「ミオクローヌス」の版間の差分

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|+表1. ミオクローヌスと鑑別を有する不随意運動と主な鑑別点 (文献<ref name=人見健文2016></ref>2から改変引用)
|+表1. ミオクローヌスと鑑別を有する不随意運動と主な鑑別点 (文献<ref name=人見健文2016></ref>2から改変引用)
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! 不随意運動の種類 !! 鑑別点
'''1. 線維束攣縮''':ミオクローヌスでは関節運動をともなうが、線維束攣縮は関節運動をともなわない。表面筋電図での筋活動はミオクローヌスより振幅が小さく、持続時間も短い。<br>
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'''2. ミオキミア''':ミオクローヌスでは関節運動をともなうが、ミオキミアは関節の運動をともなわない。表面筋電図での筋活動は線維束攣縮と同様に低振幅で持続時間は短い。<br>
|'''線維束攣縮'''||ミオクローヌスでは関節運動をともなうが、線維束攣縮は関節運動をともなわない。表面筋電図での筋活動はミオクローヌスより振幅が小さく、持続時間も短い。<br>
'''3. 振戦''':ミオクローヌスが基本的に不規則な筋収縮であるのに対し、振戦は律動的な不随意運動である。表面筋電図では、ミオクローヌスでは主動筋と拮抗筋が同時に活動しているのに対して、多くの振戦では主動筋と拮抗筋が交互に活動することが観察される。<br>
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'''4. チック''':ミオクローヌスが1~2関節の一方向への単純な運動であるのに対し、チックは複数の関節に生じる多方向へ向かう運動の複雑な一連の組み合わせであることが多い。また、チックが随意的にある程度抑制可能である点も異なる。<br>
|'''ミオキミア'''||ミオクローヌスでは関節運動をともなうが、ミオキミアは関節の運動をともなわない。表面筋電図での筋活動は線維束攣縮と同様に低振幅で持続時間は短い。<br>
'''5. 舞踏運動''':四肢遠位部優位に出現する比較的素早い運動だが、ミオクローヌスに比べると滑らかな不随意運動である。表面筋電図では1~数秒単位の筋放電がバラバラに出現する。運動が断続的で複雑であることもミオクローヌスとの違いである。<br>
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'''6. バリズム''':上肢または下肢を近位から全体を振り回すような大きく激しい不随意運動である.比較的常同的で3Hz程度の周期性をもって現れることが多い。表面筋電図では四肢の近位筋に持続時間の長い筋放電を認める。運動が常同的、周期的で関節運動としてもやや複雑である点がミオクローヌスと異なる。
|'''振戦'''||ミオクローヌスが基本的に不規則な筋収縮であるのに対し、振戦は律動的な不随意運動である。表面筋電図では、ミオクローヌスでは主動筋と拮抗筋が同時に活動しているのに対して、多くの振戦では主動筋と拮抗筋が交互に活動することが観察される。<br>
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|'''チック'''||ミオクローヌスが1~2関節の一方向への単純な運動であるのに対し、チックは複数の関節に生じる多方向へ向かう運動の複雑な一連の組み合わせであることが多い。また、チックが随意的にある程度抑制可能である点も異なる。<br>
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|'''舞踏運動'''||四肢遠位部優位に出現する比較的素早い運動だが、ミオクローヌスに比べると滑らかな不随意運動である。表面筋電図では1~数秒単位の筋放電がバラバラに出現する。運動が断続的で複雑であることもミオクローヌスとの違いである。<br>
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|'''バリズム'''||上肢または下肢を近位から全体を振り回すような大きく激しい不随意運動である.比較的常同的で3Hz程度の周期性をもって現れることが多い。表面筋電図では四肢の近位筋に持続時間の長い筋放電を認める。運動が常同的、周期的で関節運動としてもやや複雑である点がミオクローヌスと異なる。
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 ミオクローヌスと診断後、その原因疾患の精査となる<ref name=Zutt2015></ref>7)。ミオクローヌスはさまざまな疾患や薬剤の副作用などで認められる('''表2''')<ref name=Brown2013><pubmed>23754854</pubmed></ref>10)。また原因疾患の一部では、原因遺伝子も判明している('''表3''')<ref name=Brown2013><pubmed>23754854</pubmed></ref>10)。最近の知見としては、良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの原因はSAMD12などの遺伝子のイントロンにおけるTTTCA あるいは TTTTA リピートの異常伸長であることが本邦から報告された<ref name=Ishiura2018><pubmed>29507423</pubmed></ref>11)。またリピートの異常伸長の程度とてんかん発作の発症年齢が逆相関すること(表現促進現象)も明らかとなった<ref name=Ishiura2018><pubmed>29507423</pubmed></ref>11)。このことは臨床的に報告されていた知見<ref name=Hitomi2012><pubmed>22150818</pubmed></ref>12)を裏付ける結果であった。
 ミオクローヌスと診断後、その原因疾患の精査となる<ref name=Zutt2015></ref>7)。ミオクローヌスはさまざまな疾患や薬剤の副作用などで認められる('''表2''')<ref name=Brown2013><pubmed>23754854</pubmed></ref>10)。また原因疾患の一部では、原因遺伝子も判明している('''表3''')<ref name=Brown2013><pubmed>23754854</pubmed></ref>10)。最近の知見としては、良性成人型家族性ミオクローヌスてんかんの原因はSAMD12などの遺伝子のイントロンにおけるTTTCA あるいは TTTTA リピートの異常伸長であることが本邦から報告された<ref name=Ishiura2018><pubmed>29507423</pubmed></ref>11)。またリピートの異常伸長の程度とてんかん発作の発症年齢が逆相関すること(表現促進現象)も明らかとなった<ref name=Ishiura2018><pubmed>29507423</pubmed></ref>11)。このことは臨床的に報告されていた知見<ref name=Hitomi2012><pubmed>22150818</pubmed></ref>12)を裏付ける結果であった。
{| class="wikitable"
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|+表2. ミオクローヌスの原因(文献10から改変引用)
|+表2. ミオクローヌスの原因(文献<ref name=Brown2013><pubmed>23754854</pubmed></ref>10から改変引用)
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! 病型 !! 原因
! 病型 !! 原因
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| '''ハンチントン病''' || IT15 (Huntingtin)
| '''ハンチントン病''' || IT15 (Huntingtin)
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| '''歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症''' (DRPLA) || Atrophin1
| '''歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA)''' || Atrophin1
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| '''ラフォラ病''' || EPM2A, EPM2B
| '''ラフォラ病''' || EPM2A, EPM2B
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| '''神経細胞内セロイドリポフスチン症''' (NCL) ||  
| '''神経細胞内セロイドリポフスチン症 (NCL)''' ||  
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| type 2 (late infantile type) || CLN2 (TPP1)
|  type 2 (late infantile type) || CLN2 (TPP1)
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| type 3 (juvenile type) || CLN3
|  type 3 (juvenile type) || CLN3
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| type 4 (adult type) || CLN4
|  type 4 (adult type) || CLN4
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| type 5 (late infantile Finnish variant type) || CLN5
|  type 5 (late infantile Finnish variant type) || CLN5
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| type 6 (variant late infantile type) || CLN6
|  type 6 (variant late infantile type) || CLN6
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| '''ゴーシェ病''' || GBA
| '''ゴーシェ病''' || GBA
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| '''良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん''' (一部)  || SAMD12
| '''良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん''' (一部)  || SAMD12
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== 治療 ==
== 治療 ==
 それぞれの患者の病態に応じて治療を選択する。しかし原因疾患により薬剤難治性のミオクローヌスの場合には多剤併用療法が有用である。非薬物療法としては、難治性のミオクローヌスに対して定位視床腹中間核手術が有効であったとの報告がある。またてんかん発作に伴うミオクローヌスの一部ではてんかん焦点切除術や脳梁離断術などの外科的治療が有効である。当然ながら侵襲的な治療の適応は慎重に判断する必要がある。
 それぞれの患者の病態に応じて治療を選択する。しかし原因疾患により薬剤難治性のミオクローヌスの場合には多剤併用療法が有用である。非薬物療法としては、難治性のミオクローヌスに対して定位視床腹中間核手術が有効であったとの報告がある。またてんかん発作に伴うミオクローヌスの一部ではてんかん焦点切除術や脳梁離断術などの外科的治療が有効である。当然ながら侵襲的な治療の適応は慎重に判断する必要がある。