「到達運動」の版間の差分

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=====''[[腹側運動前野|F4]]と[[空間知覚|VIP]]''=====
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F4には、到達運動(Gentilucci et al., 1988)や向かってくる物体を手を伸ばして避けるような運動に関わる(Graziano & Cooke, 2006)。また、視覚情報がある方向に偏位するようなプリズムメガネをかけて到達運動したときに、学習によって適応する課題(プリズム適応)において、感覚情報そのものを表現する活動や運動のゴール(適応後もゴールの位置は変化していない)に依存する活動が(Kurata & Hoshi, 2002)が存在する。Inoueらはさらに、腹側運動前野や一次運動野のニューロンが、到達運動の結果のエラーを表現することが明らかにした。小脳とともに適応学習に関わると考えられる(Inoue et al., 2016)。VIPやF4の身体周辺空間の表現は、手先と物体の関係性を記述し、身体部分中心座標(例えば手先など)をもとにした運動の制御に重要な役割があると考えられる(Rizzolatti et al., 2014)。この領域で、到達運動に関わるニューロンは明らかにされていないが、解剖学的結合から考えて、F4への視覚情報のソースとなっていると考えられる。
F4には、到達運動(Gentilucci et al., 1988)や向かってくる物体を手を伸ばして避けるような運動に関わる(Graziano & Cooke, 2006)。また、視覚情報がある方向に偏位するようなプリズムメガネをかけて到達運動したときに、学習によって適応する課題(プリズム適応)において、感覚情報そのものを表現する活動や運動のゴール(適応後もゴールの位置は変化していない)に依存する活動が(Kurata & Hoshi, 2002)が存在する。Inoueらはさらに、腹側運動前野や一次運動野のニューロンが、到達運動の結果のエラーを表現することが明らかにした。小脳とともに適応学習に関わると考えられる(Inoue et al., 2016)。VIPやF4の身体周辺空間の表現は、手先と物体の関係性を記述し、身体部分中心座標(例えば手先など)をもとにした運動の制御に重要な役割があると考えられる(Rizzolatti et al., 2014)。この領域で、到達運動に関わるニューロンは明らかにされていないが、解剖学的結合から考えて、F4への視覚情報のソースとなっていると考えられる。


=====''[[腹側運動前野|F5]]と[[空間知覚|AIP]]''=====
=====''[[腹側運動前野|F5]]と[[空間知覚|AIP]]''=====
F5とAIPではこれまで把持運動の物体の形やそれを把持するときの手の形に選択性を持つニューロンが見つかっており、主に把持運動の制御に関わる。近年、それらのニューロンの中に注視点の位置やターゲットの視線をもとにした位置に影響を受けるニューロンが見つかっている(Lehmann & Scherberger, 2013)。また、AIPでは物体内のターゲットの相対位置によって(例えば物体の中のスイッチの位置)、反応が異なるニューロンも見つかっていて、物体中心座標系おけるターゲットの位置の情報も持っている(Murata et al., 2016)。
F5とAIPではこれまで把持運動の物体の形やそれを把持するときの手の形に選択性を持つニューロンが見つかっており、主に把持運動の制御に関わる。近年、それらのニューロンの中に注視点の位置やターゲットの視線をもとにした位置に影響を受けるニューロンが見つかっている(Lehmann & Scherberger, 2013)。また、AIPでは物体内のターゲットの相対位置によって(例えば物体の中のスイッチの位置)、反応が異なるニューロンも見つかっていて、物体中心座標系おけるターゲットの位置の情報も持っている(Murata et al., 2016)。
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