「リアノジン受容体」の版間の差分

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==== RyR1欠損マウス ====
==== RyR1欠損マウス ====


: [[wikipedia:ja:横隔膜|横隔膜]]の骨格筋細胞の機能不全に起因すると考えられる[[wikipedia:ja:呼吸不全|呼吸不全]]により、生後全く動くことなく出生致死の表現型を示す。
: [[wikipedia:ja:横隔膜|横隔膜]]の骨格筋細胞の機能不全に起因すると考えられる[[wikipedia:ja:呼吸不全|呼吸不全]]により、生後全く動くことなく出生致死の表現型を示す<ref><pubmed>7515481</pubmed></ref>。


==== RyR2欠損マウス ====
==== RyR2欠損マウス ====


: RyR2欠損マウスは、心拍動の開始直後の胎生10日ごろに心筋細胞の小胞体Ca2+過剰負荷により心不全となり死亡する。
: RyR2欠損マウスは、心拍動の開始直後の胎生10日ごろに心筋細胞の小胞体Ca2+過剰負荷により心不全となり死亡する<ref><pubmed>9628868</pubmed></ref>。


==== RyR3欠損マウス ====
==== RyR3欠損マウス ====


: RyR3欠損マウスはほぼ正常に発育し重篤な異常は認められないが、これまでに自発的運動活性の亢進、社会的接触行動の減少、[[恐怖条件付け反応]]の低下が報告され、その神経系での重要性が示唆されている。また、海馬CA1領域において、穏やかな刺激で誘導された[[LTP]]の維持が阻害されるとの報告がある一方で、同じく海馬領域におけるLTPの誘導閾値が低下するとの報告もある。ただし、RyR3欠損マウスの軽度な中枢機能異常に関しては、重複して発現する他のサブタイプによる補完作用を考慮する必要がある。
: RyR3欠損マウスはほぼ正常に発育し重篤な異常は認められないが、これまでに自発的運動活性の亢進、社会的接触行動の減少、[[恐怖条件付け反応]]の低下が報告され、その神経系での重要性が示唆されている。また、海馬CA1領域において、穏やかな刺激で誘導された[[LTP]]の維持が阻害されるとの報告がある一方で、同じく海馬領域におけるLTPの誘導閾値が低下するとの報告もある。ただし、RyR3欠損マウスの軽度な中枢機能異常に関しては、重複して発現する他のサブタイプによる補完作用を考慮する必要がある<ref><pubmed>10595520</pubmed></ref><ref><pubmed>11358488</pubmed></ref>。


===シナプス前終末における機能===
===シナプス前終末における機能===


 海馬[[CA3]]領域の[[苔状線維]][[軸索]]([[シナプス前終末]]よりも[[軸索起始部]]寄りの部分)においては、電位依存性Ca2+チャネルによるCa2+シグナルがRyR1によるCICR機構を介して増幅されることにより、高頻度刺激に神経伝達物資の放出が増強されることが示されており、シナプス前終末における可塑性へのRyRの関与も示唆されている。
 海馬[[CA3]]領域の[[苔状線維]][[軸索]]([[シナプス前終末]]よりも[[軸索起始部]]寄りの部分)においては、電位依存性Ca2+チャネルによるCa2+シグナルがRyR1によるCICR機構を介して増幅されることにより、高頻度刺激に神経伝達物資の放出が増強されることが示されており、シナプス前終末における可塑性へのRyRの関与も示唆されている<ref><pubmed>18687898</pubmed></ref>。


=== 一酸化窒素依存的カルシウム放出 ===
=== 一酸化窒素依存的カルシウム放出 ===


 脂質二重膜に発現させたRyR1の開口確率がNOの作用により上昇することは以前より知られていたが、この現象が生細胞で内因性のNOの作用により起こること、およびその機能的意義については長いこと不明であった。しかし、小脳[[平行線維]]-プルキンエ細胞シナプスにおけるNO依存的LTPがプルキンエ細胞内の細胞内Ca2+シグナルにも依存的であることが判明したことから、プルキンエ細胞内でのNOとCa2+との関連性について解明が進み、神経活動によって産生放出された内因性のNOがRyR1を活性化することでCa2+放出が誘導される現象、NO依存的Ca2+放出(NO-induced Ca2+ release; NICR)が発見された。このNICRはウサギRyR1における3635位のシステイン(マウスでは3636位に相当)がNOによりS-ニトロシル化されることで誘導されると推測されている。また、NO合成酵素の発現は平行線維では見られるがプルキンエ細胞では見られないことから、平行線維活動により産生放出されたNOがプルキンエ細胞内のRyR1を活性化すると考えられている。これまでに、NICRの小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおけるLTPへの関与、および、中大脳動脈の虚血再灌流による大脳皮質の神経細胞死への関与が示唆されている。
 脂質二重膜に発現させたRyR1の開口確率がNOの作用により上昇することは以前より知られていたが、この現象が生細胞で内因性のNOの作用により起こること、およびその機能的意義については長いこと不明であった。しかし、小脳[[平行線維]]-プルキンエ細胞シナプスにおけるNO依存的LTPがプルキンエ細胞内の細胞内Ca2+シグナルにも依存的であることが判明したことから、プルキンエ細胞内でのNOとCa2+との関連性について解明が進み、神経活動によって産生放出された内因性のNOがRyR1を活性化することでCa2+放出が誘導される現象、NO依存的Ca2+放出(NO-induced Ca2+ release; NICR)が発見された。このNICRはウサギRyR1における3635位のシステイン(マウスでは3636位に相当)がNOによりS-ニトロシル化されることで誘導されると推測されている。また、NO合成酵素の発現は平行線維では見られるがプルキンエ細胞では見られないことから、平行線維活動により産生放出されたNOがプルキンエ細胞内のRyR1を活性化すると考えられている。これまでに、NICRの小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおけるLTPへの関与、および、中大脳動脈の虚血再灌流による大脳皮質の神経細胞死への関与が示唆されている<ref><pubmed>22036948</pubmed></ref>。