「ロドプシン」の版間の差分

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===その他の生物のロドプシン ===
===その他の生物のロドプシン ===
 様々な動物で見つかっているロドプシン(オプシン)の他に[[wikipedia:JA:古細菌|古細菌]]にも光感受性を持つレチナールタンパク質が含まれていることが知られている。1971年にOesterheltとStoeckniusは[[wikipedia:JA:好塩菌|好塩菌]]の一種[[wikipedia:JA:高度好塩菌|''Halobacterium halobium'']](最近では''Halobacterium salinarum''という)にレチナールを発色団とする光受容タンパク質が存在することを発見し、このタンパク質をバクテリオロドプシン(bR)と命名した<ref><pubmed> 4940442 </pubmed></ref>。その後の研究により、bRは光駆動の[[wikipedia:JA:プロトンポンプ|プロトンポンプ]]活性を示すことがわかり、また、バクテリアにはbRを含めて4種類のレチナールタンパク質が存在することがわかった。bR以外にはハロロドプシン(hR)、センソリーロドプシン(sR)、センソリーロドプシンII(sRII、フォボロドプシン(pR)ともいう)である。hRは光駆動のクロライドポンプ、sRとsRIIはそれぞれ正・負の光走性に関与するロドプシンである。最近、[[wikipedia:JA:緑藻類|緑藻類]]から光駆動の[[wikipedia:JA:チャネル|チャネル]]活性を示すロドプシン(チャネルロドプシン)が発見され、hRとともに、神経細胞の光操作に応用されている。さらに最近では、海洋のバクテリアにもbR様のロドプシンが含まれていることが発見され、地球上のエネルギー生産の半分程度がbR様のロドプシン類で担われていることが注目されている。また、遺伝子発現を調節するロドプシン類も[[wikipedia:JA:アナベナ|アナベナ]]から発見されるなど、バクテリアが持つロドプシン類の機能解析は最近の一つのトピックスになっている。
 様々な動物で見つかっているロドプシン(オプシン)の他に[[wikipedia:JA:古細菌|古細菌]]にも光感受性を持つレチナールタンパク質が含まれていることが知られている。1971年にOesterheltとStoeckniusは[[wikipedia:JA:好塩菌|好塩菌]]の一種[[wikipedia:JA:高度好塩菌|''Halobacterium halobium'']](最近では''Halobacterium salinarum''という)にレチナールを発色団とする光受容タンパク質が存在することを発見し、このタンパク質をバクテリオロドプシン(bR)と命名した<ref><pubmed> 4940442 </pubmed></ref>。その後の研究により、bRは光駆動の[[wikipedia:JA:プロトンポンプ|プロトンポンプ]]活性を示すことがわかり、また、バクテリアにはbRを含めて4種類のレチナールタンパク質が存在することがわかった。bR以外にはハロロドプシン(hR)、センソリーロドプシン(sR)、センソリーロドプシンII(sRII、フォボロドプシン(pR)ともいう)である。 動物のロドプシン“Animal Rhodopsin”に対してこれらのロドプシンを総称して“Bacterial Rhodopsin”と呼ぶ。 hRは光駆動のクロライドポンプ、sRとsRIIはそれぞれ正・負の光走性に関与するロドプシンである。最近、[[wikipedia:JA:緑藻類|緑藻類]]から光駆動の[[wikipedia:JA:チャネル|チャネル]]活性を示すロドプシン(チャネルロドプシン)が発見され、hRとともに、神経細胞の光操作([[wikipedia: Optogenetics|optogenetics]] )に応用されている。さらに最近では、海洋のバクテリアにもbR様のロドプシンが含まれていることが発見され、地球上のエネルギー生産の半分程度がbR様のロドプシン類で担われていることが注目されている。また、遺伝子発現を調節するロドプシン類も[[wikipedia:JA:アナベナ|アナベナ]]から発見されるなど、微生物が持つロドプシン類の機能解析は最近の一つのトピックスになっている。


 これらのバクテリアのロドプシン類も、動物のロドプシン類と同様に7回膜貫通領域をもち、発色団としてレチナールを用い、さらにその発色団はレチナールシッフ塩基結合を介してヘリックス7に結合している。ただし、動物のロドプシンは主に11-シス型のレチナールを発色団として持ち、光を受容して全トランスに異性化されて活性状態になるが、バクテリアのロドプシンは全トランス型のレチナールを発色団とし、光を吸収して13-シス型に異性化し、機能を発揮することがわかっている。また、バクテリアのロドプシンは活性状態になったあと熱反応で元の状態に戻る光反応サイクルを描く。7本膜貫通α-ヘリックス構造を持つことから、両タンパク質は進化的に系統関係があると考えられていたが、アミノ酸配列からは相同性の無いことが明らかにされている。しかしロドプシン類の中でも20%程度の相同性しか示さないものもあるので、たとえ共通の祖先タンパク質から進化しても遠縁な生物種間では変異が蓄積し有意な相同性がなくなっている可能性もある。
 これらのバクテリアのロドプシン類も、動物のロドプシン類と同様に7回膜貫通領域をもち、発色団としてレチナールを用い、さらにその発色団はレチナールシッフ塩基結合を介してヘリックス7に結合している。ただし、動物のロドプシンは主に11-シス型のレチナールを発色団として持ち、光を受容して全トランスに異性化されて活性状態になるが、バクテリアのロドプシンは全トランス型のレチナールを発色団とし、光を吸収して13-シス型に異性化し、機能を発揮することがわかっている。また、バクテリアのロドプシンは活性状態になったあと熱反応で元の状態に戻る光反応サイクルを描く。7本膜貫通α-ヘリックス構造を持つことから、両タンパク質は進化的に系統関係があると考えられていたが、アミノ酸配列からは相同性の無いことが明らかにされている。しかしロドプシン類の中でも20%程度の相同性しか示さないものもあるので、たとえ共通の祖先タンパク質から進化しても遠縁な生物種間では変異が蓄積し有意な相同性がなくなっている可能性もある。