「光周性」の版間の差分

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===哺乳類の光周性の制御機構===
===哺乳類の光周性の制御機構===
====メラトニンによって制御される哺乳類の光周性====
====メラトニンによって制御される哺乳類の光周性====
 哺乳類の光周性は、顕著な光周反応を示す[[wikipedia:ja:ハムスター|ハムスター]]やヒツジの研究によって理解が進んできた。哺乳類では眼球除去によって光周性が完全に失われるため、光周性を制御する光受容器は眼([[網膜]])に存在している。眼で受容された光情報は網膜-視床下部路を経て概日ペースメーカーが存在する[[視交叉上核]]([[suprachiasmatic nucleus]]: [[SCN]])へと伝えられる<ref>'''J Arendt'''<br>Melatonin and mammalian pineal gland<br> ''Chapman Hall, London'':1995</ref>。視交叉上核からは[[室傍核]]、[[上頸神経節]]を経由し、[[交感神経]]によって松果体(pineal gland)へ入力する。松果体からは夜間、血中にメラトニンが分泌されるため、メラトニンは夜の長さを全身に伝えている。
 哺乳類の光周性は、顕著な光周反応を示す[[wikipedia:ja:ハムスター|ハムスター]]やヒツジの研究によって理解が進んできた。哺乳類では眼球除去によって光周性が完全に失われるため、光周性を制御する光受容器は眼([[網膜]])に存在している。眼で受容された光情報は網膜-視床下部路を経て概日ペースメーカーが存在する[[視交叉上核]]([[suprachiasmatic nucleus]]: [[SCN]])へと伝えられる<ref>'''J Arendt'''<br>Melatonin and mammalian pineal gland<br> ''Chapman Hall, London'':1995</ref>。視交叉上核からは[[視床下部室傍核]]、[[上頸神経節]]を経由し、[[交感神経]]によって松果体(pineal gland)へ入力する。松果体からは夜間、血中にメラトニンが分泌されるため、メラトニンは夜の長さを全身に伝えている。


 メラトニンは哺乳類の光周性の制御に必須な役割を果たしており、松果体を除去すると光周性は完全に消失する。また、メラトニンを代償投与すると光周性を人為的に制御できるため、ヒツジの繁殖期や羊毛生産の人為的制御に応用されている。鳥類においてもメラトニンは夜間分泌され、概日リズムの制御や鳴鳥のさえずりを制御しているが、松果体除去やメラトニン投与は鳥類の季節繁殖の制御にはほとんど影響をおよぼさないため、メラトニンは鳥類の光周性の制御には必須ではないと考えられている。
 メラトニンは哺乳類の光周性の制御に必須な役割を果たしており、松果体を除去すると光周性は完全に消失する。また、メラトニンを代償投与すると光周性を人為的に制御できるため、ヒツジの繁殖期や羊毛生産の人為的制御に応用されている。鳥類においてもメラトニンは夜間分泌され、概日リズムの制御や鳴鳥のさえずりを制御しているが、松果体除去やメラトニン投与は鳥類の季節繁殖の制御にはほとんど影響をおよぼさないため、メラトニンは鳥類の光周性の制御には必須ではないと考えられている。