「分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ」の版間の差分

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<font size="+1">石川 広幸、[http://researchmap.jp/read0123360 名黒 功]、[http://researchmap.jp/read0053993 一條 秀憲]</font><br>
<font size="+1">石川 広幸、[http://researchmap.jp/read0123360 名黒 功]、[http://researchmap.jp/read0053993 一條 秀憲]</font><br>
''東京大学 大学院薬学系研究科 細胞情報学教室''<br>
''東京大学 大学院薬学系研究科 細胞情報学教室''<br>
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年5月30日 原稿完成日:2013年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年5月30日 原稿完成日:2015年1月27日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
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==MAPKとは==
==MAPKとは==
[[image:mapk.png|thumb|400px|'''図1.哺乳類MAPキナーゼ経路の簡略図'''<br> ([http://commons.wikimedia.org/wiki/File:MAPK-pathway-mammalian.png Wikipedia]より改変)]]
 MAPKは様々な刺激によって活性化されるセリン/スレオニンキナーゼの一種で、上流の[[セリン/スレオニン/チロシンキナーゼ]]である[[MAPKキナーゼ]] (MAPK Kinase, MAPKK) によるリン酸化を受けて活性化し、さらにMAPKKは上流の[[MAPKKキナーゼ]] (MAPKK Kinase, MAPKKK) によるリン酸化を受けて活性化する。この一連のリン酸化シグナルカスケードはMAPキナーゼカスケードと呼ばれ、[[wikipedia:JA:酵母|酵母]]から[[wikipedia:JA:哺乳類|哺乳類]]に至るまで[[wikipedia:JA:真核生物|真核生物]]において進化的に高度に保存された[[シグナル伝達]]経路である。MAPキナーゼはその活性化にキナーゼサブドメインⅦとⅧの間の活性化ループに存在するスレオニン/チロシン両残基のリン酸化を必要とするが、それら特徴を備えたMAPキナーゼは、分子のアミノ酸の一次配列の相同性に基づいて[[細胞外シグナル調節キナーゼ]] (Extracellular Signal-regulated Kinase, ERK)、[[p38]]、[[c-Jun N端末キナーゼ]] (c-Jun N-terminal kinase, JNK) に分類される。
 MAPKは様々な刺激によって活性化されるセリン/スレオニンキナーゼの一種で、上流の[[セリン/スレオニン/チロシンキナーゼ]]である[[MAPKキナーゼ]] (MAPK Kinase, MAPKK) によるリン酸化を受けて活性化し、さらにMAPKKは上流の[[MAPKKキナーゼ]] (MAPKK Kinase, MAPKKK) によるリン酸化を受けて活性化する。この一連のリン酸化シグナルカスケードはMAPキナーゼカスケードと呼ばれ、[[wikipedia:JA:酵母|酵母]]から[[wikipedia:JA:哺乳類|哺乳類]]に至るまで[[wikipedia:JA:真核生物|真核生物]]において進化的に高度に保存された[[シグナル伝達]]経路である。MAPキナーゼはその活性化にキナーゼサブドメインⅦとⅧの間の活性化ループに存在するスレオニン/チロシン両残基のリン酸化を必要とするが、それら特徴を備えたMAPキナーゼは、分子のアミノ酸の一次配列の相同性に基づいて[[細胞外シグナル調節キナーゼ]] (Extracellular Signal-regulated Kinase, ERK)、[[p38]]、[[c-Jun N端末キナーゼ]] (c-Jun N-terminal kinase, JNK) に分類される。


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 ERK1/2が神経系に及ぼす多くの影響が報告されている。[[神経伝達物質]]によってERKが活性化されることが知られており、[[興奮性神経伝達]]を担う[[グルタミン酸受容体]]においては、[[NMDA型グルタミン酸受容体|NMDA型]]と[[代謝活性型グルタミン酸受容体|代謝型]]の[[受容体]]が共にERK1/2の活性化に寄与していると言われている<ref><pubmed> 10341237 </pubmed></ref>。グルタミン酸受容体の活性化に伴う[[カルシウム]]の細胞質への流入や[[PKA]]の活性化によって活性化されたERK1/2は[[CREB]]のリン酸化などを通して様々な遺伝子の発現制御を行っている。
 ERK1/2が神経系に及ぼす多くの影響が報告されている。[[神経伝達物質]]によってERKが活性化されることが知られており、[[興奮性神経伝達]]を担う[[グルタミン酸受容体]]においては、[[NMDA型グルタミン酸受容体|NMDA型]]と[[代謝活性型グルタミン酸受容体|代謝型]]の[[受容体]]が共にERK1/2の活性化に寄与していると言われている<ref><pubmed> 10341237 </pubmed></ref>。グルタミン酸受容体の活性化に伴う[[カルシウム]]の細胞質への流入や[[PKA]]の活性化によって活性化されたERK1/2は[[CREB]]のリン酸化などを通して様々な遺伝子の発現制御を行っている。


 [[シナプス可塑性]]とERK1/2の関連性も報告されている。[[マウス]][[海馬]]ではNMDA型グルタミン酸受容体が活性化されると[[長期増強]](Long-term potentiation: LTP)と呼ばれるシナプス可塑性現象が起きるが、このときにシナプス後神経細胞ではERK1/2が活性化されており、逆にERK1/2の活性を阻害することでNMDA型受容体依存的な長期増強が抑制される<ref><pubmed> 15689566 </pubmed></ref>。また、ラットにおいても[[海馬]]のシナプスを高頻度電気刺激することで長期増強が誘導されるが、この時にもERK2が活性化され、その阻害によって長期増強が阻害される<ref><pubmed> 11749838 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 9235897 </pubmed></ref>。一方、小脳プルキンエ細胞においては、平行線維の活動とプルキンエ細胞の脱分極が同時に起きることによって平行線維ープルキンエ細胞シナプスのおいて[[長期抑圧]](Long-term depression: LTD)という、長期増強とは逆方向のシナプス可塑性が起きる。この際にもプルキンエ細胞においてERK1/2が活性化され、逆にERK1/2を阻害すると長期抑圧は起きない。その他、ERKの活性が[[AMPAグルタミン酸受容体]]の輸送や[[シナプス]]の構造変化において重要な役割を果たすという報告もなされている<ref><pubmed> 21147168 </pubmed></ref>。
 [[シナプス可塑性]]とERK1/2の関連性も報告されている。[[マウス]][[海馬]]ではNMDA型グルタミン酸受容体が活性化されると[[長期増強]](Long-term potentiation: LTP)と呼ばれるシナプス可塑性現象が起きるが、このときにシナプス後神経細胞ではERK1/2が活性化されており、逆にERK1/2の活性を阻害することでNMDA型受容体依存的な長期増強が抑制される<ref><pubmed> 15689566 </pubmed></ref>。また、ラットにおいても[[海馬]]のシナプスを高頻度電気刺激することで長期増強が誘導されるが、この時にもERK2が活性化され、その阻害によって長期増強が阻害される<ref><pubmed>8798683</pubmed></ref> <ref><pubmed> 9235897 </pubmed></ref>。一方、小脳プルキンエ細胞においては、平行線維の活動とプルキンエ細胞の脱分極が同時に起きることによって平行線維ープルキンエ細胞シナプスのおいて[[長期抑圧]](Long-term depression: LTD)という、長期増強とは逆方向のシナプス可塑性が起きる。この際にもプルキンエ細胞においてERK1/2が活性化され、逆にERK1/2を阻害すると長期抑圧は起きない<ref name=ref17004925><pubmed>17004925</pubmed></ref> <ref><pubmed>18760697</pubmed></ref>。その他、ERKの活性が[[AMPA型グルタミン酸受容体]]の輸送や[[樹状突起]]の構造変化において重要な役割を果たすという報告もなされている<ref><pubmed>12202034</pubmed></ref> <ref><pubmed>11175875</pubmed></ref>。


 ERK5は発生初期の脳において発現が強く見られ、脳の皮質幹細胞が神経細胞に分化する過程にその活性が重要であることが示されている<ref><pubmed> 16766652 </pubmed></ref>。また、ERK1とERK2は脳において[[cAMP]]や神経栄養因子、皮質ニューロンの活性化によって活性化されるが、ERK5は神経栄養因子によってのみ活性化される<ref><pubmed> 21647938 </pubmed></ref> 。神経栄養因子とERK5の関係については、神経栄養因子飢餓状態の脳の皮質ニューロンに脳由来神経栄養因子 (Brain-Derived Nutrient Factor, BDNF) を添加することでBDNFによる神経保護が引き起こされるのだが、この過程においてERK5の活性化によってMEF2を介した遺伝子発現が誘導されることが重要であると示唆されている<ref><pubmed> 12826611 </pubmed></ref>。その他、自殺者の視床下部においてERK5とその上流のMAPKKであるMEK5の活性が低下傾向にあること、ERK5のmRNAとタンパク質の量が減少していることなどが示唆されている<ref><pubmed> 17342168 </pubmed></ref>。ERK7、ERK8に関しては、脳において機能的な役割を果たしているという報告はなされていない。
 ERK5は発生初期の脳において発現が強く見られ、脳の皮質幹細胞が神経細胞に分化する過程にその活性が重要であることが示されている<ref><pubmed> 16766652 </pubmed></ref>。また、ERK1とERK2は脳において[[cAMP]]や[[神経栄養因子]]、皮質ニューロンの活性化によって活性化されるが、ERK5は神経栄養因子によってのみ活性化される<ref><pubmed> 21647938 </pubmed></ref> 。神経栄養因子とERK5の関係については、神経栄養因子飢餓状態の脳の皮質ニューロンに[[脳由来神経栄養因子]] ([[brain-derived neurotrophic factor]], [[BDNF]]) を添加することでBDNFによる神経保護が引き起こされるのだが、この過程においてERK5の活性化によってMEF2を介した遺伝子発現が誘導されることが重要であると示唆されている<ref><pubmed> 12826611 </pubmed></ref>。その他、自殺者の視床下部においてERK5とその上流のMAPKKであるMEK5の活性が低下傾向にあること、ERK5のmRNAとタンパク質の量が減少していることなどが示唆されている<ref><pubmed> 17342168 </pubmed></ref>。ERK7、ERK8に関しては、脳において機能的な役割を果たしているという報告はなされていない。


==p38==
==p38==
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===神経系とp38との関わり===
===神経系とp38との関わり===
 海馬CA1ではシェファー側枝を低頻度刺激すると長期抑圧が起きるが、この際にシナプス後部細胞においてp38が活性化され、逆にp38を阻害すると長期抑圧が起きないことが明らかになっている<ref><pubmed> 11036267 </pubmed></ref>。一方小脳プルキンエ細胞における長期抑圧にはp38は関与しない。神経細胞においてp38が[[酸化ストレス]]や炎症性サイトカイン刺激によって活性化すると、[[細胞骨格]]タンパク質のリン酸化、サイトカインの産生や[[NOS]]の発現を介する[[一酸化窒素|NO]]の産生によって神経変性を促進することが知られている。
 海馬CA1ではシェファー側枝を低頻度刺激すると長期抑圧が起きるが、この際にシナプス後部細胞においてp38が活性化され、逆にp38を阻害すると長期抑圧が起きないことが明らかになっている<ref><pubmed> 11036267 </pubmed></ref>。一方小脳プルキンエ細胞における長期抑圧にはp38は関与しない<ref name=ref17004925 />。神経細胞においてp38が[[酸化ストレス]]や炎症性サイトカイン刺激によって活性化すると、[[細胞骨格]]タンパク質のリン酸化、サイトカインの産生や[[NOS]]の発現を介する[[一酸化窒素|NO]]の産生によって神経変性を促進することが知られている。


 [[筋萎縮側索硬化症]] (Amyotrophic Lateral Sclerosis, ALS) はその発症原因として[[運動神経]]の[[細胞死]]との関連が示唆されているが、ALSのモデルとして用いられている[[SOD1]]変異体を発現しているトランスジェニックマウスにおいては、ALSの進行時のマウスの腰髄に存在する運動神経にp38が多量に発現していることから、ALSの進行とp38の関連が示唆されている<ref><pubmed> 12812752 </pubmed></ref>。
 [[筋萎縮性側索硬化症]] ([[amyotrophic lateral sclerosis]], [[ALS]]) はその発症原因として[[運動神経]]の[[細胞死]]との関連が示唆されているが、ALSのモデルとして用いられている[[SOD1]]変異体を発現しているトランスジェニックマウスにおいては、ALSの進行時のマウスの腰髄に存在する運動神経にp38が多量に発現していることから、ALSの進行とp38の関連が示唆されている<ref><pubmed> 12812752 </pubmed></ref>。


 神経障害性疼痛の症状を呈する患者に対してp38の阻害剤の経口投与を行った臨床実験においては、対照群と比較して有意に痛みが減少したという報告もなされている<ref><pubmed> 21576029 </pubmed></ref>。神経細胞周囲においてグルタミン酸濃度が高濃度に達することでグルタミン酸興奮毒性が起こるが、その結果引き起こされる神経細胞のアポトーシスの過程において[[Rhoキナーゼ]]の活性化に伴うp38の活性化の必要性が示唆されている<ref><pubmed> 17369826 </pubmed></ref>。
 神経障害性疼痛の症状を呈する患者に対してp38の阻害剤の経口投与を行った臨床実験においては、対照群と比較して有意に痛みが減少したという報告もなされている<ref><pubmed> 21576029 </pubmed></ref>。神経細胞周囲においてグルタミン酸濃度が高濃度に達することでグルタミン酸興奮毒性が起こるが、その結果引き起こされる神経細胞のアポトーシスの過程において[[Rhoキナーゼ]]の活性化に伴うp38の活性化の必要性が示唆されている<ref><pubmed> 17369826 </pubmed></ref>。
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 遺伝子欠損マウスの実験の結果、JNK1, JNK2, JNK3は脳において異なる役割を果たすことが明らかになっている。グルタミン酸受容体の[[アゴニスト]]である[[カイニン酸]]はマウスに投与するとけいれん発作を引き起こすが、このときに[[海馬]]において神経細胞のアポトーシスが起こることが知られている。しかし、JNK3のノックアウトマウスはカイニン酸によるけいれん発作に対して抵抗性を示し、さらに海馬の神経細胞におけるアポトーシスも減弱していることが明らかになっている<ref><pubmed> 9349820 </pubmed></ref>。また、各アイソフォームを組み合わせたダブルノックアウトマウスの解析から、JNK1とJNK2のどちらかが存在することが脳の発生時に必要なアポトーシスにおいて重要であることが示されている<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。JNK1とJNK2のダブルノックアウトマウスは胚性致死であるが、これは脳幹形成時の後脳におけるアポトーシスが起こらないことが原因である<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。しかしこの変異体の前脳においてはアポトーシスが亢進しており、JNK1とJNK2が前脳と後脳におけるアポトーシスを逆向きに調節していることが示唆されている。
 遺伝子欠損マウスの実験の結果、JNK1, JNK2, JNK3は脳において異なる役割を果たすことが明らかになっている。グルタミン酸受容体の[[アゴニスト]]である[[カイニン酸]]はマウスに投与するとけいれん発作を引き起こすが、このときに[[海馬]]において神経細胞のアポトーシスが起こることが知られている。しかし、JNK3のノックアウトマウスはカイニン酸によるけいれん発作に対して抵抗性を示し、さらに海馬の神経細胞におけるアポトーシスも減弱していることが明らかになっている<ref><pubmed> 9349820 </pubmed></ref>。また、各アイソフォームを組み合わせたダブルノックアウトマウスの解析から、JNK1とJNK2のどちらかが存在することが脳の発生時に必要なアポトーシスにおいて重要であることが示されている<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。JNK1とJNK2のダブルノックアウトマウスは胚性致死であるが、これは脳幹形成時の後脳におけるアポトーシスが起こらないことが原因である<ref><pubmed> 10230788 </pubmed></ref><ref><pubmed> 10559486 </pubmed></ref>。しかしこの変異体の前脳においてはアポトーシスが亢進しており、JNK1とJNK2が前脳と後脳におけるアポトーシスを逆向きに調節していることが示唆されている。


 その他、[[脳由来神経栄養因子|BDNF]]が神経細胞に作用することが軸索の分岐や[[軸索]]の伸長に重要であるが、BDNF刺激によって神経細胞内で[[脱リン酸化酵素]]である[[MKP-1]]の発現が誘導され、そのMKP-1によってJNKが脱リン酸化により不活性化される。この結果、JNKの基質である[[スタスミン]]がリン酸化できずに[[微小管]]の安定性が低下して軸索分岐や伸長が引き起こされることが、MKP-1のノックアウトマウス由来の神経細胞を用いた実験によって明らかになっている<ref><pubmed> 20935641 </pubmed></ref>。線虫における神経損傷後において、成長因子であるSVH-1がその受容体であるSVH-2に作用することで神経再生が起こるが、その過程でJNKが活性化されることの重要性が示唆されている<ref><pubmed> 22388962 </pubmed></ref>。神経変性疾患とJNKの関連も報告があり、[[ハンチントン病]]の病原因子である変異[[ハンチントン]]タンパク質 (Htt) は速い軸索輸送を阻害することでハンチントン病を引き起こすという仮説が立てられているが、このHttが神経細胞軸索のJNK3を特異的に活性化し、JNK3の基質である[[キネシン|キネシン1]]のモータードメインがリン酸化されることでキネシン1が微小管に結合するのが阻害され、速い[[軸索輸送]]が阻害されているという報告がなされている<ref><pubmed> 19525941 </pubmed></ref>。
 その他、[[脳由来神経栄養因子|BDNF]]が神経細胞に作用することが軸索の分岐や[[軸索]]の伸長に重要であるが、BDNF刺激によって神経細胞内で[[脱リン酸化酵素]]である[[MKP-1]]の発現が誘導され、そのMKP-1によってJNKが脱リン酸化により不活性化される。この結果、JNKの基質である[[スタスミン]]がリン酸化できずに[[微小管]]の安定性が低下して[[軸索分岐]]や伸長が引き起こされることが、MKP-1のノックアウトマウス由来の神経細胞を用いた実験によって明らかになっている<ref><pubmed> 20935641 </pubmed></ref>。線虫における神経損傷後において、成長因子であるSVH-1がその受容体であるSVH-2に作用することで神経再生が起こるが、その過程でJNKが活性化されることの重要性が示唆されている<ref><pubmed> 22388962 </pubmed></ref>。神経変性疾患とJNKの関連も報告があり、[[ハンチントン病]]の病原因子である変異[[ハンチントン]]タンパク質 (Htt) は速い軸索輸送を阻害することでハンチントン病を引き起こすという仮説が立てられているが、このHttが神経細胞軸索のJNK3を特異的に活性化し、JNK3の基質である[[キネシン|キネシン1]]のモータードメインがリン酸化されることでキネシン1が微小管に結合するのが阻害され、速い[[軸索輸送]]が阻害されているという報告がなされている<ref><pubmed> 19525941 </pubmed></ref>。


==神経細胞におけるMAPKの相互作用==
==神経細胞におけるMAPKの相互作用==
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*[[シグナル伝達]]
*[[シグナル伝達]]
*[[シナプス可塑性]]
*[[シナプス可塑性]]
*[[蛋白質リン酸化酵素]]
*[[タンパク質リン酸化酵素]]
*[[蛋白質脱リン酸化酵素]]
*[[タンパク質脱リン酸化酵素]]
*[[長期増強]]
*[[長期増強]]
*[[長期抑制]]
*[[長期抑制]]

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