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[[image:前後軸図3.jpg|thumb|300px|'''図3.大脳皮質原基の前後軸パターン化'''<br>大脳皮質原基における遺伝子発現 (<ref name=ref14><pubmed>18524571</pubmed></ref>を基に作成) F/M, prefrontal/motor cortex (前頭前皮質/運動野); S1, primary somatosensory cortex (一次体性感覚野); A1,primary auditory cortex (一次聴覚野); V1, primary visual cortex (一次視覚野)]]
[[image:前後軸図3.jpg|thumb|300px|'''図3.大脳皮質原基の前後軸パターン化'''<br>大脳皮質原基における遺伝子発現 (<ref name=ref14><pubmed>18524571</pubmed></ref>を基に作成) F/M, prefrontal/motor cortex (前頭前皮質/運動野); S1, primary somatosensory cortex (一次体性感覚野); A1,primary auditory cortex (一次聴覚野); V1, primary visual cortex (一次視覚野)]]


 前脳は間脳と終脳に分けられる。予定前脳領域の神経板では、[[前方神経境界領域]] (anterior neural boundary: ANBまたはanterior neural ridge: ANR) が二次シグナリングセンターとして機能し、分泌されるFGF8が前脳のパターン化に重要である<ref name=ref5 />。様々な転写因子遺伝子の発現パターンと形態学的な境界との比較により、前脳を前後軸に沿って6つの[[プロソメア領域]] (p1からp6) に区画化する[[プロソメアモデル]](prosomeric model)が提唱された<ref name=ref11><pubmed>7939711</pubmed></ref>。現在では、p4からp6領域は、secondary prosencehplaon(終脳と視床下部)として一区画とされている<ref name=ref12><pubmed>12948657</pubmed></ref>。(図2)。FGF8は前脳においては、[[Six3]]の発現を誘導する。p2/p3境界は、Six3およびFezf1/2の後方発現境界とIrx3の前方発現境界に一致している<ref name=ref5 />。Six3や[[Fezf1]]/[[Fezf2|2]]はp2/3境界形成に必須の遺伝子である(図2)<ref name=ref5 />。p2/p3境界には[[ソニックヘッジホッグ]]([[sonic hedgehog]]: [[Shh]]) を発現する[[Zli 領域]] ([[zona limitance intrathalamica]])が形成され、[[間脳原基]]から生じる[[視床]]の前後軸パターン化に関与している<ref name=ref5 />(図2)。間脳・中脳境界は、間脳後部に発現するPax6と中脳に発現するEn2の相互抑制機構により確立される(図2)。
 前脳は間脳と終脳に分けられる。予定前脳領域の神経板では、[[前方神経境界領域]] (anterior neural boundary: ANBまたはanterior neural ridge: ANR) が二次シグナリングセンターとして機能し、分泌されるFGF8が前脳のパターン化に重要である<ref name=ref5 />。様々な転写因子遺伝子の発現パターンと形態学的な境界との比較により、前脳を前後軸に沿って6つの[[プロソメア領域]] (p1からp6) に区画化する[[プロソメアモデル]](prosomeric model)が提唱された<ref name=ref11><pubmed>7939711</pubmed></ref>


 p3の前方部の背側から腹側にかけての領域からは、将来の[[大脳皮質]]、[[線条体]]、[[淡蒼球]]、[[視床下部]]が派生する。脳胞形成後の終脳先端正中部に位置するcommissural plateにはFGF8が発現している (図2)。FGF8をマウス大脳皮質原基の前方領域に発現させると、本来前方に位置する領野が後方へとシフトする。一方、FGF8を大脳皮質原基の後方領域に発現させると鏡像対称な[[体性感覚野]][[バレル構造]]が形成される。これらの結果から、commissural plate から分泌されるFGF8の濃度勾配が大脳皮質原基の前後軸パターン化を制御していることが示唆された<ref name=ref13><pubmed>11567107</pubmed></ref>。また、大脳皮質原基の前方ではPax6, [[Sp8]]の発現が高く、後方ではEmx2, [[Couptf1]]の発現が高く、FGF8 はEmx2の発現を抑制する。これらの転写制御因子は、大脳皮質における各領野の位置を決定するパターン化因子として機能している (図3) <ref name=ref14><pubmed>18524571</pubmed></ref>。
 現在では、p4からp6領域は、secondary prosencehplaon(終脳と視床下部)として一区画とされている<ref name=ref12><pubmed>12948657</pubmed></ref>。(図2)。FGF8は前脳においては、[[Six3]]の発現を誘導する。p2/p3境界は、Six3およびFezf1/2の後方発現境界とIrx3の前方発現境界に一致している<ref name=ref5 />。Six3や[[Fezf1]]/[[Fezf2|2]]はp2/3境界形成に必須の遺伝子である(図2)<ref name=ref5 />。p2/p3境界には[[ソニックヘッジホッグ]]([[sonic hedgehog]]: [[Shh]]) を発現する[[Zli 領域]] ([[zona limitance intrathalamica]])が形成され、[[間脳原基]]から生じる[[視床]]の前後軸パターン化に関与している<ref name=ref5 />(図2)。間脳・中脳境界は、間脳後部に発現するPax6と中脳に発現するEn2の相互抑制機構により確立される(図2)。
 
 p3の前方部の背側から腹側にかけての領域からは、将来の[[大脳皮質]]、[[線条体]]、[[淡蒼球]]、[[視床下部]]が派生する。脳胞形成後の終脳先端正中部に位置するcommissural plateにはFGF8が発現している (図2)。FGF8をマウス大脳皮質原基の前方領域に発現させると、本来前方に位置する領野が後方へとシフトする。一方、FGF8を大脳皮質原基の後方領域に発現させると鏡像対称な[[体性感覚野]][[バレル構造]]が形成される。これらの結果から、commissural plate から分泌されるFGF8の濃度勾配が大脳皮質原基の前後軸パターン化を制御していることが示唆された<ref name=ref13><pubmed>11567107</pubmed></ref>
 
 また、大脳皮質原基の前方ではPax6, [[Sp8]]の発現が高く、後方ではEmx2, [[Couptf1]]の発現が高く、FGF8 はEmx2の発現を抑制する。これらの転写制御因子は、大脳皮質における各領野の位置を決定するパターン化因子として機能している (図3) <ref name=ref14><pubmed>18524571</pubmed></ref>。


== 関連項目 ==
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