「リアノジン受容体」の版間の差分

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1. 歴史<ref><pubmed>12777839</pubmed></ref> (Takeshima 2004; Takeshima and Kakizawa, 2011)
1. 歴史<ref><pubmed>12777839</pubmed></ref>  


カルシウムイオン(Ca<sup>2+</sup>)は普遍的かつ基本的なシグナル伝達を担うセカンドメッセンジャーであり、極めて多くの生命現象に関与する。細胞内におけるCa<sup>2+</sup>シグナル形成は、細胞膜に存在するCa<sup>2+</sup>チャネルを介して細胞外から細胞内へのCa<sup>2+</sup>の流入によるものと、細胞内Ca<sup>2+</sup>ストア(小胞体)からCa<sup>2+</sup>放出チャネルを介して細胞質へ放出される2通りの経路による。Ca<sup>2+</sup>誘発性Ca<sup>2+</sup>放出(Ca<sup>2+</sup>-induced Ca<sup>2+</sup> release; CICR)は、細胞質側のCa<sup>2+</sup>濃度上昇が細胞内ストアから細胞質へのCa<sup>2+</sup> 放出を促進する現象であり、骨格筋で最初に見出された(Endo, 1985)。その後、同様の現象が多くの興奮性細胞において見られたことから、CICRは細胞内Ca<sup>2+</sup>シグナルを増幅するための普遍的な機構であると考えられるようになり、CICRの分子実体であるCICRチャネルの薬理学的性質が調べられた。その結果、植物アルカロイドであるリアノジンがCICRチャネルに特異的に結合し、低濃度ではチャネルを開口状態に固定する薬物であることが示された。  
カルシウムイオン(Ca<sup>2+</sup>)は普遍的かつ基本的なシグナル伝達を担うセカンドメッセンジャーであり、極めて多くの生命現象に関与する。細胞内におけるCa<sup>2+</sup>シグナル形成は、細胞膜に存在するCa<sup>2+</sup>チャネルを介して細胞外から細胞内へのCa<sup>2+</sup>の流入によるものと、細胞内Ca<sup>2+</sup>ストア(小胞体)からCa<sup>2+</sup>放出チャネルを介して細胞質へ放出される2通りの経路による。Ca<sup>2+</sup>誘発性Ca<sup>2+</sup>放出(Ca<sup>2+</sup>-induced Ca<sup>2+</sup> release; CICR)は、細胞質側のCa<sup>2+</sup>濃度上昇が細胞内ストアから細胞質へのCa<sup>2+</sup> 放出を促進する現象であり、骨格筋で最初に見出された(Endo, 1985)。その後、同様の現象が多くの興奮性細胞において見られたことから、CICRは細胞内Ca<sup>2+</sup>シグナルを増幅するための普遍的な機構であると考えられるようになり、CICRの分子実体であるCICRチャネルの薬理学的性質が調べられた。その結果、植物アルカロイドであるリアノジンがCICRチャネルに特異的に結合し、低濃度ではチャネルを開口状態に固定する薬物であることが示された。  
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2. 分子構造(Takeshima 2004; Takeshima and Kakizawa, 2011)
2. 分子構造<ref><pubmed>20961976</pubmed></ref><ref><pubmed>17506640</pubmed></ref>


RyRは約5,000アミノ酸残基より構成される分子量約550kDaの巨大蛋白質であり、そのホモ4量体により機能的なCa<sup>2+</sup>放出チャネルが形成される。RyR分子内では、アミノ末端側約4,500アミノ酸が細胞質側に大きく張り出した、いわゆるfoot構造に対応する領域を形成し、4本の推定膜貫通セグメントを含む残りのカルボキシル末端がチャネル領域を形成する。同じくCa<sup>2+</sup>放出チャネルであるIP<sub>3</sub>受容体とRyRは、カルボキシル末端の膜貫通セグメントを含む約200アミノ酸において特に高い配列相同性を示し、この部分がCa<sup>2+</sup>放出チャネルとして共通するイオン透過性に関連した機能に関与していると推測される。実際に、RyR1のカルボキシル末側の約1,000アミノ酸残基よりなる領域のみでリアノジン感受性を有する基本的なCa<sup>2+</sup>チャネルが形成されることが、脂質二重膜を用いた再構築実験により示されている。この再構築系においてC末端領域が形成するチャネルは、陽イオン選択性、細胞質側Ca<sup>2+</sup>による活性化機構、リアノジン感受性を保持する一方で、全長RyR1チャネルに見られる高濃度のCa<sup>2+</sup>による不活性化機構を欠く。また、RyRサブタイプ間での一次構造の比較により、D1、D2、D3と呼ばれる相同性が顕著に低い領域が見られる。RyR1のcDNA発現実験系を用いた研究により、CICRによるチャネル活性化のCa<sup>2+</sup>結合部位はD1領域、チャネルを不活性化する高濃度Ca<sup>2+</sup>の結合部位はD3領域に存在するとされている。  
RyRは約5,000アミノ酸残基より構成される分子量約550kDaの巨大蛋白質であり、そのホモ4量体により機能的なCa<sup>2+</sup>放出チャネルが形成される。RyR分子内では、アミノ末端側約4,500アミノ酸が細胞質側に大きく張り出した、いわゆるfoot構造に対応する領域を形成し、4本の推定膜貫通セグメントを含む残りのカルボキシル末端がチャネル領域を形成する。同じくCa<sup>2+</sup>放出チャネルであるIP<sub>3</sub>受容体とRyRは、カルボキシル末端の膜貫通セグメントを含む約200アミノ酸において特に高い配列相同性を示し、この部分がCa<sup>2+</sup>放出チャネルとして共通するイオン透過性に関連した機能に関与していると推測される。実際に、RyR1のカルボキシル末側の約1,000アミノ酸残基よりなる領域のみでリアノジン感受性を有する基本的なCa<sup>2+</sup>チャネルが形成されることが、脂質二重膜を用いた再構築実験により示されている。この再構築系においてC末端領域が形成するチャネルは、陽イオン選択性、細胞質側Ca<sup>2+</sup>による活性化機構、リアノジン感受性を保持する一方で、全長RyR1チャネルに見られる高濃度のCa<sup>2+</sup>による不活性化機構を欠く。また、RyRサブタイプ間での一次構造の比較により、D1、D2、D3と呼ばれる相同性が顕著に低い領域が見られる。RyR1のcDNA発現実験系を用いた研究により、CICRによるチャネル活性化のCa<sup>2+</sup>結合部位はD1領域、チャネルを不活性化する高濃度Ca<sup>2+</sup>の結合部位はD3領域に存在するとされている。  
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