wj:ブタ|ブタ]]のフェロモンである。雄ブタの[[顎下腺]]から、発情期の雌が交尾姿勢をとるように誘引する効果を指標に見つけられた<ref name=ref4><pubmed>7716200</pubmed></ref>。このフェロモンは合成され「ボアメイト」という名前のスプレーとして市販されており、ブタの[[wj:人工授精|人工授精]]の際に利用されて繁殖率の向上に役立っている。実用化されたことから有名になった。
* [[wj:アンドロステノン|アンドロステノン]]は[[wj:ブタ|ブタ]]のフェロモンである。雄ブタの[[顎下腺]]から、発情期の雌が交尾姿勢をとるように誘引する効果を指標に見つけられた<ref name=ref4><pubmed>7716200</pubmed></ref>。このフェロモンは合成され「ボアメイト」という名前のスプレーとして市販されており、ブタの[[wj:人工授精|人工授精]]の際に利用されて繁殖率の向上に役立っている。実用化されたことから有名になった。
* [[w:pregna-4,20-diene-3,6-dione|プレグナ-4,20-ジエン-3,6-ジオン]] (PDD)は[[ヒト]]のフェロモンとして報告されたである<ref name=ref5><pubmed>1892788</pubmed></ref>。人の[[皮膚]]から抽出され、自律機能や[[脳波]]に影響を与えると述べられている。[[ステロイドホルモン]]の生合成経路にある[[プレグネノロン]]に大変よく似ている。[[フェロモン#ヒトのフェロモン候補物質|ヒトのフェロモン候補物質]]で再度解説する。
* [[w:pregna-4,20-diene-3,6-dione|プレグナ-4,20-ジエン-3,6-ジオン]] (PDD)は[[ヒト]]のフェロモンとして報告されている<ref name=ref5><pubmed>1892788</pubmed></ref>。人の[[皮膚]]から抽出され、自律機能や[[脳波]]に影響を与えると述べられている。[[ステロイドホルモン]]の生合成経路にある[[プレグネノロン]]に大変よく似ている。[[フェロモン#ヒトのフェロモン候補物質|ヒトのフェロモン候補物質]]で再度解説する。
* [[w:2-sec-Butyl-4,5-dihydrothiazole|ブチルジヒドロチアゾール]]、[[w:3,4-dehydro-exo-brevicomin|デヒドロブレビコミン]]は、[[マウス]]のフェロモンである<ref name=ref6><pubmed>3856883</pubmed></ref>。攻撃フェロモンとして知られている。詳細は[[フェロモン#攻撃フェロモン|攻撃フェロモン]]で述べる。 
* [[w:2-sec-Butyl-4,5-dihydrothiazole|ブチルジヒドロチアゾール]]、[[w:3,4-dehydro-exo-brevicomin|デヒドロブレビコミン]]は、[[マウス]]のフェロモンである<ref name=ref6><pubmed>3856883</pubmed></ref>。攻撃フェロモンとして知られている。詳細は[[フェロモン#攻撃フェロモン|攻撃フェロモン]]で述べる。 


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