「ユビキチン」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
47行目: 47行目:
 ユビキチン鎖の伸長には、7個のリジン(K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63)、及びN末端のメチオニン(M1)がいずれもが関わりうる。ユビキチン鎖の中で、すべて同じリジンあるいはメチオニンが用いられているのを均質なユビキチン鎖といい、計8種類存在する('''図3''')<ref name=Akutsu2016><pubmed>26906419</pubmed></ref> 。
 ユビキチン鎖の伸長には、7個のリジン(K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63)、及びN末端のメチオニン(M1)がいずれもが関わりうる。ユビキチン鎖の中で、すべて同じリジンあるいはメチオニンが用いられているのを均質なユビキチン鎖といい、計8種類存在する('''図3''')<ref name=Akutsu2016><pubmed>26906419</pubmed></ref> 。


 一方、1つのユビキチン分子の複数のリジン残基にユビキチンが結合することでできる枝分かれしたユビキチン鎖である分岐型ユビキチン鎖や、あるユビキチン鎖の上に異なる連結型のユビキチン鎖が結合した混合型ユビキチン鎖も報告されている('''図3''')<ref name=Haakonsen2019><pubmed>31300189</pubmed></ref> 。さらにユビキチン自身がアセチル化やリン酸化による翻訳後修飾を受けることが発見されるなど、ユビキチン修飾系は現在想定されている以上に多彩な役割を果たしている可能性が考えられている('''図3''')<ref name=Haakonsen2019><pubmed>31300189</pubmed></ref><ref name=大竹2020><pubmed>2020246041</pubmed></ref><ref name=佐々木2018><pubmed>2019053479</pubmed></ref><ref name=Koyano2014><pubmed>24784582</pubmed></ref><ref name=Swatek2016><pubmed>27012465</pubmed></ref><ref name=Ohtake2015><pubmed>25527407</pubmed></ref><ref name=Herhaus2015><pubmed>26268526</pubmed></ref> 。
 一方、1つのユビキチン分子の複数のリジン残基にユビキチンが結合することでできる枝分かれしたユビキチン鎖である分岐型ユビキチン鎖や、あるユビキチン鎖の上に異なる連結型のユビキチン鎖が結合した混合型ユビキチン鎖も報告されている('''図3''')<ref name=Haakonsen2019><pubmed>31300189</pubmed></ref> 。さらにユビキチン自身がアセチル化やリン酸化による翻訳後修飾を受けることが発見されるなど、ユビキチン修飾系は現在想定されている以上に多彩な役割を果たしている可能性が考えられている('''図3''')<ref name=Haakonsen2019><pubmed>31300189</pubmed></ref><ref name=大竹2020>'''大竹 史 (2020).'''<br>【非定型型ユビキチン鎖の生理機能】分岐型ユビキチン鎖とアセチル化ユビキチン. 生化学. 92(1):57-63.</ref><ref name=佐々木2018>'''佐々木 克, 岩井 一 (2018).'''<br>【蛋白質代謝医学-構造・機能の研究から臨床応用まで】蛋白質の一生(揺籠から墓場まで) 分解(死) 多様化するユビキチンコード. 医学のあゆみ. 267(13):989-95.</ref><ref name=Koyano2014><pubmed>24784582</pubmed></ref><ref name=Swatek2016><pubmed>27012465</pubmed></ref><ref name=Ohtake2015><pubmed>25527407</pubmed></ref><ref name=Herhaus2015><pubmed>26268526</pubmed></ref> 。


====均質なユビキチン鎖====
====均質なユビキチン鎖====
57行目: 57行目:
 K11鎖/K48鎖から構成される分岐型ユビキチン鎖(分岐鎖)はプロテアソーム依存的な分解シグナルを増強するのに加え<ref name=Yau2017><pubmed>29033132</pubmed></ref> 、K48鎖/K63鎖による分岐鎖はK63鎖特異的な脱ユビキチン鎖酵素(CYLD)の会合を阻害することが報告されている<ref name=Ohtake2016><pubmed>27746020</pubmed></ref> 。また、M1鎖とK63鎖の混合型ユビキチン鎖(混合鎖)は足場として働くことでシグナル伝達経路の構成因子の効率的な集積を担うなど<ref name=Emmerich2013><pubmed>23986494</pubmed></ref> 、分岐鎖、混合鎖が果たす役割も徐々に解明されつつある。
 K11鎖/K48鎖から構成される分岐型ユビキチン鎖(分岐鎖)はプロテアソーム依存的な分解シグナルを増強するのに加え<ref name=Yau2017><pubmed>29033132</pubmed></ref> 、K48鎖/K63鎖による分岐鎖はK63鎖特異的な脱ユビキチン鎖酵素(CYLD)の会合を阻害することが報告されている<ref name=Ohtake2016><pubmed>27746020</pubmed></ref> 。また、M1鎖とK63鎖の混合型ユビキチン鎖(混合鎖)は足場として働くことでシグナル伝達経路の構成因子の効率的な集積を担うなど<ref name=Emmerich2013><pubmed>23986494</pubmed></ref> 、分岐鎖、混合鎖が果たす役割も徐々に解明されつつある。


 またK48/K63の分岐鎖は全てのK63鎖のおよそ20%程度存在しており、プロテアソーム阻害剤添加によってその割合が50%近くまで上昇したという報告もある<ref name=大竹2020><pubmed>2020246041</pubmed></ref> 。従って分岐鎖はこれまで想定されていたよりも多く存在することが示唆されており今後のさらなる機能解明が待たれている。
 またK48/K63の分岐鎖は全てのK63鎖のおよそ20%程度存在しており、プロテアソーム阻害剤添加によってその割合が50%近くまで上昇したという報告もある<ref name=大竹2020></ref> 。従って分岐鎖はこれまで想定されていたよりも多く存在することが示唆されており今後のさらなる機能解明が待たれている。


====モノユビキチン化====
====モノユビキチン化====