「不安症」の版間の差分

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== 発症機構  ==
== 発症機構  ==


[[image:不安障害3.png|thumb|300px|'''図3.Fear Circuit'''<br>Gorman etal, 2000より改変引用 ]]
[[image:不安障害3.png|thumb|300px|'''図3.Fear Circuit'''<br>文献<ref><pubmed> 10739407 </pubmed></ref>より改変引用 ]]


 パニック障害、社交不安障害、特定の恐怖症は恐怖が中心症状となり、恐怖の脳内機構が最近明らかにされつつあり、恐怖-サーキット障害ともいう。 図3の恐怖サーキットでは、危険の察知・防御機能を持つ扁桃体がその中心的存在であり、これらの不安障害は扁桃体の過活動を[[前頭前野]]が抑制できなくなった状態であると考えることができる。  
 パニック障害、社交不安障害、特定の恐怖症は恐怖が中心症状となり、恐怖の脳内機構が最近明らかにされつつあり、恐怖-サーキット障害ともいう。 図3の恐怖サーキットでは、危険の察知・防御機能を持つ扁桃体がその中心的存在であり、これらの不安障害は扁桃体の過活動を[[前頭前野]]が抑制できなくなった状態であると考えることができる。  


 不安障害は不安体質の人が何らかの刺激をきっかけに正常の不安が病的な不安に変換した状態であると考えられる。たとえば、パニック障害においては、些細な刺激が高度の危険性ありと誤認されパニック発作が出現し、そのパニック発作自体が脳神経を過敏にして次の発作準備性を高める。この機序を森田は「心身交互作用」とした。広場恐怖ではその症状である回避行動が恐怖対象の拡大(汎化現象)を引き起こし、病気が発展していく。このような機序は強迫性障害ではさらに顕著にみられる(van den Hout & Kindt, 2003)。すなわち、正常範囲の確認行動が対象への熟知性を増し、この熟知性が認知過程を抑制し、回想記憶を障害し、さらなる確認行動を引き起こす。このように、多くの不安障害では、症状そのものが病状を進行させるという悪循環を招く脳内病的機構が存在し、症状の進行と慢性化に寄与している。 
 不安障害は不安体質の人が何らかの刺激をきっかけに正常の不安が病的な不安に変換した状態であると考えられる。たとえば、パニック障害においては、些細な刺激が高度の危険性ありと誤認されパニック発作が出現し、そのパニック発作自体が脳神経を過敏にして次の発作準備性を高める。この機序を森田は「心身交互作用」とした。広場恐怖ではその症状である回避行動が恐怖対象の拡大(汎化現象)を引き起こし、病気が発展していく。このような機序は強迫性障害ではさらに顕著にみられる<ref><pubmed> 12600406 </pubmed></ref>。すなわち、正常範囲の確認行動が対象への熟知性を増し、この熟知性が認知過程を抑制し、回想記憶を障害し、さらなる確認行動を引き起こす。このように、多くの不安障害では、症状そのものが病状を進行させるという悪循環を招く脳内病的機構が存在し、症状の進行と慢性化に寄与している。 


==治療  ==
==治療  ==