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<font size="+1">吉田 竜介</font><br>
<font size="+1">吉田 竜介</font><br>
''九州大学大学院歯学研究院口腔機能解析学分野、九州大学大学院歯学研究院OBT研究センター''<br>
''九州大学大学院歯学研究院口腔機能解析学分野、九州大学大学院歯学研究院OBT研究センター''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年1月23日 原稿完成日:201X年X月X日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2018年1月23日 原稿完成日:2018年4月26日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/ichirofujita 藤田 一郎](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/ichirofujita 藤田 一郎](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br>
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 電子顕微鏡像で細胞質の部分が暗く見えることから'''暗調細胞'''とも呼ばれる。味蕾の中ではおよそ50~60%程度の割合を占める。
 電子顕微鏡像で細胞質の部分が暗く見えることから'''暗調細胞'''とも呼ばれる。味蕾の中ではおよそ50~60%程度の割合を占める。


 味孔側には長い[[微絨毛]]が存在し、湾入した核を持つ。[[Glutamate-aspartate transporter]][[GLAST]]<ref><pubmed>10998100</pubmed></ref>や[[nucleoside triphosphate diphosphohydrolase-2]][[ecto-ATPase]]<ref><pubmed>16680780</pubmed></ref>などを発現し、神経系における[[グリア細胞]]様の機能を持つと考えられる。また形態的にはII型細胞やIII型細胞を包むように存在する様子が見られる。
 味孔側には長い[[微絨毛]]が存在し、湾入した核を持つ。[[グルタミン酸トランスポーター|グルタミン酸・アスパラギン酸トランスポーター]] ([[glutamate-aspartate transporter]]; [[GLAST]])<ref><pubmed>10998100</pubmed></ref>や[[エクトヌクレオチド三リン酸ジホスホヒドロラーゼ‐2]] ([[ectonucleoside triphosphate diphosphohydrolase-2]]; [[ecto-ATPase]])<ref><pubmed>16680780</pubmed></ref>などを発現し、神経系における[[グリア細胞]]様の機能を持つと考えられる。また形態的にはII型細胞やIII型細胞を包むように存在する様子が見られる。


 I型細胞には[[塩味受容体]]として機能する[[上皮性ナトリウムチャネル]]([[ENaC]])が存在するという報告<ref><pubmed>18171468</pubmed></ref>もあるが、I型細胞が塩味受容細胞として機能するかは不明である。
 I型細胞には[[塩味受容体]]として機能する[[上皮性ナトリウムチャネル]]([[ENaC]])が存在するという報告<ref><pubmed>18171468</pubmed></ref>もあるが、I型細胞が塩味受容細胞として機能するかは不明である。
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 味孔側には短い微絨毛が存在し、大きな丸い核を持つ。[[甘味受容体|甘味]]、[[苦味受容体|苦味]]、[[うま味受容体|うま味]]の受容に関連する遺伝子群([[ガストドューシン]], [[ホスホリパーゼCβ2]], [[transient receptor potential channel M5]] ([[TRPM5]])など)を発現し<ref name=ref14681927><pubmed>14681927</pubmed></ref><ref><pubmed>10940948</pubmed></ref><ref><pubmed>12368808</pubmed></ref>、これらの味質の受容を担うと考えられる。実際II型細胞は甘味、苦味またはうま味刺激に対し最も強い応答を示す<ref name=ref17913917><pubmed>17913917</pubmed></ref><ref name=ref12368808 ><pubmed>12368808</pubmed></ref>。
 味孔側には短い微絨毛が存在し、大きな丸い核を持つ。[[甘味受容体|甘味]]、[[苦味受容体|苦味]]、[[うま味受容体|うま味]]の受容に関連する遺伝子群([[ガストドューシン]], [[ホスホリパーゼCβ2]], [[transient receptor potential channel M5]] ([[TRPM5]])など)を発現し<ref name=ref14681927><pubmed>14681927</pubmed></ref><ref><pubmed>10940948</pubmed></ref><ref><pubmed>12368808</pubmed></ref>、これらの味質の受容を担うと考えられる。実際II型細胞は甘味、苦味またはうま味刺激に対し最も強い応答を示す<ref name=ref17913917><pubmed>17913917</pubmed></ref><ref name=ref12368808 ><pubmed>12368808</pubmed></ref>。


 II型細胞には明確な[[シナプス]]構造が見られないが、神経線維と非常に近接した部位に[[subsurface cisternae]]と呼ばれる構造が見られ<ref name=ref14681927 />、ここで神経線維への情報伝達が行われると考えられる。II型細胞は味刺激に応じ[[活動電位]]を生じ、[[Calcium]] homeostasis modulator 1 (CALHM1、ATP透過性イオンチャネル)やヘミチャネル(1~2 nmの孔を持つ六角柱状のタンパク質複合体)を通じ[[ATP]]を放出する<ref><pubmed>17389364</pubmed></ref><ref><pubmed>20519578</pubmed></ref><ref><pubmed>23467090</pubmed></ref>。放出された[[ATP]]は神経線維側に存在する受容体([[P2X2受容体|P2X2]]/[[P2X3受容体]])を活性化<ref><pubmed>16322458</pubmed></ref>することでII型細胞から神経線維へシナプスを介さずに情報が伝達されると考えられる。[[skn-1a]]遺伝子欠損[[マウス]]ではII型細胞が消失することから<ref><pubmed>21572433</pubmed></ref>、skn-1aがII型細胞の[[分化]]や維持に重要な機能を持つと考えられる。
 II型細胞には明確な[[シナプス]]構造が見られないが、神経線維と非常に近接した部位に[[subsurface cisternae]]と呼ばれる構造が見られ<ref name=ref14681927 />、ここで神経線維への情報伝達が行われると考えられる。II型細胞は味刺激に応じ[[活動電位]]を生じ、[[calcium homeostasis modulator 1]] ([[CALHM1]]、[[ATP透過性イオンチャネル]])や[[ヘミチャネル]](1~2 nmの孔を持つ六角柱状のタンパク質複合体)を通じ[[ATP]]を放出する<ref><pubmed>17389364</pubmed></ref><ref><pubmed>20519578</pubmed></ref><ref><pubmed>23467090</pubmed></ref>。放出された[[ATP]]は神経線維側に存在する受容体([[P2X2受容体|P2X2]]/[[P2X3受容体]])を活性化<ref><pubmed>16322458</pubmed></ref>することでII型細胞から神経線維へシナプスを介さずに情報が伝達されると考えられる。[[skn-1a]][[遺伝子欠損マウス]]ではII型細胞が消失することから<ref><pubmed>21572433</pubmed></ref>、[[skn-1a]]がII型細胞の[[分化]]や維持に重要な機能を持つと考えられる。


=== III型細胞 ===
=== III型細胞 ===

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