「前後軸」の版間の差分

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 マンゴルトは1930年代前半に(編集コメント:マンゴルトは1924年に死亡したようです。年代をご確認下さい)、前方神経板下の中内胚葉細胞を表皮外胚葉領域に移植すると頭部が誘導され、後方神経板下の中胚葉細胞を表皮外胚葉領域に移植すると胴体および尾部が誘導されることを示した。これら一連の実験から、原口背唇部の神経誘導活性は時間とともに性質が変化し、オーガナイザー細胞が前方へ移動する過程において、オーガナイザーから異なるシグナルを受け取った外胚葉には、前後軸に沿って異なる性質をもつ領域が形成されると考えられた。1990年代前半、ついに、頭部オーガナイザー因子として、[[ノギン]]([[Noggin]])、[[コーディン]]([[Chordin]]) および[[フォリスタチン]]([[Follistatin]]) が同定された。これらの分子は、表皮外胚葉から分泌される[[骨形成タンパク質]]([[bone morphogenetic protein]]: [[BMP]]) がもつ神経抑制作用を打ち消すことで、外胚葉から神経外胚葉を誘導することができる<ref name=ref1 />。
 マンゴルトは1930年代前半に(編集コメント:マンゴルトは1924年に死亡したようです。年代をご確認下さい)、前方神経板下の中内胚葉細胞を表皮外胚葉領域に移植すると頭部が誘導され、後方神経板下の中胚葉細胞を表皮外胚葉領域に移植すると胴体および尾部が誘導されることを示した。これら一連の実験から、原口背唇部の神経誘導活性は時間とともに性質が変化し、オーガナイザー細胞が前方へ移動する過程において、オーガナイザーから異なるシグナルを受け取った外胚葉には、前後軸に沿って異なる性質をもつ領域が形成されると考えられた。1990年代前半、ついに、頭部オーガナイザー因子として、[[ノギン]]([[Noggin]])、[[コーディン]]([[Chordin]]) および[[フォリスタチン]]([[Follistatin]]) が同定された。これらの分子は、表皮外胚葉から分泌される[[骨形成タンパク質]]([[bone morphogenetic protein]]: [[BMP]]) がもつ神経抑制作用を打ち消すことで、外胚葉から神経外胚葉を誘導することができる<ref name=ref1 />。


 [[wikipedia:ja:ニュークープ|ニュークープ]]は1950年代前半に、中枢神経系の前後軸パターン化に関する活性化-形質変換(activation-transformation)モデルを提唱した<ref name=ref1 />。第一段階として、原口背唇部の細胞が分泌するシグナル分子が、外胚葉を神経外胚葉へと活性化し、神経板に前脳に相当する領域の性質を与える。第二段階として、[[トランスフォーマー]]と呼ばれる[[後方化分子]]の濃度勾配が神経板の前後軸に沿って形成される。その結果、初期神経板の性質は後方化分子の濃度に依存して、[[中脳]]、[[後脳]]および[[脊髄]]の性質へと変換されるという考え方である。
 [[wikipedia:fr:Peter Nieuwkoop|ニュークープ]]は1950年代前半に、中枢神経系の前後軸パターン化に関する活性化-形質変換(activation-transformation)モデルを提唱した<ref name=ref1 />。第一段階として、原口背唇部の細胞が分泌するシグナル分子が、外胚葉を神経外胚葉へと活性化し、神経板に前脳に相当する領域の性質を与える。第二段階として、[[トランスフォーマー]]と呼ばれる[[後方化分子]]の濃度勾配が神経板の前後軸に沿って形成される。その結果、初期神経板の性質は後方化分子の濃度に依存して、[[中脳]]、[[後脳]]および[[脊髄]]の性質へと変換されるという考え方である。


 現在では、[[Wnt]]などのトランスフォーマーの性質を満たす後方化分子が同定されており、シュペーマン/マンゴルトとニュークープのモデルの両者を重ね合わせたものが、現代の神経発生生学における前後軸形成機構の基礎となっている<ref name=ref1 />。
 現在では、[[Wnt]]などのトランスフォーマーの性質を満たす後方化分子が同定されており、シュペーマン/マンゴルトとニュークープのモデルの両者を重ね合わせたものが、現代の神経発生生学における前後軸形成機構の基礎となっている<ref name=ref1 />。