「ミリストイル化」の版間の差分

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== 歴史  ==
== 歴史  ==


 ''N''-ミリストイル化は1980年代) [[wikipedia:ja:エドマン分解|エドマン分解]]によるタンパク質の配列解析が盛んにおこなわれる中、[[CAMP依存タンパク質キナーゼ]](cyclic AMP-dependent protein kinase)触媒サブユニット、および[[カルシニューリン]]B(calcineurin B)のエドマン分解を阻害する因子として存在が明らかになり、[[質量分析]]から構造が同定された<ref><pubmed>6959104</pubmed></ref><ref><pubmed>7160476</pubmed></ref>。  この発見を皮切りに[[wikipedia:ja:シグナル伝達|シグナル伝達]]タンパク質、[[カルシウム]]結合タンパク質、膜関連タンパク質、[[wikipedia:ja:ウイルス|ウイルス]]構成タンパク質になど幅広く見出されている。1987年に''N''-ミリストイル化酵素が同定され、基質特異性、反応機構の解析が進められた<ref><pubmed>3100524</pubmed></ref>。当初は『共翻訳時修飾(co-translational modification)』として研究が進められたが、2000年にアポトーシス促進タンパク質であるBID(BH3 interacting domain death agonist)がカスパーゼ-8(caspase-8)による部分分解後に『翻訳後修飾(post-translational modification)』として''N''-ミリストイル化を受けることが明らかになり<ref><pubmed>11099414</pubmed></ref>、その後続々とアポトーシス関連タンパク質が''N''-ミリストイル化タンパク質として同定された。  
 ''N''-ミリストイル化は1980年代) [[wikipedia:ja:エドマン分解|エドマン分解]]によるタンパク質の配列解析が盛んにおこなわれる中、[[CAMP依存タンパク質キナーゼ]](cyclic AMP-dependent protein kinase)触媒サブユニット、および[[カルシニューリン]]B(calcineurin B)のエドマン分解を阻害する因子として存在が明らかになり、[[質量分析]]から構造が同定された<ref><pubmed>6959104</pubmed></ref><ref><pubmed>7160476</pubmed></ref>。  この発見を皮切りに[[wikipedia:ja:シグナル伝達|シグナル伝達]]タンパク質、[[カルシウム]]結合タンパク質、膜関連タンパク質、[[wikipedia:ja:ウイルス|ウイルス]]構成タンパク質になど幅広く見出されている。1987年に''N''-ミリストイル化酵素が同定され、基質特異性、反応機構の解析が進められた<ref name=Towler><pubmed>3100524</pubmed></ref>。当初は『共翻訳時修飾(co-translational modification)』として研究が進められたが、2000年にアポトーシス促進タンパク質であるBID(BH3 interacting domain death agonist)がカスパーゼ-8(caspase-8)による部分分解後に『翻訳後修飾(post-translational modification)』として''N''-ミリストイル化を受けることが明らかになり<ref><pubmed>11099414</pubmed></ref>、その後続々とアポトーシス関連タンパク質が''N''-ミリストイル化タンパク質として同定された。  


== 構造  ==
== 構造  ==
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== ''N''-ミリストイル化酵素  ==
== ''N''-ミリストイル化酵素  ==


 タンパク質の''N''-ミリストイル化はGCN5 ''N''-アセチルトランスフェラーゼ (GNAT)スーパーファミリーに属する''N''-ミリストイルトランスフェラーゼ(''N''-myristoyl transferase;NMT)が担っている<sup>[4]</sup>。NMTは真核生物間で保存され、哺乳類では[[wikipedia:N-myristoyltransferase 1|NMT1]]および[[wikipedia:N-myristoyltransferase 1|NMT2]]の2種類が同定されている。NMT1/2は各組織に普遍的に発現が認められる。両者は基質特異性(下記参照)を共有しているものの、NMT1[[ノックアウトマウス]]は胚発生時に致死となることからNMT2の代償作用は得られず、両者の間には厳密な役割分担があると考えられている。  
 タンパク質の''N''-ミリストイル化はGCN5 ''N''-アセチルトランスフェラーゼ (GNAT)スーパーファミリーに属する''N''-ミリストイルトランスフェラーゼ(''N''-myristoyl transferase;NMT)が担っている<ref name=Towler><pubmed>3100524</pubmed></ref>。NMTは真核生物間で保存され、哺乳類では[[wikipedia:N-myristoyltransferase 1|NMT1]]および[[wikipedia:N-myristoyltransferase 1|NMT2]]の2種類が同定されている。NMT1/2は各組織に普遍的に発現が認められる。両者は基質特異性(下記参照)を共有しているものの、NMT1[[ノックアウトマウス]]は胚発生時に致死となることからNMT2の代償作用は得られず、両者の間には厳密な役割分担があると考えられている。  


 NMTの触媒メカニズムは[[wikipedia:ja:酵母|酵母]]''S. cerevisiae'' NMTの解析から明らかにされた<ref><pubmed>2198291</pubmed></ref>。NMTはミリストイル-CoAを選択的に捕捉し、ペプチド基質がNMTに結合した後にミリスチン酸がN末端グリシンに移行して、CoAおよびミリストイル化基質が放出される。  
 NMTの触媒メカニズムは[[wikipedia:ja:酵母|酵母]]''S. cerevisiae'' NMTの解析から明らかにされた<ref><pubmed>2198291</pubmed></ref>。NMTはミリストイル-CoAを選択的に捕捉し、ペプチド基質がNMTに結合した後にミリスチン酸がN末端グリシンに移行して、CoAおよびミリストイル化基質が放出される。