「前帯状皮質」の版間の差分

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英語名:anterior cingulate cortex  
英語名:anterior cingulate cortex  


 前帯状皮質(the anterior cingulate cortex, ACC)は、大脳半球内側面の前方部に存在する、帯状溝周辺および帯状回の領域であり、ブロードマンの24野、25野、および32野に相当する。前帯状皮質は解剖学的に、あるいは機能の違いから、3つの領域に分類される。それらの領域の名称を下表に示す。ACCは特にヒトにおいて、担う機能の違いから、行動モニタリングおよび行動調節に関わる領域、社会的認知に関わる領域、および情動に関わる領域に大きく分かれる<ref name="Vogt2005"><pubmed>15995724</pubmed></ref><ref name="Amodio2006"><pubmed>16552413</pubmed></ref>。
 前帯状皮質(the anterior cingulate cortex, ACC)は、大脳半球内側面の前方部に存在する、帯状溝周辺および帯状回の領域であり、[[ブロードマン24野]]、[[ブロードマン25野]]、および[[ブロードマン32野]]に相当する。前帯状皮質は解剖学的に、あるいは機能の違いから、3つの領域に分類される。それらの領域の名称を下表に示す。ACCは特にヒトにおいて、担う機能の違いから、行動モニタリングおよび行動調節に関わる領域、社会的認知に関わる領域、および情動に関わる領域に大きく分かれる<ref name="Vogt2005"><pubmed>15995724</pubmed></ref><ref name="Amodio2006"><pubmed>16552413</pubmed></ref>。


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 前帯状皮質背側部(dACC)すなわち中帯状皮質前方部(aMCC)は行動モニタリングに関わる<ref name="Ridder2004"><pubmed>15486290</pubmed></ref>。行動モニタリングにはコンフリクトモニタリングおよび行動成果モニタリングが含まれる。ヒトのdACCはStroop color-naming課題におけるように、2つ以上の行動を同時に惹起しうる状況(コンフリクト)において高い活動を示す<ref><pubmed>10647008</pubmed></ref>。またヒトのdACCは2つの行動から1つを選択して金銭を獲得する課題において、金銭獲得および金銭損失に関わる活動を示す<ref><pubmed>11135651</pubmed></ref>。
 前帯状皮質背側部(dACC)すなわち中帯状皮質前方部(aMCC)は行動モニタリングに関わる<ref name="Ridder2004"><pubmed>15486290</pubmed></ref>。行動モニタリングにはコンフリクトモニタリングおよび行動成果モニタリングが含まれる。ヒトのdACCはStroop color-naming課題におけるように、2つ以上の行動を同時に惹起しうる状況(コンフリクト)において高い活動を示す<ref><pubmed>10647008</pubmed></ref>。またヒトのdACCは2つの行動から1つを選択して金銭を獲得する課題において、金銭獲得および金銭損失に関わる活動を示す<ref><pubmed>11135651</pubmed></ref>。


 前帯状皮質背側部(dACC)すなわち中帯状皮質前方部(aMCC)は行動調節にも関わる<ref name="Ridder2004"/>。dACC内部で帯状溝周囲に存在する、サルの吻側帯状皮質運動野(the rostral cingulate motor area, CMAr)は、報酬に基づく行動調節に関わる。報酬量に基づき2つの行動から1つを選択する課題において、サルのCMArは、報酬が減少し、且つ、サルがもう一方の行動に切り替える際に、活動を高める<ref><pubmed>9812901</pubmed></ref>。同様の活動がヒトのdACCにおいても認められる<ref><pubmed>11756669</pubmed></ref><ref><pubmed>12944524</pubmed></ref>。報酬結果に基づく行動調節は、期待された報酬と実際の報酬の差(報酬予測誤差)を基盤にして説明される(Sutton and Barto, 1998)。サルのCMArは、2つの行動のうち、報酬獲得に至る1つを探索する課題において、報酬予測誤差を反映する活動を示す<ref><pubmed>17450137</pubmed></ref>。さらにサルのCMArは、報酬獲得のための随意的行動調節において、報酬予測の手がかりとしての、自己の行動の時系列(行動文脈)を反映する活動を示す<ref><pubmed>23455722</pubmed></ref>。
 前帯状皮質背側部(dACC)すなわち中帯状皮質前方部(aMCC)は行動調節にも関わる<ref name="Ridder2004"/>。dACC内部で帯状溝周囲に存在する、サルの吻側[[帯状皮質運動野]](the rostral cingulate motor area, CMAr)は、報酬に基づく行動調節に関わる。報酬量に基づき2つの行動から1つを選択する課題において、サルのCMArは、報酬が減少し、且つ、サルがもう一方の行動に切り替える際に、活動を高める<ref><pubmed>9812901</pubmed></ref>。同様の活動がヒトのdACCにおいても認められる<ref><pubmed>11756669</pubmed></ref><ref><pubmed>12944524</pubmed></ref>。報酬結果に基づく行動調節は、期待された報酬と実際の報酬の差(報酬予測誤差)を基盤にして説明される<ref>'''Richard S Sutton, Andrew G Barto'''<br>Reinforcement learning: An introduction.<br>''(MIT Press, Cambridge, MA)'':1998</ref>。サルのCMArは、2つの行動のうち、報酬獲得に至る1つを探索する課題において、報酬予測誤差を反映する活動を示す<ref><pubmed>17450137</pubmed></ref>。さらにサルのCMArは、報酬獲得のための随意的行動調節において、報酬予測の手がかりとしての、自己の行動の時系列(行動文脈)を反映する活動を示す<ref><pubmed>23455722</pubmed></ref>。


 サルのCMAr は運動そのものに関連する活動も示す。CMArは上肢運動の際に活動を示し、その活動は自己発動性の運動の時に、刺激誘導性の運動の時と比べ、より高い<ref><pubmed>2016637</pubmed></ref>。
 サルのCMAr は運動そのものに関連する活動も示す。CMArは上肢運動の際に活動を示し、その活動は自己発動性の運動の時に、刺激誘導性の運動の時と比べ、より高い<ref><pubmed>2016637</pubmed></ref>。
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さらにpACCは、false belief課題(メンタライジング課題)において、被験者が物語を読んだ後、登場人物の意図・信念に関する質問に答える際に、高い活動を示す<ref><pubmed>8556839</pubmed></ref>。
さらにpACCは、false belief課題(メンタライジング課題)において、被験者が物語を読んだ後、登場人物の意図・信念に関する質問に答える際に、高い活動を示す<ref><pubmed>8556839</pubmed></ref>。


== 前帯状皮質におけるその他の機能 ==
== 前帯状皮質のその他の機能 ==


 ヒトの前帯状皮質膝下部(sACC)、pACC、およびdACCは、それぞれ異なる情動に関わる<ref name="Vogt2005"/>。悲しみ・喜びの表情を提示される課題において、sACCは悲しい表情の提示の際、pACCは喜ばしい表情の提示の際、活動を高める<ref><pubmed>7864258</pubmed></ref>。
 ヒトの前帯状皮質膝下部(sACC)、pACC、およびdACCは、それぞれ異なる情動に関わる<ref name="Vogt2005"/>。悲しみ・喜びの表情を提示される課題において、sACCは悲しい表情の提示の際、pACCは喜ばしい表情の提示の際、活動を高める<ref><pubmed>7864258</pubmed></ref>。
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