「二分頭蓋」の版間の差分

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[[image:無脳症.jpg|thumb|350px|'''図1.神経管閉鎖部位を示す模式図'''(文献1,2改変引用)<br>正常の一次神経管の閉鎖は、従来は[[髄脳]](胎児期の終脳最尾側にあり[[延髄]]となる部分)と脊髄との間の一か所から頭側および尾側にそれぞれジッパーが閉じるように進むと考えられてきたが(continuous closure model)、近年の研究では、この部以外の複数箇所から閉鎖するモデル(multisite closure model)が唱えられている。Van Allenらの説では、A)正常神経管の閉鎖は1→2→3→4→5の順で矢印の方向に閉鎖が進む。B)閉鎖2の障害によって無脳症が発生する。C)閉鎖5は二次神経管に相当し、この閉鎖障害で仙骨部二分脊髄が発生する。]]
[[image:無脳症.jpg|thumb|350px|'''図1.神経管閉鎖部位を示す模式図'''(文献1,2改変引用)<br>正常の一次神経管の閉鎖は、従来は[[髄脳]](胎児期の終脳最尾側にあり[[延髄]]となる部分)と脊髄との間の一か所から頭側および尾側にそれぞれジッパーが閉じるように進むと考えられてきたが(continuous closure model)、近年の研究では、この部以外の複数箇所から閉鎖するモデル(multisite closure model)が唱えられている。Van Allenらの説では、A)正常神経管の閉鎖は1→2→3→4→5の順で矢印の方向に閉鎖が進む。B)閉鎖2の障害によって無脳症が発生する。C)閉鎖5は二次神経管に相当し、この閉鎖障害で仙骨部二分脊髄が発生する。]]


 [[神経管]](neural tube)の形成過程(neurulation)で発生する[[中枢神経系]]の形成異常による種々の疾患群は神経管閉鎖障害と総称される。同義語として[[閉鎖不全]](症)([[dysraphism]])がある。閉鎖障害は神経管が最も遅く閉鎖する部位と考えられている神経管の頭側部(脳)や尾側部(腰仙部[[脊髄]])に発生しやすく、頭部では[[二分頭蓋]]([[cranium bifidum]])または[[頭蓋閉鎖不全症]]([[cranial dysraphism]])、脊椎部では[[二分脊椎]]([[spina bifida]])または[[脊椎閉鎖不全症]]([[spinal dysraphism]])と呼ばれる<ref name=ref1><pubmed>8267004</pubmed></ref> <ref name=ref2>'''坂本博昭'''<br>神経管の発生とその障害<br>横田晃 監修・山崎麻美・坂本博昭編<br>''小児脳神経外科学''、金芳堂、2009,243-246 </ref> <ref name=ref3>'''山崎麻美'''<br>二分頭蓋・脳瘤<br>横田晃 監修・山崎麻美・坂本博昭編<br>''小児脳神経外科学''、金芳堂、2009,247-263 </ref>。
 [[神経管]](neural tube)の形成過程(neurulation)で発生する[[中枢神経系]]の形成異常による種々の疾患群は[[神経管閉鎖障害]]と総称される。同義語として[[閉鎖不全]](症)([[dysraphism]])がある。閉鎖障害は神経管が最も遅く閉鎖する部位と考えられている神経管の頭側部(脳)や尾側部(腰仙部[[脊髄]])に発生しやすく、頭部では[[二分頭蓋]]([[cranium bifidum]])または[[頭蓋閉鎖不全症]]([[cranial dysraphism]])、脊椎部では[[二分脊椎]]([[spina bifida]])または[[脊椎閉鎖不全症]]([[spinal dysraphism]])と呼ばれる<ref name=ref1><pubmed>8267004</pubmed></ref> <ref name=ref2>'''坂本博昭'''<br>神経管の発生とその障害<br>横田晃 監修・山崎麻美・坂本博昭編<br>''小児脳神経外科学''、金芳堂、2009,243-246 </ref> <ref name=ref3>'''山崎麻美'''<br>二分頭蓋・脳瘤<br>横田晃 監修・山崎麻美・坂本博昭編<br>''小児脳神経外科学''、金芳堂、2009,247-263 </ref>。


 神経管の閉鎖障害が高度であれば、閉鎖障害が発生した部分では中枢神経組織は形成されず、また本来神経組織の周りを覆うべき組織も閉鎖しないため、形成異常をきたした神経組織は外表に露出する。これを開放性閉鎖障害(閉鎖不全症)と呼ぶ。一方、神経管の閉鎖障害が軽度であれば中枢神経組織はある程度形成され、また神経管の周囲の構造物は閉鎖して神経組織を覆うため神経組織は外表に露出しない。これを[[潜在性(閉鎖性)閉鎖障害]][[閉鎖不全症]])と呼ぶ<ref name=ref2 />。
 神経管の閉鎖障害が高度であれば、閉鎖障害が発生した部分では中枢神経組織は形成されず、また本来神経組織の周りを覆うべき組織も閉鎖しないため、形成異常をきたした神経組織は外表に露出する。これを[[開放性閉鎖障害]](閉鎖不全症)と呼ぶ。一方、神経管の閉鎖障害が軽度であれば中枢神経組織はある程度形成され、また神経管の周囲の構造物は閉鎖して神経組織を覆うため神経組織は外表に露出しない。これを[[潜在性閉鎖障害|潜在性(閉鎖性)閉鎖障害]](閉鎖不全症)と呼ぶ<ref name=ref2 />。


 [[二分頭蓋]]・[[脳瘤]]([[cephalocele]])は、神経管閉鎖障害の頭側に生じた異常と考えられている。その中で、無脳症は、神経管形成の時期に発生した開放性閉鎖障害であり、尾側では[[脊髄髄膜瘤]]([[myelomeningocele]])([[脊髄裂]]:[[myeloschisis]])がこれに該当する。一方、脳瘤は神経管閉鎖後すなわちpostneurulationの時期に、間葉組織の形成不全によって頭蓋内容物の頭蓋外への脱出が原因とされるとういのが最近の考えである<ref name=ref1 /> <ref name=ref2 /> <ref name=ref3 />。
 [[二分頭蓋]]・[[脳瘤]]([[cephalocele]])は、神経管閉鎖障害の頭側に生じた異常と考えられている。その中で、無脳症は、神経管形成の時期に発生した開放性閉鎖障害であり、尾側では[[脊髄髄膜瘤]]([[myelomeningocele]])([[脊髄裂]]:[[myeloschisis]])がこれに該当する。一方、脳瘤は神経管閉鎖後すなわちpostneurulationの時期に、間葉組織の形成不全によって頭蓋内容物の頭蓋外への脱出が原因とされるとういのが最近の考えである<ref name=ref1 /> <ref name=ref2 /> <ref name=ref3 />。