「ボツリヌス毒素」の版間の差分

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==臨床症状==
==臨床症状==
 現在、ボツリヌス中毒は発病機序により[[wj:ボツリヌス菌#ボツリヌス症|食餌性ボツリヌス症]](foodborne botulism)、乳児ボツリヌス症(infant botulism)、[[wj:ボツリヌス菌#ボツリヌス症|創傷ボツリヌス症]](wound botulism)、および[[wj:ボツリヌス菌#ボツリヌス症|成人腸管定着性ボツリヌス症]](adult colonization botulism)の4型に分類されている。
 現在、ボツリヌス中毒は発病機序により食餌性ボツリヌス症(foodborne botulism)、乳児ボツリヌス症(infant botulism)、創傷ボツリヌス症(wound botulism)、および成人腸管定着性ボツリヌス症(adult colonization botulism)の4型に分類されている。


===食餌性ボツリヌス症===
===食餌性ボツリヌス症===
 症状は通常喫食後12~72時間後に出現するが、14日後に発症した例もある。一般的には潜伏期が短いほど重篤な症状を示すことが多い。食餌性ボツリヌス症の場合(特にE型中毒)、特徴的な神経症状が出現する前に嘔気、嘔吐を呈することがある。これらは乳児ボツリヌス症や創傷ボツリヌス症では見られないことから非特異的な症状と思われる。その後、脱力感、倦怠感、めまいなどの症状が現れ、さらに視力障害(弱視、複視、眼瞼下垂)、発声困難、嚥下困難、口渇、嗄声が現れる。消化器症状としては、一時的な下痢に続く重度の便秘、腹部膨満、腹痛が見られる。他の症状としては、尿閉、血圧低下が見られる。筋麻痺も著明で握力低下、歩行困難になる。体温は正常である。死亡の原因は呼吸失調による。症状は最終的には完全に回復するが、軽度の脱力感、視力障書、便秘などは数か月間続く。致死率は他の食中毒と比べてかなり高い。
 症状は通常喫食後12~72時間後に出現するが、14日後に発症した例もある。一般的には[[wj:潜伏期|潜伏期]]が短いほど重篤な症状を示すことが多い。食餌性ボツリヌス症の場合(特にE型中毒)、特徴的な神経症状が出現する前に嘔気、嘔吐を呈することがある。これらは乳児ボツリヌス症や創傷ボツリヌス症では見られないことから非特異的な症状と思われる。その後、[[脱力感]]、[[倦怠感]]、[[めまい]]などの症状が現れ、さらに[[視力障害]]([[弱視]]、[[複視]]、[[眼瞼下垂]])、[[発声]]困難、[[嚥下]]困難、口渇、嗄声が現れる。消化器症状としては、一時的な下痢に続く重度の便秘、腹部膨満、腹痛が見られる。他の症状としては、[[wj:尿閉|尿閉]]、[[wj:血圧|血圧]]低下が見られる。筋麻痺も著明で握力低下、歩行困難になる。体温は正常である。死亡の原因は[[wj:呼吸|呼吸]]失調による。症状は最終的には完全に回復するが、軽度の脱力感、視力障書、便秘などは数か月間続く。致死率は他の食中毒と比べてかなり高い。


===乳児ボツリヌス症===
===乳児ボツリヌス症===
 乳児の腸管内で芽胞の発芽・増殖に伴って産生された毒素により発症する疾病である。症状は便秘に始まり、吸乳力の低下、全身筋肉緊張の低下が見られる。頚部筋肉の弛緩により頭部が支えられなくなる。泣き声が弱いことも顕著な症状である。顔面が無表情になり、瞳孔散大、眼瞼下垂、対光反射の緩慢などボツリヌス食中毒と同様の症状が現れる。これらの症状は長期間持続し、6週間あるいはそれ以上続くこともある。呼吸障害が生じ重症化すると死に至ることもあるが、一般には食餌性ボツリヌス症と比べて致死率は2 %程度と低い。
 乳児の腸管内で芽胞の発芽・増殖に伴って産生された毒素により発症する疾病である。症状は便秘に始まり、吸乳力の低下、全身筋肉緊張の低下が見られる。頚部筋肉の弛緩により頭部が支えられなくなる。泣き声が弱いことも顕著な症状である。顔面が無表情になり、[[瞳孔]]散大、眼瞼下垂、[[対光反射]]の緩慢などボツリヌス食中毒と同様の症状が現れる。これらの症状は長期間持続し、6週間あるいはそれ以上続くこともある。呼吸障害が生じ重症化すると死に至ることもあるが、一般には食餌性ボツリヌス症と比べて致死率は2 %程度と低い。


===創傷ボツリヌス症===
===創傷ボツリヌス症===
 患者の創傷部位で芽胞が発芽、増殖し産生された毒素により発症する。米国では麻薬患者の注射痕から菌の感染が起こる事例が多数報告されている。
 患者の創傷部位で芽胞が発芽、増殖し産生された毒素により発症する。米国では[[麻薬中毒]]患者の注射痕から菌の感染が起こる事例が多数報告されている。


===成人腸管定着性ボツリヌス症===
===成人腸管定着性ボツリヌス症===
 1歳以上の子供や成人でも乳児ボツリヌス症と同様に、腸管内で芽胞が発芽、増殖して発病することが報告されている。起因は外科手術や抗菌剤の投与によって腸管内の細菌叢が変化することによると考えられている。
 1歳以上の子供や成人でも乳児ボツリヌス症と同様に、腸管内で芽胞が発芽、増殖して発病することが報告されている。起因は外科手術や[[wj:抗菌剤|抗菌剤]]の投与によって[wj:腸管細菌叢|腸管細菌叢]]が変化することによると考えられている。


==構造==
==構造==