「ユビキチン」の版間の差分

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 ALSにおける運動ニューロン変性の機序は不明であり、90%以上は孤発性だが、5〜10%の患者は家族性に発症する。1993 年に家族性 ALS の原因遺伝子の一つとしてsuperoxide dismutase 1(SOD1)が同定され<ref name=Rosen1993><pubmed>8446170</pubmed></ref> ,2006 年には孤発性ALSの病態関連タンパク質として TAR DNA binding protein 43(TDP-43)が同定された<ref name=Neumann2006><pubmed>17023659</pubmed></ref><ref name=Arai2006><pubmed>17084815</pubmed></ref> 。これまでに約20の家族性ALSの原因遺伝子が見いだされ、OPTNやUBQLN2、VCPといったユビキチンが関与する因子も同定されている<ref name=Mejzini2019><pubmed>31866818</pubmed></ref> 。
 ALSにおける運動ニューロン変性の機序は不明であり、90%以上は孤発性だが、5〜10%の患者は家族性に発症する。1993 年に家族性 ALS の原因遺伝子の一つとしてsuperoxide dismutase 1(SOD1)が同定され<ref name=Rosen1993><pubmed>8446170</pubmed></ref> ,2006 年には孤発性ALSの病態関連タンパク質として TAR DNA binding protein 43(TDP-43)が同定された<ref name=Neumann2006><pubmed>17023659</pubmed></ref><ref name=Arai2006><pubmed>17084815</pubmed></ref> 。これまでに約20の家族性ALSの原因遺伝子が見いだされ、OPTNやUBQLN2、VCPといったユビキチンが関与する因子も同定されている<ref name=Mejzini2019><pubmed>31866818</pubmed></ref> 。


 その中でも2010年本邦から家族性ALS原因遺伝子の一つとして同定されたオプチニューリン(OPTN)に関して紹介する<ref name=Maruyama2010><pubmed>20428114</pubmed></ref> 。OPTNは直鎖状ユビキチン鎖を特異的に認識するUBAN(ubiquitin binding in A20-binding IκB(ABIN)and NEMO protein)ドメインを有し、オートファジーやNF-Bの制御に重要なタンパク質である。OPTN変異ALS患者の解析からOPTNと直鎖状ユビキチン鎖との結合能が低下することがALS発症に関連することが示唆されている<ref name=Nakazawa2016><pubmed>27552911</pubmed></ref> 。またALSは運動神経細胞において細胞質封入体を認めることが古くから知られているが、OPTN変異ALS患者のみならず、孤発性ALS患者においても運動神経細胞内封入体に直鎖状ユビキチン鎖が共局在することも近年報告されており<ref name=Nakayama2020><pubmed>31951008</pubmed></ref> 、直鎖状ユビキチン鎖とALSの研究も注目されつつある<ref name=Oikawa2020><pubmed>32403254</pubmed></ref><ref name=及川2020><pubmed>2020246037</pubmed></ref> 。
 その中でも2010年本邦から家族性ALS原因遺伝子の一つとして同定されたオプチニューリン(OPTN)に関して紹介する<ref name=Maruyama2010><pubmed>20428114</pubmed></ref> 。OPTNは直鎖状ユビキチン鎖を特異的に認識するUBAN(ubiquitin binding in A20-binding IκB(ABIN)and NEMO protein)ドメインを有し、オートファジーやNF-Bの制御に重要なタンパク質である。OPTN変異ALS患者の解析からOPTNと直鎖状ユビキチン鎖との結合能が低下することがALS発症に関連することが示唆されている<ref name=Nakazawa2016><pubmed>27552911</pubmed></ref> 。またALSは運動神経細胞において細胞質封入体を認めることが古くから知られているが、OPTN変異ALS患者のみならず、孤発性ALS患者においても運動神経細胞内封入体に直鎖状ユビキチン鎖が共局在することも近年報告されており<ref name=Nakayama2020><pubmed>31951008</pubmed></ref> 、直鎖状ユビキチン鎖とALSの研究も注目されつつある<ref name=Oikawa2020><pubmed>32403254</pubmed></ref><ref name=及川2020>'''及川 大, 伊東 秀, 徳永 文 (2020).'''<br>【非定型型ユビキチン鎖の生理機能】直鎖状ユビキチン鎖の神経変性疾患への関与とLUBAC阻害剤の開発. 生化学. 92:28-34.</ref> 。


===もやもや病===
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