「初代培養」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
1行目: 1行目:
英:primary culture  
英:primary culture  


 初代培養は、[[wikipedia:JA:組織 (生物学)|組織]]を生体外で[[wikipedia:JA:培養|培養]]する技術のうちの一つであり、特に組織を[[wikipedia:JA:タンパク質分解酵素|タンパク質分解酵素]]などで処理して、ばらばらにした細胞を培養皿中で培養することを示す。神経組織を構成する神経細胞、[[アストロサイト]]、[[オリゴデンドロサイト]]、[[シュワン細胞]]、また、[[ミクログリア]]など神経系細胞のほとんどが初代培養で培養することが可能である<ref>'''Doering, LC.'''<br>Protocols for Neural Cell Culture: Fourth Edition.<br>''Springer Protocols Handbooks'':2004</ref>。一般的に、[[wikipedia:JA:継代|継代]]を経ない培養のことを初代培養と呼ぶことが多いが、グリア細胞の培養系は継代を経る場合もあり、広義な初代培養に含められる。[[グリア]]細胞の場合でも、何世代も継代が可能な[[株化培養細胞]]とは異なって継代回数が限られている場合が多い。初代培養された細胞は、株化培養細胞と比べて生体内に近い状態を維持していると考えられるため、様々な解析に広く用いられている。<br>  
 初代培養は、[[wikipedia:JA:組織 (生物学)|組織]]を生体外で[[wikipedia:JA:培養|培養]]する技術のうちの一つであり、特に組織を[[wikipedia:JA:タンパク質分解酵素|タンパク質分解酵素]]などで処理して、ばらばらにした細胞を培養皿中で培養することを示す。神経組織を構成する神経細胞、[[アストロサイト]]、[[オリゴデンドロサイト]]、[[シュワン細胞]]、また、[[ミクログリア]]など神経系細胞のほとんどが初代培養で培養することが可能である<ref>'''Doering, LC.'''<br>Protocols for Neural Cell Culture: Fourth Edition.<br>''Springer Protocols Handbooks'':2004</ref>。一般的に、継代を経ない培養のことを初代培養と呼ぶことが多いが、グリア細胞の培養系は継代を経る場合もあり、広義な初代培養に含められる。[[グリア]]細胞の場合でも、何世代も継代が可能な[[株化培養細胞]]とは異なって継代回数が限られている場合が多い。初代培養された細胞は、株化培養細胞と比べて生体内に近い状態を維持していると考えられるため、様々な解析に広く用いられている。<br>  




13行目: 13行目:
[[Image:Hippocampal_primary_neuron.jpg|frame|right|280x205px|'''図.1 海馬培養神経細胞培養3日目''']]
[[Image:Hippocampal_primary_neuron.jpg|frame|right|280x205px|'''図.1 海馬培養神経細胞培養3日目''']]


 脊髄[[後根神経節]]や、[[皮質]]および[[海馬]]由来の神経細胞の培養が一般的に用いられている。[[wikipedia:JA:マウス|マウス]]、[[wikipedia:JA:ラット|ラット]]のみならず[[wikipedia:JA:ニワトリ|ニワトリ]]、[[wikipedia:JA:カエル|カエル]]など多様な生物の神経細胞の初代培養系が確立されている。主に[[wikipedia:JA:胎生期|胎生期]]の動物の脳や脊髄を摘出し、顕微鏡下でおおまかに目的の部位を切り出す。これをトリプシンなどで処理し、細胞を解離する。この細胞をあらかじめ[[wikipedia:JA:ラミニン|ラミニン]]や[[wikipedia:JA:ポリ-L-リシン|ポリ-L-リシン]]などでコートした培養皿に播く。培養後一日程で、神経突起の伸長が観察される(図.1)。また、およそ7日後には[[シナプス]]の形成が認められ、軸索伸長のメカニズムや[[樹状突起]]の形成、さらには電気生理学的な性質を解析することが可能である。海馬由来培養神経細胞の場合5ヶ月程度培養したという報告があるが<ref><pubmed> 8475109 </pubmed></ref>、[[運動神経]]などは長期間の培養が困難である。  
 [[脊髄]][[後根神経節]]や、[[皮質]]および[[海馬]]由来の神経細胞の培養が一般的に用いられている。[[wikipedia:JA:マウス|マウス]]、[[wikipedia:JA:ラット|ラット]]のみならず[[wikipedia:JA:ニワトリ|ニワトリ]]、[[wikipedia:JA:カエル|カエル]]など多様な生物の神経細胞の初代培養系が確立されている。主に胎生期の動物の[[]]や脊髄を摘出し、顕微鏡下でおおまかに目的の部位を切り出す。これをトリプシンなどで処理し、細胞を解離する。この細胞をあらかじめ[[wikipedia:JA:ラミニン|ラミニン]]や[[wikipedia:JA:ポリ-L-リシン|ポリ-L-リシン]]などでコートした培養皿に播く。培養後一日程で、神経突起の伸長が観察される(図.1)。また、およそ7日後には[[シナプス]]の形成が認められ、軸索伸長のメカニズムや[[樹状突起]]の形成、さらには電気生理学的な性質を解析することが可能である。海馬由来培養神経細胞の場合5ヶ月程度培養したという報告があるが<ref><pubmed> 8475109 </pubmed></ref>、[[運動神経]]などは長期間の培養が困難である。