「味覚受容体」の版間の差分

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 ここでは、昆虫で最も味覚受容体の同定が進んでいるショウジョウバエを例に概説する。ショウジョウバエでは68種類の7回膜貫通型の味覚受容体(gustatory receptor, GR)遺伝子からなるファミリーが同定され、糖や苦み物質に対する受容体や、その受容体を発現する[[味細胞]]が明らかにされている<ref><pubmed> 19660932 </pubmed></ref>。ただし、GRファミリーには、[[嗅覚受容体]]なども含まれており、すべてが味覚受容体として機能しているわけではない。GRファミリーに含まれる味覚受容体は、7回膜貫通型のタンパク質ではあるが、少なくとも一部の受容体はGタンパク質共役型として働くのではなく、リガンド結合型イオンチャネルとして機能することが報告されている<ref><pubmed> 21709218</pubmed></ref>。また、個々の[[味細胞]]は、異なる組み合わせのGR遺伝子を発現することで、様々な糖を受容していると考えられている<ref><pubmed> 25702577 </pubmed></ref>。しかしながら、糖受容体として機能する際のGRのサブユニット構成は明らかにされていない。唯一、GR43aはその発現だけで陽イオンチャネルとして機能することが明らかにされている</ref><ref name="ref33"><pubmed> 21709218</pubmed></ref>。ちなみに、そのGr43aは脳では血リンパ中の果糖の濃度をモニターするのにも役立っている<ref><pubmed> 23178127</pubmed></ref>。
 ここでは、昆虫で最も味覚受容体の同定が進んでいるショウジョウバエを例に概説する。ショウジョウバエでは68種類の7回膜貫通型の味覚受容体(gustatory receptor, GR)遺伝子からなるファミリーが同定され、糖や苦み物質に対する受容体や、その受容体を発現する[[味細胞]]が明らかにされている<ref><pubmed> 19660932 </pubmed></ref>。ただし、GRファミリーには、[[嗅覚受容体]]なども含まれており、すべてが味覚受容体として機能しているわけではない。GRファミリーに含まれる味覚受容体は、7回膜貫通型のタンパク質ではあるが、少なくとも一部の受容体はGタンパク質共役型として働くのではなく、リガンド結合型イオンチャネルとして機能することが報告されている<ref><pubmed> 21709218</pubmed></ref>。また、個々の[[味細胞]]は、異なる組み合わせのGR遺伝子を発現することで、様々な糖を受容していると考えられている<ref><pubmed> 25702577 </pubmed></ref>。しかしながら、糖受容体として機能する際のGRのサブユニット構成は明らかにされていない。唯一、GR43aはその発現だけで陽イオンチャネルとして機能することが明らかにされている</ref><ref name="ref33"><pubmed> 21709218</pubmed></ref>。ちなみに、そのGr43aは脳では血リンパ中の果糖の濃度をモニターするのにも役立っている<ref><pubmed> 23178127</pubmed></ref>。


 GRファミリー以外にも、[[イオンチャネル型受容体]](IR)や[[Transient receptor potentialチャネル]](Trpチャネル)、pickpocketチャネルなども味覚受容体として機能していると考えられている<ref><pubmed>  33683373 </pubmed></ref>。突然変異体の解析などから、Na<sup>+</sup>の受容はIR76b とIR25aに依存し<ref><pubmed> 30307393 </pubmed></ref>、また、アミノ酸感受性にはIR76bとIR20aが関与することが報告されている。さらには、ENaCファミリーの[[Pickpocket28]](PPK28)が水受容細胞が低浸透圧を検知するために必須であることや<ref><pubmed> 20364123 </pubmed></ref>、PPK23がフェロモン受容細胞に発現していること<ref><pubmed>  22632976 </pubmed></ref>、苦味受容体細胞が[[painless]]遺伝子を発現することが[[wikipedia:ja:ワサビ|ワサビ]]の味を感知するために必要であることが報告されている<ref><pubmed> 16647259 </pubmed></ref>。しかしながら、IRやTrpチャネル、pickpocketチャネルが実際に受容体として機能しているかは証明されていない。
 GRファミリー以外にも、[[イオンチャネル型受容体]](IR)や[[Transient receptor potentialチャネル]](Trpチャネル)、pickpocketチャネルなども味覚受容体として機能していると考えられている<ref><pubmed>  33683373 </pubmed></ref>。突然変異体の解析などから、Na<sup>+</sup>の受容はIR76b とIR25aに依存し<ref><pubmed> 30307393 </pubmed></ref>、また、アミノ酸感受性にはIR76bとIR20aが関与することが報告されている<ref><pubmed> 28099851 </pubmed></ref>。さらには、ENaCファミリーの[[Pickpocket28]](PPK28)が水受容細胞が低浸透圧を検知するために必須であることや<ref><pubmed> 20364123 </pubmed></ref>、PPK23がフェロモン受容細胞に発現していること<ref><pubmed>  22632976 </pubmed></ref>、苦味受容体細胞が[[painless]]遺伝子を発現することが[[wikipedia:ja:ワサビ|ワサビ]]の味を感知するために必要であることが報告されている<ref><pubmed> 16647259 </pubmed></ref>。こうしたチャネルは、本来発現していない細胞などに発現することで、味物質に対する応答が引き起こせたことから受容体だと考えられている一方で、実際に受容体として機能しているかは証明されていない。


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==
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