「ホスファチジルイノシトール」の版間の差分

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== '''要約''' ==
== '''要約''' ==
 
ホスファチジルイノシトール(ホスホイノシタイド)は細胞性粘菌から哺乳類にいたるまで広く存在するリン脂質である。ホスファチジルイノシトールは7種類のイノシトール環を持つリン脂質の総称であり、細胞膜、ゴルジ体膜、エンドソームなど細胞膜の構成成分である。シグナル伝達のセカンドメッセンジャー産生を介してシグナル伝達を行うのに加えて、多くのタンパク質と結合して、これらのタンパク質を膜に局在させる働きを持つ。ホスファチジルイノシトールはキナーゼやホスファターゼによって精巧な代謝制御を受けており、これは細胞増殖、細胞内物質輸送、細胞骨格制御に必須である。また、この代謝異常はがんや糖尿病など多くの疾患の原因となる。 {{Chembox | verifiedrevid = 409517204 | ImageFile = Phosphatidylinositol.png | ImageSize = | IUPACName = | OtherNames = PI, PtdIns | Section1 = {{Chembox Identifiers | CASNo_Ref = {{cascite|correct|??}} | CASNo = | PubChem = | SMILES = }} | Section2 = {{Chembox Properties | Formula = C<sub>47</sub>H<sub>83</sub>O<sub>13</sub>P | MolarMass = 886.56 g/mol, neutral with fatty acid composition - 18:0, 20:4 | Appearance = | Density = | MeltingPt = | BoilingPt = | Solubility = }} | Section3 = {{Chembox Hazards | MainHazards = | FlashPt = | Autoignition = }} }} {{TOC limit|limit=2}}  
ホスファチジルイノシトール(ホスホイノシタイド)は細胞性粘菌から哺乳類にいたるまで広く存在するリン脂質である。ホスファチジルイノシトールは7種類のイノシトール環を持つリン脂質の総称であり、細胞膜、ゴルジ体膜、エンドソームなど細胞膜の構成成分である。シグナル伝達のセカンドメッセンジャー産生を介してシグナル伝達を行うのに加えて、多くのタンパク質と結合して、これらのタンパク質を膜に局在させる働きを持つ。ホスファチジルイノシトールはキナーゼやホスファターゼによって精巧な代謝制御を受けており、これは細胞増殖、細胞内物質輸送、細胞骨格制御に必須である。また、この代謝異常はがんや糖尿病など多くの疾患の原因となる。 {{Chembox | verifiedrevid = 409517204 | ImageFile = Phosphatidylinositol.png | ImageSize = | IUPACName = | OtherNames = PI, PtdIns | Section1 = {{Chembox Identifiers | CASNo_Ref = {{cascite|correct|??}} | CASNo = | PubChem = | SMILES = }} | Section2 = {{Chembox Properties | Formula = C<sub>47</sub>H<sub>83</sub>O<sub>13</sub>P | MolarMass = 886.56 g/mol, neutral with fatty acid composition - 18:0, 20:4 | Appearance = | Density = | MeltingPt = | BoilingPt = | Solubility = }} | Section3 = {{Chembox Hazards | MainHazards = | FlashPt = | Autoignition = }} }} {{TOC limit|limit=2}}  


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=='''構造と種類'''==  ホスファチジルイノシトールは正確には1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-1-myo-イノシトールという名称の脂質であり、[[wikipedia:ja:脂肪酸|脂肪酸]]部分と[[wikipedia:ja:イノシトール|イノシトール]]環部分からなる。脂肪酸部分は二つの[[wikipedia:ja:アシル基|アシル基]]からなり、組成は1-[[wikipedia:ja:ステアリン酸|ステアロイル]]-2-[[wikipedia:ja:アラキドン酸|アラキドノイル]]型が多い。  ホスファチジルイノシトールのイノシトール環の1-3個の[[wikipedia:ja:ヒドロキシル基|ヒドロキシル基]]に[[wikipedia:ja:リン酸|リン酸]]基が[[wikipedia:ja:エステル|エステル]]結合した分子(ホスホイノシタイド)も生体内には見いだされる。従って、ほ乳類の含有するホスホイノシタイドは、リン酸機の個数によって、PI(ホスファチジルイノシトール)、PIP(ホスファチジルイノシトール一リン酸)、PIP<sub>2</sub>(ホスファチジルイノシトール二リン酸)とPIP<sub>3</sub>(ホスファチジルイノシトール三リン酸)から成り、このうちPIP、PIP2とPIP3のことを総称して(ポリ)ホスホイノシチドと呼ぶ。これらはそのリン酸基に位置によってさらに分類される。PIPには[[PI(3)P]](ホスファチジルイノシトール-3-一リン酸)、[[PI(4)P]](ホスファチジルイノシトール-4-一リン酸)、[[PI(5)P]](ホスファチジルイノシトール-5-一リン酸)の3種類が、PIP<sub>2</sub>には[[PI(3,4)P2|PI(3,4)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸)、[[PI(3,5)P2|PI(3,5)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-3,5-二リン酸)[[PI(4,5)P2|PI(4,5)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸)の3種類が存在する。[[PI(3,4,5)P3|PI(3,4,5)P<sub>3</sub>]]はイノシトール環の3、4、5位の3カ所にリン酸基が入ったもので1種類のみ存在する。  ホスファチジルイノシトールが見つかって60年以上が経過しているが、1988年のCantleyによる[[PI3キナーゼ]]の同定によって、現在は7種類のホスホイノシタイドが見つかっている<ref name="ref1"><pubmed>2467744</pubmed></ref>。ホスホイノシタイドは全リン脂質量の0.1%〜1%を占めているが、これはホスファチジルイノシトールが5%〜10%を占めるのに比べると非常に少ない。  特にホスホイノシチドには様々な生理活性が知られており、本項目では、それらを中心に解説する。  
=='''構造と種類=='''&nbsp; ホスファチジルイノシトールは正確には1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホリル-1-myo-イノシトールという名称の脂質であり、[[wikipedia:ja:脂肪酸|脂肪酸]]部分と[[wikipedia:ja:イノシトール|イノシトール]]環部分からなる。脂肪酸部分は二つの[[wikipedia:ja:アシル基|アシル基]]からなり、組成は1-[[wikipedia:ja:ステアリン酸|ステアロイル]]-2-[[wikipedia:ja:アラキドン酸|アラキドノイル]]型が多い。  ホスファチジルイノシトールのイノシトール環の1-3個の[[wikipedia:ja:ヒドロキシル基|ヒドロキシル基]]に[[wikipedia:ja:リン酸|リン酸]]基が[[wikipedia:ja:エステル|エステル]]結合した分子(ホスホイノシタイド)も生体内には見いだされる。従って、ほ乳類の含有するホスホイノシタイドは、リン酸機の個数によって、PI(ホスファチジルイノシトール)、PIP(ホスファチジルイノシトール一リン酸)、PIP<sub>2</sub>(ホスファチジルイノシトール二リン酸)とPIP<sub>3</sub>(ホスファチジルイノシトール三リン酸)から成り、このうちPIP、PIP2とPIP3のことを総称して(ポリ)ホスホイノシチドと呼ぶ。これらはそのリン酸基に位置によってさらに分類される。PIPには[[PI(3)P]](ホスファチジルイノシトール-3-一リン酸)、[[PI(4)P]](ホスファチジルイノシトール-4-一リン酸)、[[PI(5)P]](ホスファチジルイノシトール-5-一リン酸)の3種類が、PIP<sub>2</sub>には[[PI(3,4)P2|PI(3,4)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-3,4-二リン酸)、[[PI(3,5)P2|PI(3,5)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-3,5-二リン酸)[[PI(4,5)P2|PI(4,5)P<sub>2</sub>]](ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸)の3種類が存在する。[[PI(3,4,5)P3|PI(3,4,5)P<sub>3</sub>]]はイノシトール環の3、4、5位の3カ所にリン酸基が入ったもので1種類のみ存在する。  ホスファチジルイノシトールが見つかって60年以上が経過しているが、1988年のCantleyによる[[PI3キナーゼ]]の同定によって、現在は7種類のホスホイノシタイドが見つかっている<ref name="ref1"><pubmed>2467744</pubmed></ref>。ホスホイノシタイドは全リン脂質量の0.1%〜1%を占めているが、これはホスファチジルイノシトールが5%〜10%を占めるのに比べると非常に少ない。  特にホスホイノシチドには様々な生理活性が知られており、本項目では、それらを中心に解説する。  


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== 生合成経路と機能 ==
== 生合成経路と機能 ==


=== PI(4)P  ===
=== PI(4)P  ===
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