「マイクロフィラメント」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
25行目: 25行目:
 球状アクチンが3量体となりフィラメント重合のための核を形成すると、ATP型アクチンはプラス端へ重合してフィラメントを伸長する。ATP型アクチンの重合によるフィラメント伸長がATP加水分解よりも速ければ、フィラメントプラス端はATP型アクチンのままである。そして、フィラメント内でADP型に変換されたアクチンは、マイナス端から脱重合して取り除かれる。このように、アクチンフィラメントのATP加水分解活性が、プラス端での重合とマイナス端での脱重合(トレッドミリング)に重要な役割をはたしている。  
 球状アクチンが3量体となりフィラメント重合のための核を形成すると、ATP型アクチンはプラス端へ重合してフィラメントを伸長する。ATP型アクチンの重合によるフィラメント伸長がATP加水分解よりも速ければ、フィラメントプラス端はATP型アクチンのままである。そして、フィラメント内でADP型に変換されたアクチンは、マイナス端から脱重合して取り除かれる。このように、アクチンフィラメントのATP加水分解活性が、プラス端での重合とマイナス端での脱重合(トレッドミリング)に重要な役割をはたしている。  


 一般的に、細胞内のアクチンフィラメントはプラス端を細胞周辺部へ向けて配列している。神経突起先端部などの移動細胞のアクチンフィラメントは、トレッドミリングに加えて、ミオシンの働きによりマイナス端方向へ移動している<ref><pubmed> 8607995 </pubmed></ref>。この細胞先導端から細胞中心部への動きを、アクチンフィラメント後方移動と呼ぶ。アクチンフィラメントのプラス端の伸長速度と後方移動速度のバランスが、細胞先導端の運動(突出または退縮)を決定する。
 一般的に、細胞内のアクチンフィラメントはプラス端を細胞周辺部へ向けて配列している。神経突起先端部などの移動細胞のアクチンフィラメントは、トレッドミリングに加えて、ミオシンの働きによりマイナス端方向へ移動している<ref><pubmed> 8607995 </pubmed></ref>。この細胞先導端から細胞中心部への動きを、アクチンフィラメント後方移動と呼ぶ。アクチンフィラメントのプラス端の伸長速度と後方移動速度とのバランスが、細胞先導端の運動(突出または退縮)を決定する。


== 重合制御  ==
== 重合制御  ==
31行目: 31行目:
 球状アクチンに結合する蛋白質プロフィリンは、ADPをATPへ交換してATP型アクチンの生成を触媒し、アクチンフィラメントのプラス端での重合反応を促進する。一方、アクチン重合反応はキャッピング蛋白質により負に制御されている。キャッピング蛋白質がフィラメントのプラス端を覆うと、新たな球状アクチンがプラス端に結合できず重合が阻害される。  
 球状アクチンに結合する蛋白質プロフィリンは、ADPをATPへ交換してATP型アクチンの生成を触媒し、アクチンフィラメントのプラス端での重合反応を促進する。一方、アクチン重合反応はキャッピング蛋白質により負に制御されている。キャッピング蛋白質がフィラメントのプラス端を覆うと、新たな球状アクチンがプラス端に結合できず重合が阻害される。  


 アクチンフィラメントの重合制御、すなわち重合可能なプラス端の形成には主として以下の3つのメカニズムが関与すると考えられている<ref><pubmed> 12600310 </pubmed></ref>:(1)アクチン重合核形成。既存のフィラメントの側面にArp2/3(actin-related protein 2/3)複合体が結合し、そこを新たな重合核として分岐したフィラメントが伸長する。(2)フィラメント切断。ADF(actin depolymerizing factor)/コフィリンがADP型フィラメントを切断して重合可能なプラス端を露出する。(3)アンキャッピング。プラス端を覆うキャッピング蛋白質をはずして重合を可能にする。
 アクチンフィラメントの重合制御、すなわち重合可能なプラス端の形成には主として以下の3つのメカニズムが関与すると考えられている<ref><pubmed> 12600310 </pubmed></ref>:(1)アクチン重合核形成。既存のフィラメントの側面にArp2/3(actin-related protein 2/3)複合体が結合し、そこを新たな重合核として分岐したフィラメントが伸長する。(2)フィラメント切断。ADF(actin depolymerizing factor)/コフィリンがADP型フィラメントを切断して、重合可能なプラス端を露出する。(3)アンキャッピング。プラス端を覆うキャッピング蛋白質をはずして重合を可能にする。


 このようなアクチンフィラメントの動態は、主としてRhoファミリーGTP結合蛋白質の下流シグナルにより制御されている<ref><pubmed> 18719708 </pubmed></ref>。  
 このようなアクチンフィラメントの動態は、主としてRhoファミリーGTP結合蛋白質の下流シグナルにより制御されている<ref><pubmed> 18719708 </pubmed></ref>。