「作動薬」の版間の差分

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作動薬の結合様式は質量作用の法則に従うので、縦軸に結合受容体の割合、横軸に薬物濃度を対数でプロットすると、S字型のシグモイド曲線を描く。これを受容体結合曲線という。式を変形することによってスキャッチャード(Scatchard)プロットを描くと、薬物の最大結合量Bmaxおよび薬物の受容体に対する解離定数Kdを求めることができる。この解離定数Kdは親和性の尺度であり、見かけ上は受容体の半数が作動薬によって占拠された時の濃度に一致する。
作動薬の結合様式は質量作用の法則に従うので、縦軸に結合受容体の割合、横軸に薬物濃度を対数でプロットすると、S字型のシグモイド曲線を描く。これを受容体結合曲線という。式を変形することによってスキャッチャード(Scatchard)プロットを描くと、薬物の最大結合量Bmaxおよび薬物の受容体に対する解離定数Kdを求めることができる。この解離定数Kdは親和性の尺度であり、見かけ上は受容体の半数が作動薬によって占拠された時の濃度に一致する。
[[ファイル:Kd.jpg|サムネイル|解離定数]]


作動薬が特定の受容体に対して高い親和性で結合して作用を発揮する場合、選択的(selective)作動薬と呼ばれる。受容体の選択性が高くない作動薬は非選択的(nonselective)作動薬と言われる。また多くの受容体には、遺伝子とタンパク質構造が似ていて異なる異形(サブタイプ)が存在する。ある特定のサブタイプに対して極めて高い親和性を有する場合、その作動薬は特異的(specific)であると言われる。
作動薬が特定の受容体に対して高い親和性で結合して作用を発揮する場合、選択的(selective)作動薬と呼ばれる。受容体の選択性が高くない作動薬は非選択的(nonselective)作動薬と言われる。また多くの受容体には、遺伝子とタンパク質構造が似ていて異なる異形(サブタイプ)が存在する。ある特定のサブタイプに対して極めて高い親和性を有する場合、その作動薬は特異的(specific)であると言われる。
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受容体へのリガンド結合は受容体タンパク質の構造変化をもたらすが、作動薬の結合による構造変化は細胞内情報伝達系の活性化を引き起こす。しかし、化合物によっては内在性リガンドに比べて固有活性が低いために高濃度を用いても情報伝達系を部分的にしか活性化しない場合がある。このような物質は部分作動薬(partial agonist)と呼ばれ、共存する内在性リガンドの作用は見かけ上減弱されることになる。古くはagonist-antagonistと呼ばれたこともある。このとき、最大の活性化を起こす作動薬は完全(full)作動薬と呼ばれる。
受容体へのリガンド結合は受容体タンパク質の構造変化をもたらすが、作動薬の結合による構造変化は細胞内情報伝達系の活性化を引き起こす。しかし、化合物によっては内在性リガンドに比べて固有活性が低いために高濃度を用いても情報伝達系を部分的にしか活性化しない場合がある。このような物質は部分作動薬(partial agonist)と呼ばれ、共存する内在性リガンドの作用は見かけ上減弱されることになる。古くはagonist-antagonistと呼ばれたこともある。このとき、最大の活性化を起こす作動薬は完全(full)作動薬と呼ばれる。
[[ファイル:Agonist.jpg|サムネイル|作動薬の概念図]]


部分作動薬の例としては、古くからアドレナリンβ受容体に対する拮抗薬の中に部分的にβ受容体を活性化する薬効を有するピンドロールなどの薬物がある。この作用は教科書的に内因性交感神経刺激作用(intrinsic sympathomimetic action, ISA)として知られているが本質的には部分作動薬である。また、麻薬性鎮痛薬の中にはブプレノルフィンのようにμオピオイド受容体に対して部分作動薬であるものが存在し、モルヒネには見かけ上拮抗することから麻薬拮抗性鎮痛薬と呼ばれていた。
部分作動薬の例としては、古くからアドレナリンβ受容体に対する拮抗薬の中に部分的にβ受容体を活性化する薬効を有するピンドロールなどの薬物がある。この作用は教科書的に内因性交感神経刺激作用(intrinsic sympathomimetic action, ISA)として知られているが本質的には部分作動薬である。また、麻薬性鎮痛薬の中にはブプレノルフィンのようにμオピオイド受容体に対して部分作動薬であるものが存在し、モルヒネには見かけ上拮抗することから麻薬拮抗性鎮痛薬と呼ばれていた。


なお、受容体によってはリガンドが存在しない状態でも細胞内情報伝達系が恒常的に活性化されている場合がある。このような恒常活性化型の受容体に結合して細胞内情報伝達系を抑制する物質は逆作動薬(inverse agonist)と呼ばれる。名称に「作動薬」が含まれているが、実際には拮抗薬の作用を発揮する。多くのGPCRに対する拮抗薬が実際には逆作動薬であることが知られている。
なお、受容体によってはリガンドが存在しない状態でも細胞内情報伝達系が恒常的に活性化されている場合がある。このような恒常活性化型の受容体に結合して細胞内情報伝達系を抑制する物質は逆作動薬(inverse agonist)と呼ばれる。名称に「作動薬」が含まれているが、実際には拮抗薬の作用を発揮する。多くのGPCRに対する拮抗薬が実際には逆作動薬であることが知られている。
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