「ミカエリス・メンテンの式」の版間の差分

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<br> ミカエリス・メンテンの式  酵素の反応速度と基質濃度の関係を明らかにするため、L. Michaelis とM. L. Mentenは酵素と基質が結合した酵素基質複合体(ES complex)を形成することにより反応が進行するとの概念に基づいて、次のような反応模式を考えた。  
ミカエリス・メンテンの式  酵素の反応速度と基質濃度の関係を明らかにするため、L. Michaelis とM. L. Mentenは酵素と基質が結合した酵素基質複合体(ES complex)を形成することにより反応が進行するとの概念に基づいて、次のような反応模式を考えた。  


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      (1)
 
    <math> E + S \rightleftarrows ES \xrightarrow{k_3} E + P</math> (1)


ここにEは酵素、Sは基質、Pは生成物を表す。この時、k1, k2はk3に比べて十分に大きく、ES, E, Sは平衡状態にあって、k3を速度定数とする過程が全体の酵素反応の律速段階であると仮定すれば、ES complexの解離平衡定数Kdは (2) 酵素反応の初速度vは  
ここにEは酵素、Sは基質、Pは生成物を表す。この時、k1, k2はk3に比べて十分に大きく、ES, E, Sは平衡状態にあって、k3を速度定数とする過程が全体の酵素反応の律速段階であると仮定すれば、ES complexの解離平衡定数Kdは (2) 酵素反応の初速度vは  
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の場合にのみ、となってKdと一致するのであるが、多くの場合、(13)式Kmも酵素と基質の親和性の尺度を表すと考えてよい。実験的には、(13)式のKmも(7)式の場合と同様、基質濃度無限大の時の最大反応速度Vmaxの1/2の速度を与える基質濃度として定義される。
の場合にのみ、となってKdと一致するのであるが、多くの場合、(13)式Kmも酵素と基質の親和性の尺度を表すと考えてよい。実験的には、(13)式のKmも(7)式の場合と同様、基質濃度無限大の時の最大反応速度Vmaxの1/2の速度を与える基質濃度として定義される。


  (13)式は厳密にはブリッグス・ホールデンの式と言うが、 (7)式と同じ形であるので実際にはミカエリス・メンテンの式と言うことが多い。また、(13)式のKmもミカエリス定数と言うが、(7)式の場合と異なり、KmはES complexの解離平衡定数Kdとは一致しない。k2 &gt;&gt; k3の場合にのみ、 となってKdと一致するのであるが、多くの場合、(13)式のKmも酵素と基質の親和性の尺度を表すと考えてよい。実験的には、(13)式のKmも(7)式の場合と同様、基質濃度無限大の時の最大反応速度Vmaxの1/2の速度を与える基質濃度として定義される。


ミカエリス・メンテンプロット   (7)式も(13)式も、酵素反応速度(すなわち酵素活性)と基質濃度の関係を定量的に表した式である。実験的には様々な基質濃度で酵素活性を測定し、横軸に基質濃度、縦軸に酵素活性をとってプロットした場合、図1に示すように、数学的には直角双曲線の形となる。このようなプロットをミカエリス・メンテンプロット(S-vプロット)と呼ぶ。図1から明らかなように、基質濃度がKm値(Vmaxの1/2の速度を与える時の基質濃度)付近或いはそれ以下の場合には酵素活性は基質濃度に大きく依存し、基質濃度の少しの変化でも酵素活性は大きく影響を受けるが、Km値より十分大きい基質濃度の場合、酵素活性はVmaxの値に近づき、濃度が大きくなるにつれて基質濃度依存性が殆どなくなる。従って、一般に酵素活性を測定する場合は、基質初濃度の誤差や、反応の進行に伴う基質濃度減少の影響を避けるため、基質阻害などの問題がない限りは、できるだけ高濃度の基質(Km値の5〜10倍、或いはそれ以上)を用いて活性測定を行うことが望ましい。  
ミカエリス・メンテンプロット   (7)式も(13)式も、酵素反応速度(すなわち酵素活性)と基質濃度の関係を定量的に表した式である。実験的には様々な基質濃度で酵素活性を測定し、横軸に基質濃度、縦軸に酵素活性をとってプロットした場合、図1に示すように、数学的には直角双曲線の形となる。このようなプロットをミカエリス・メンテンプロット(S-vプロット)と呼ぶ。図1から明らかなように、基質濃度がKm値(Vmaxの1/2の速度を与える時の基質濃度)付近或いはそれ以下の場合には酵素活性は基質濃度に大きく依存し、基質濃度の少しの変化でも酵素活性は大きく影響を受けるが、Km値より十分大きい基質濃度の場合、酵素活性はVmaxの値に近づき、濃度が大きくなるにつれて基質濃度依存性が殆どなくなる。従って、一般に酵素活性を測定する場合は、基質初濃度の誤差や、反応の進行に伴う基質濃度減少の影響を避けるため、基質阻害などの問題がない限りは、できるだけ高濃度の基質(Km値の5〜10倍、或いはそれ以上)を用いて活性測定を行うことが望ましい。  
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