「メラトニン」の版間の差分

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一方,網膜視細胞におけるメラトニン合成の場合,SCN由来の時刻情報は用いられず,視細胞内で自律的に振動する概日時計の支配下にある<ref name=iuvone><pubmed>15845344</pubmed></ref>。''Aa-nat''遺伝子のプロモーター領域にはE-boxと呼ばれるシス配列が存在するが,このE-boxに時計遺伝子の産物であるBMAL1/CLOCK(もしくはBMAL1/NPAS2)が約1日周期のリズムをもって結合する事により''Aa-nat''遺伝子のリズミックな発現が誘導される。前述のように''Aa-nat''遺伝子の上流にはCREが存在し,視細胞における''Aa-nat''の発現にもcAMP/PKA/CREBが寄与している。  
一方,網膜視細胞におけるメラトニン合成の場合,SCN由来の時刻情報は用いられず,視細胞内で自律的に振動する概日時計の支配下にある<ref name=iuvone><pubmed>15845344</pubmed></ref>。''Aa-nat''遺伝子のプロモーター領域にはE-boxと呼ばれるシス配列が存在するが,このE-boxに時計遺伝子の産物であるBMAL1/CLOCK(もしくはBMAL1/NPAS2)が約1日周期のリズムをもって結合する事により''Aa-nat''遺伝子のリズミックな発現が誘導される。前述のように''Aa-nat''遺伝子の上流にはCREが存在し,視細胞における''Aa-nat''の発現にもcAMP/PKA/CREBが寄与している。  


AA-NATは遺伝子発現のみならず,翻訳後にも制御を受けることが知られている。松果体において夜間に活性化するPKAはAA-NATをリン酸化し,リン酸化されたAA-NATは足場蛋白質である14-3-3と結合する。遊離のAA-NAT はプロテアソームにより短時間で分解されるのに対し,14-3-3と結合したAA-NATは蛋白質分解を免れるため,蛋白質量が増加する。また,AA-NAT/14-3-3複合体は遊離のAA-NATに比べてアセチル化する酵素活性が高いことが生化学アッセイより示されている。このような翻訳後の制御は,夜間におけるメラトニン合成の活性化に寄与していると考えられている。また,夜間に光を照射するとメラトニン合成が急速に抑制されるが,これは松果体におけるAA-NAT量の急激な減少を伴っている(ラットの場合,半減期は約3.5分)。これは松果体におけるAA-NAT量の急激な低下を伴っており,遊離のAA-NATが速やかに分解される事がこの光応答に重要であると考えられている。  
AA-NATは遺伝子発現のみならず,翻訳後にも制御を受けることが知られている<ref reme=iuvone/>。松果体において夜間に活性化するPKAはAA-NATをリン酸化し,リン酸化されたAA-NATは足場蛋白質である14-3-3と結合する。遊離のAA-NAT はプロテアソームにより短時間で分解されるのに対し,14-3-3と結合したAA-NATは蛋白質分解を免れるため,蛋白質量が増加する。また,AA-NAT/14-3-3複合体は遊離のAA-NATに比べてアセチル化する酵素活性が高いことが生化学アッセイより示されている。このような翻訳後の制御は,夜間におけるメラトニン合成の活性化に寄与していると考えられている。また,夜間に光を照射するとメラトニン合成が急速に抑制されるが,これは松果体におけるAA-NAT量の急激な減少を伴っている(ラットの場合,半減期は約3.5分)。これは松果体におけるAA-NAT量の急激な低下を伴っており,遊離のAA-NATが速やかに分解される事がこの光応答に重要であると考えられている。  


== 生理作用  ==
== 生理作用  ==
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