「前頭葉」の版間の差分

107 バイト追加 、 2015年5月15日 (金)
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 前頭葉の各領域の特徴を「前後軸」と「内外軸」の観点から捉え直すことができる。前方から後方へ向かう「前後軸」にそって、前頭前野、高次運動野(6野、24野背側部)、一次運動野(4野)がある(図1)。前方から後方へ向かって、表現される内容が抽象的内容から具体的動作へと移り変わる(「前後軸」、図2)。さらに、内側から外側の方向にも別の機能分化がある(「内外軸」、図3、4)。
 前頭葉の各領域の特徴を「前後軸」と「内外軸」の観点から捉え直すことができる。前方から後方へ向かう「前後軸」にそって、前頭前野、高次運動野(6野、24野背側部)、一次運動野(4野)がある(図1)。前方から後方へ向かって、表現される内容が抽象的内容から具体的動作へと移り変わる(「前後軸」、図2)。さらに、内側から外側の方向にも別の機能分化がある(「内外軸」、図3、4)。


== 一次運動野 ==
== 一次運動野 (Primary motor area) ==
 一次運動野は、中心溝の前方(中心前回)にあり、Brodmann第4野に相当する(図1)。「内外軸」にそって体部位再現があり、内側から外側へと向かって、下肢、体幹、上肢、手指、顔と口唇の動きを司る部位がある(図3)。精緻な動きを行う手指や口唇の動きを支配する部位が広い領域を占める一方で、それが必要とされない体幹や下肢を支配する部位は狭い。一次運動野は最終的な運動出力を形成する場である(「前後軸」、図2)。皮質脊髄路の大部分が延髄錐体から脊髄へ入る際に左右が入れ替わるため(錐体交叉)、左側(右側)の一次運動野は右側(左側)の体の動きを、主として制御するという特徴がある。
 一次運動野は、中心溝の前方(中心前回)にあり、Brodmann第4野に相当する(図1)。「内外軸」にそって体部位再現があり、内側から外側へと向かって、下肢、体幹、上肢、手指、顔と口唇の動きを司る部位がある(図3)。精緻な動きを行う手指や口唇の動きを支配する部位が広い領域を占める一方で、それが必要とされない体幹や下肢を支配する部位は狭い。一次運動野は最終的な運動出力を形成する場である(「前後軸」、図2)。皮質脊髄路の大部分が延髄錐体から脊髄へ入る際に左右が入れ替わるため(錐体交叉)、左側(右側)の一次運動野は右側(左側)の体の動きを、主として制御するという特徴がある。


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 一次運動野の前方には、高次運動野が広がっている(図1)。外側に運動前野が、より内側に補足運動野が、最も内側には帯状皮質運動がある(「内外軸」、図4)。運動前野と補足運動野はBrodmann6野にあり、帯状皮質運動野は主としてBrodmann24野にある。
 一次運動野の前方には、高次運動野が広がっている(図1)。外側に運動前野が、より内側に補足運動野が、最も内側には帯状皮質運動がある(「内外軸」、図4)。運動前野と補足運動野はBrodmann6野にあり、帯状皮質運動野は主としてBrodmann24野にある。


=== 運動前野 ===
=== 運動前野 (Premotor area) ===
 運動前野は、視覚情報を初めとする感覚情報に基づいて動作を構築する過程で中心的な役割を果たす(「内外軸」、図4)。代表的な例として、手を伸ばして物をつかむ動作や、食べ物を口に入れる動作が挙げられる。運動前野は背側部(背側運動前野)と腹側部(腹側運動前野)に大別される(図1)。
 運動前野は、視覚情報を初めとする感覚情報に基づいて動作を構築する過程で中心的な役割を果たす(「内外軸」、図4)。代表的な例として、手を伸ばして物をつかむ動作や、食べ物を口に入れる動作が挙げられる。運動前野は背側部(背側運動前野)と腹側部(腹側運動前野)に大別される(図1)。


背側運動前野と腹側運動前野の機能的役割は異なる。視覚情報が指示する内容に従って動作を選択する過程(例:赤信号をみてブレーキを踏む)は、条件付き視覚運動変換と呼ばれるが、こうした場合に、背側運動前野は、動作選択の場として重要な役割を果たす。到達運動において、背側運動前野は肩を中心とした腕の動きを制御しており、つかもうとする物へ向かって腕全体を運ぶ過程に関与する。これに対し、腹側運動前部は、手や口で物体をつかむことにおいて重要であり、物体の特徴(形、大きさ、傾きなど)に応じて、手や口の形状を変化させる過程に関与する。背側運動前野は体を中心とした動作制御(身体を中心とした座標系を用いており、体をどう動かすかという観点からの制御)に関与し、腹側運動前野は対象物を中心とした動作制御(物体を中心とした座標系を用いており、どう対象物に働きかけるかという観点からの制御)に関与している。
背側運動前野と腹側運動前野の機能的役割は異なる。視覚情報が指示する内容に従って動作を選択する過程(例:赤信号をみてブレーキを踏む)は、条件付き視覚運動変換と呼ばれるが、こうした場合に、背側運動前野は、動作選択の場として重要な役割を果たす。到達運動において、背側運動前野は肩を中心とした腕の動きを制御しており、つかもうとする物へ向かって腕全体を運ぶ過程に関与する。これに対し、腹側運動前部は、手や口で物体をつかむことにおいて重要であり、物体の特徴(形、大きさ、傾きなど)に応じて、手や口の形状を変化させる過程に関与する。背側運動前野は体を中心とした動作制御(身体を中心とした座標系を用いており、体をどう動かすかという観点からの制御)に関与し、腹側運動前野は対象物を中心とした動作制御(物体を中心とした座標系を用いており、どう対象物に働きかけるかという観点からの制御)に関与している。


=== 補足運動野 ===
=== 補足運動野 (Supplementary motor area) ===
 前頭葉内側面の補足運動野を電気刺激すると、前方から後方へ向かって、顔、前肢、後肢の運動が誘発される。一次運動野では単純な運動が誘発されるが、補足運動野では複数の間節にまたがる複雑な運動が誘発される。補足運動野よりも前方に、体部位再現が明瞭ではないが、高次な運動制御に関与する部位がある。この部位もBrodmann6野にあり、前補足運動野と呼ばれる。
 前頭葉内側面の補足運動野を電気刺激すると、前方から後方へ向かって、顔、前肢、後肢の運動が誘発される。一次運動野では単純な運動が誘発されるが、補足運動野では複数の間節にまたがる複雑な運動が誘発される。補足運動野よりも前方に、体部位再現が明瞭ではないが、高次な運動制御に関与する部位がある。この部位もBrodmann6野にあり、前補足運動野と呼ばれる。


 感覚誘導性の制御で特徴づけられる運動前野とは対照的に、補足運動野は自発的な動作開始、記憶された情報にもとづいた動作の順序制御に関与する(「内外軸」、図4)。さらに、補足運動野は、左右の手に異なる動作をさせて両手を協調的に使用する過程で中心となる。 前補足運動野は、順序動作を組み替える過程、動作の中止や変更、複数動作の段階の制御(例:1番目、2番目など)といった、動作制御の高次的側面に関与する。
 感覚誘導性の制御で特徴づけられる運動前野とは対照的に、補足運動野は自発的な動作開始、記憶された情報にもとづいた動作の順序制御に関与する(「内外軸」、図4)。さらに、補足運動野は、左右の手に異なる動作をさせて両手を協調的に使用する過程で中心となる。 前補足運動野は、順序動作を組み替える過程、動作の中止や変更、複数動作の段階の制御(例:1番目、2番目など)といった、動作制御の高次的側面に関与する。


=== 帯状皮質運動野 ===
=== 帯状皮質運動野 (Cingulate motor area) ===
 帯状溝の中に帯状皮質運動野がある(図1)。帯状皮質運動野は大脳辺縁系(帯状皮質、扁桃体、海馬、視床下部、島皮質、大脳基底核の前方腹側系など)からの豊富な入力によって特徴づけられる(「内外軸」、図4)。帯状皮質は、情動、痛み、体内環境情報に関する情報を集約する。帯状皮質運動野は、こうした情報に基づいた動作の制御に関与する。集めた情報を意識レベルまで高めることにより、動機付けとなる信号を生成して動作発現へとつなげる。
 帯状溝の中に帯状皮質運動野がある(図1)。帯状皮質運動野は大脳辺縁系(帯状皮質、扁桃体、海馬、視床下部、島皮質、大脳基底核の前方腹側系など)からの豊富な入力によって特徴づけられる(「内外軸」、図4)。帯状皮質は、情動、痛み、体内環境情報に関する情報を集約する。帯状皮質運動野は、こうした情報に基づいた動作の制御に関与する。集めた情報を意識レベルまで高めることにより、動機付けとなる信号を生成して動作発現へとつなげる。


== 前頭前野 ==
== 前頭前野 (Prefrontal cortex) ==
 高次運動野よりも前方に、前頭前野がある。前頭前野は高次脳機能の中枢であり、人間で特に大きく発達している。一次運動野では具体的動作が主表現であるのに対して、前頭前野では抽象的行動が主表現である(前頭葉の「前後軸」、図2)。
 高次運動野よりも前方に、前頭前野がある。前頭前野は高次脳機能の中枢であり、人間で特に大きく発達している。一次運動野では具体的動作が主表現であるのに対して、前頭前野では抽象的行動が主表現である(前頭葉の「前後軸」、図2)。


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