「場所細胞」の版間の差分

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== 歴史  ==
== 歴史  ==


O'keefeとDostrovskyは、自由に行動しているラットの海馬から、電気生理学的手法を活用してニューロンの細胞外電位を観察することにより、場所細胞を発見し1971年に最初の報告をした<ref><pubmed>5124915</pubmed></ref>。技術的には、FET(Field effect transistor)を構成要素とするソースフォロワをヘッドアンプとすることでノイズを低減し、それとワイヤ電極を組み合わせるという当時の最先端技術を活用することで、その発見は実現された。同時期にRanckらも同様の技術を使った実験を行い場所細胞の活動を見ていたが、場所との関連性には気づいていなかったと言われている(Hippocampal Place field)。Ranckらは、この後に頭方位細胞(head direction cell)を発見するなど、場所細胞に関連する数々の重要な報告を行なった。発見当初、O'keefeらは場所細胞はある一定の場所を通過するときにだけ発火するとし、外部環境に左右されると定義した。そのため、その発火パターンは内的な情報には依存しないということが通説であった。これらの場所細胞に関するO'keefeらによる発見当初の見解は、一冊の書籍[http://www.cognitivemap.net/HCMpdf/HCMChapters.html 「The hippocampus as a cognitive map 」]に詳しくまとめられている。そこでは、海馬は心理学者Tolmanにより予想されていた認知地図(cognitive map)の主要素であるという仮説が提唱された。しかし、現在では場所細胞の研究は高度に進展し、その詳細が解明され、O'keefeらの認知地図仮説には数々の修正がなされている。  
O'keefeとDostrovskyは、自由に行動しているラットの海馬から、電気生理学的手法を活用してニューロンの細胞外電位を観察することにより、場所細胞を発見し1971年に最初の報告をした<ref><pubmed>5124915</pubmed></ref>。技術的には、FET(Field effect transistor)を構成要素とするソースフォロワをヘッドアンプとすることでノイズを低減し、それとワイヤ電極を組み合わせるという当時の最先端技術を活用することで、その発見は実現された。同時期にRanckらも同様の技術を使った実験を行い場所細胞の活動を見ていたが、場所との関連性には気づいていなかったと言われている。Ranckらは、この後に頭方位細胞(Head direction cell)を発見するなど、場所細胞に関連する数々の重要な報告を行なった。発見当初、O'keefeらは場所細胞はある一定の場所を通過するときにだけ発火するとし、外部環境に左右されると定義した。そのため、その発火パターンは内的な情報には依存しないということが通説であった。これらの場所細胞に関するO'keefeらによる発見当初の見解は、一冊の書籍[http://www.cognitivemap.net/HCMpdf/HCMChapters.html 「The hippocampus as a cognitive map 」]に詳しくまとめられている。そこでは、海馬は心理学者Tolmanにより予想されていた認知地図(cognitive map)の主要素であるという仮説が提唱された。しかし、現在では場所細胞の研究は高度に進展し、その詳細が解明され、O'keefeらの認知地図仮説には数々の修正がなされている。  


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== 場所受容野の形成  ==
== 場所受容野の形成  ==


場所受容野の形成に関しては、path integrator仮説が提唱されている<ref><pubmed>8987829</pubmed></ref>。path integrator仮説では、航海術の一つである推測自律航法(dead reckoning)と同じ原理で場所受容野が形成される。つまり、出発位置から方向と歩数をもとに現在位置を推定しながら目標位置へ進むため、場所受容野はその推定位置に対して形成される。蓄積される誤差は、ランドマークにより補正される。McNaughtonらは、直線走路実験において、目標位置に対して出発位置を変化させると場所受容野も関連して移動するというPath integrator仮説を支持する報告をした。最近では、内側嗅内皮質がpath integratorの中核であることを支持する報告がある。  
場所受容野の形成に関しては、Path integrator仮説が提唱されている<ref><pubmed>8987829</pubmed></ref>。path integrator仮説では、航海術の一つである推測自律航法(dead reckoning)と同じ原理で場所受容野が形成される。つまり、出発位置から方向と歩数をもとに現在位置を推定しながら目標位置へ進むため、場所受容野はその推定位置に対して形成される。蓄積される誤差は、ランドマークにより補正される。McNaughtonらは、直線走路実験において、目標位置に対して出発位置を変化させると場所受容野も関連して移動するというPath integrator仮説を支持する報告をした。最近では、内側嗅内皮質がpath integratorの中核であることを支持する報告がある。  


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== 場所細胞の発火タイミングとθ位相歳差  ==
== 場所細胞の発火タイミングとθ位相歳差  ==


O'keefeとRecceは、場所細胞の発火タイミングは、海馬で観測されるθ帯域の脳波(θ波)の位相と深い関連があることを発見した。場所受容野の中心に近づくに従い、θ波に対する場所細胞の発火タイミングの位相が前進する。このことから、そのθ位相と場所細胞の発火の関連性を調べることにより、その個体が場所受容野に近づくのか、遠ざかるのかを判定することができる。このθ位相歳差は、時間符号化(temporal coding)と考えられる。他方で、場所細胞の場所受容野内での発火は発火頻度符号化(rate coding)と考えられるため、時間符号化と発火頻度符号化の比較研究対象としても活用されることがある<ref><pubmed>12066184</pubmed></ref><ref><pubmed>12066185</pubmed></ref>。  
O'keefeとRecceは、場所細胞の発火タイミングは、海馬で観測されるθ帯域の脳波(θ波)の位相と深い関連があることを発見した。場所受容野の中心に近づくに従い、θ波に対する場所細胞の発火タイミングの位相が前進する。このことから、そのθ位相と場所細胞の発火の関連性を調べることにより、その個体が場所受容野に近づくのか、遠ざかるのかを判定することができる。このθ位相歳差は、時間符号化(Temporal coding)と考えられる。他方で、場所細胞の場所受容野内での発火は発火頻度符号化(Rate coding)と考えられるため、時間符号化と発火頻度符号化の比較研究対象としても活用されることがある<ref><pubmed>12066184</pubmed></ref><ref><pubmed>12066185</pubmed></ref>。  


== 場所細胞による位置推定  ==
== 場所細胞による位置推定  ==
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== 場所細胞と回想記憶、展望記憶  ==
== 場所細胞と回想記憶、展望記憶  ==


Woodらは、迷路上で交代反応課題を行わせると、場所細胞の発火頻度が過去に通った方向、あるいは未来に行く方向に関連して変調されることを報告した<ref><pubmed>11055443</pubmed></ref>。これを4方向迷路に拡張すると、4進行方向それぞれに対応して発火頻度を上昇させる場所細胞が存在することが明らかになったことから<ref><pubmed>17804637</pubmed></ref>、場所細胞は回想記憶(retrospective memory)だけではなく、展望記憶(prospective memory)、つまり、将来行なおうとする行動を想起するための記憶に関連していることが示唆されている。  
Woodらは、迷路上で交代反応課題を行わせると、場所細胞の発火頻度が過去に通った方向、あるいは未来に行く方向に関連して変調されることを報告した<ref><pubmed>11055443</pubmed></ref>。これを4方向迷路に拡張すると、4進行方向それぞれに対応して発火頻度を上昇させる場所細胞が存在することが明らかになったことから<ref><pubmed>17804637</pubmed></ref>、場所細胞は回想記憶(Retrospective memory)だけではなく、展望記憶(Prospective memory)、つまり、将来行なおうとする行動を想起するための記憶に関連していることが示唆されている。  


== 場所受容野の非対称拡張(Asymmetric expansion of place field)  ==
== 場所受容野の非対称拡張(Asymmetric expansion of place field)  ==


McNaughtonらは、ラットが何度も走路を行き来すると、場所受容野が移動方向と逆方向に非対称に拡張されることを発見した<ref><pubmed>9238078</pubmed></ref>。Wilsonらは、CA3からCA1へのフィードフォワードのシナプスが、スパイクタイミング依存可塑性(spike timing dependent plasticity)に従いこの非対称拡張現象を起こしていると予測している<ref><pubmed>10774737</pubmed></ref>。  
McNaughtonらは、ラットが何度も走路を行き来すると、場所受容野が移動方向と逆方向に非対称に拡張されることを発見した<ref><pubmed>9238078</pubmed></ref>。Wilsonらは、CA3からCA1へのフィードフォワードのシナプスが、スパイクタイミング依存可塑性(Spike timing dependent plasticity)に従いこの非対称拡張現象を起こしていると予測している<ref><pubmed>10774737</pubmed></ref>。  


== 場所細胞群の発火パターン再生(リプレイ)  ==
== 場所細胞群の発火パターン再生(リプレイ)  ==


場所細胞は、動物が走っているときに観察されるが、睡眠時にも活動する。しかし、その発火パターンは場所に依存しない。1994年、WilsonとMcNaughtonは、覚醒時から睡眠時に渡って数十の場所細胞の活動を調べることにより、覚醒時に発火活動に相関のある場所細胞は、睡眠時にも相関が強いことを発見した<ref><pubmed>8036517</pubmed></ref>。Wilsonらは、この研究を更に進展させて、数十の場所細胞の発火パターンが、ノンレム睡眠中、特に脳波に鋭波が観察されているときに、場所細胞が同じような発火パターンで再生(リプレイ)されていることを発見した。発火パターンは時間軸上で数倍に圧縮されている。睡眠時だけではなく、覚醒時の不動状態の鋭波発生時にも覚醒運動時と同様な発火パターンが圧縮されて再生されることが報告されていたが、Wilsonらは逆向きに再生される発火パターン(reverse replay)も発見している。DragoiとTonegawaは、睡眠中に発生する場所細胞の発火パターンが、その後の未知の条件下で再生されるプリプレイ(preplay)という現象も報告している。  
場所細胞は、動物が走っているときに観察されるが、睡眠時にも活動する。しかし、その発火パターンは場所に依存しない。1994年、WilsonとMcNaughtonは、覚醒時から睡眠時に渡って数十の場所細胞の活動を調べることにより、覚醒時に発火活動に相関のある場所細胞は、睡眠時にも相関が強いことを発見した<ref><pubmed>8036517</pubmed></ref>。Wilsonらは、この研究を更に進展させて、数十の場所細胞の発火パターンが、ノンレム睡眠中、特に脳波に鋭波が観察されているときに、場所細胞が同じような発火パターンで再生(Replay)されていることを発見した。発火パターンは時間軸上で数倍に圧縮されている。睡眠時だけではなく、覚醒時の不動状態の鋭波発生時にも覚醒運動時と同様な発火パターンが圧縮されて再生されることが報告されていたが、Wilsonらは逆向きに再生される発火パターン(Reverse replay)も発見している。DragoiとTonegawaは、睡眠中に発生する場所細胞の発火パターンが、その後の未知の条件下で再生されるプリプレイ(Preplay)という現象も報告している。  


==場所細胞とエピソード記憶==   
==場所細胞とエピソード記憶==   
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== 場所受容野の再配置 ==
== 場所受容野の再配置 ==


MullerとFentonらは、場所細胞の場所受容野が外部環境に影響されて動的かつ瞬時に再配置されることを突き止めた。そして、部分再配置(partial remapping)と完全再配置(complete remapping)に分けられると明らかにした。最近では、Leutgebらの実験により、それらの再配置パターンが、場所受容野と発火頻度が共に変わってしまう包括的再配置(global remapping)と、場所受容野は同一で発火頻度だけ変化する頻度再配置(rate remapping)とに分けられ、海馬のCA1,CA3,歯状回でその再配置度合いが異なることを報告した。完全再配置と包括的再配置は、同一現象であるという見解もある。  
MullerとFentonらは、場所細胞の場所受容野が外部環境に影響されて動的かつ瞬時に再配置されることを突き止めた。そして、部分再配置(Partial remapping)と完全再配置(Complete remapping)に分けられると明らかにした。最近では、Leutgebらの実験により、それらの再配置パターンが、場所受容野と発火頻度が共に変わってしまう包括的再配置(Global remapping)と、場所受容野は同一で発火頻度だけ変化する頻度再配置(Rate remapping)とに分けられ、海馬のCA1,CA3,歯状回でその再配置度合いが異なることを報告した。完全再配置と包括的再配置は、同一現象であるという見解もある。  


== 場所細胞におけるパターン分離、パターン完成能力  ==
== 場所細胞におけるパターン分離、パターン完成能力  ==


場所受容野の再配置を観測すると、CA1野,CA3野,歯状回でその再配置度合いが変化することが報告された<ref><pubmed>15272123</pubmed></ref>。この点から、Marrが提言したパターン分離、完成能力    <ref><pubmed>4399412</pubmed></ref>に関して場所細胞の再配置を利用した研究が行われている。歯状回は、最もパターン分離能力が高く、外部環境の微妙な変化によっても場所受容野の再構築が起こる。これに対して、CA1野は、外部環境の変化に線形に対応して場所受容野の再構築が起こり、パターン完成能力が高いといえる。CA3野に関しては、CA1野と歯状回の中間的な反応をする。歯状回に関しては、パターン分離能力よりもパターン完成能力が高いという報告もあったが、Tonegawaらの研究によると、歯状回では新生した顆粒細胞と、古い顆粒細胞でパターン分離・完成能力が異なる<ref><pubmed>22365813</pubmed></ref>   。このため、電極の留置位置により新生細胞だけを記録する可能性があることから、相反する報告があるものと考えられる。  
場所受容野の再配置を観測すると、CA1野,CA3野,歯状回でその再配置度合いが変化することが報告された<ref><pubmed>15272123</pubmed></ref>。この点から、Marrが提言したパターン分離、完成能力    <ref><pubmed>4399412</pubmed></ref>に関して場所細胞の再配置を利用した研究が行われている。歯状回は、最もパターン分離能力が高く、外部環境の微妙な変化によっても場所受容野の再構築が起こる。これに対して、CA1野は、外部環境の変化に線形に対応して場所受容野の再構築が起こり、パターン完成能力が高いといえる。CA3野に関しては、CA1野と歯状回の中間的な反応をする。歯状回に関しては、パターン分離能力よりもパターン完成能力が高いという報告もあったが、Tonegawaらの研究によると、歯状回では新生した顆粒細胞と、古い顆粒細胞でパターン分離・完成能力が異なる<ref><pubmed>22365813</pubmed></ref>。このため、電極の留置位置により新生細胞だけを記録する可能性があることから、相反する報告があるものと考えられる。  


== 場所細胞と加齢  ==
== 場所細胞と加齢  ==
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== 場所細胞と内側嗅内皮質の格子細胞 ==
== 場所細胞と内側嗅内皮質の格子細胞 ==


場所細胞の場所情報は、海馬で生成されているのか?Moserらは、海馬の一シナプス上流にあり、海馬への情報入出力を担う内側嗅内皮質(medial entorhinal cortex)に、単なる場所ではなく、その場所受容野が格子状になる格子細胞(grid cell)を発見した<ref><pubmed>15333832</pubmed></ref>。格子細胞の場所受容野は、海馬と同様に再配置(realignment)が起こることが報告されている。嗅内皮質II,III層は海馬へ投射し、海馬はV,VI層へその出力を投射している。しかし、格子細胞はいずれの層でも見つかっている。また、海馬を損傷させると、格子細胞の場所受容野の不安定になることから、格子細胞は場所細胞の場所情報の単純な情報源ではなく、海馬と嗅内皮質の相互作用によってそれぞれの場所情報が安定的に形成されると考えられる。  
場所細胞の場所情報は、海馬で生成されているのか?Moserらは、海馬の一シナプス上流にあり、海馬への情報入出力を担う内側嗅内皮質(Medial entorhinal cortex)に、単なる場所ではなく、その場所受容野が格子状になる格子細胞(Grid cell)を発見した<ref><pubmed>15333832</pubmed></ref>。格子細胞の場所受容野は、海馬と同様に再配置(Realignment)が起こることが報告されている。嗅内皮質II,III層は海馬へ投射し、海馬はV,VI層へその出力を投射している。しかし、格子細胞はいずれの層でも見つかっている。また、海馬を損傷させると、格子細胞の場所受容野の不安定になることから、格子細胞は場所細胞の場所情報の単純な情報源ではなく、海馬と嗅内皮質の相互作用によってそれぞれの場所情報が安定的に形成されると考えられる。  


== 場所細胞と頭方位細胞(head direction cell)  ==
== 場所細胞と頭方位細胞 ==


1984年にRanckは、ラットのpersubiculumにおいて頭が向いている方向に受容野を持つ錐体細胞を発見し、頭方位細胞(head direction cell)と名づけた。場所細胞の場所受容野は、方向に依存することもあり、その方向情報は頭方位細胞由来と考えられている。現在では、頭方位細胞はanterior thalamus、retrosplenial cortex、 lateral mammillary nucleus、dorsal tegmental nucleus、striatum、entorhinal cortexにも存在することが明らかになっている。  
1984年にRanckは、ラットのpersubiculumにおいて頭が向いている方向に受容野を持つ錐体細胞を発見し、頭方位細胞(Head direction cell)と名づけた。場所細胞の場所受容野は、方向に依存することもあり、その方向情報は頭方位細胞由来と考えられている。現在では、頭方位細胞はanterior thalamus、retrosplenial cortex、 lateral mammillary nucleus、dorsal tegmental nucleus、striatum、entorhinal cortexにも存在することが明らかになっている。  


== 場所細胞と時間細胞(place cell and time)  ==
== 場所細胞と時間細胞 ==


Eichenbaumらは、場所細胞は場所だけではなく時間も表現していることを報告した<ref><pubmed>17988635</pubmed></ref>。訓練課題に遅延期間を設定すると、ある特定の場所で、ある特定の遅延時間が経過すると発火する場所細胞が存在する。海馬には場所には依存せずにある特定の遅延時間だけを表現している細胞も存在し、時間細胞(time cell)と呼ばれている。  
Eichenbaumらは、場所細胞は場所だけではなく時間も表現していることを報告した<ref><pubmed>17988635</pubmed></ref>。訓練課題に遅延期間を設定すると、ある特定の場所で、ある特定の遅延時間が経過すると発火する場所細胞が存在する。海馬には場所には依存せずにある特定の遅延時間だけを表現している細胞も存在し、時間細胞(Time cell)と呼ばれている。  


== 霊長類の景観細胞(spatial view cell)  ==
== 霊長類の景観細胞 ==


Rollsらは、霊長類の海馬では場所ではなく、視点の先にある景観に反応する細胞が多く存在することを報告した。げっ歯類とは異なり、霊長類では視覚系と動眼制御系が発達しているため、実際に訪れなくともその場所についての情報を想起したり探索したりできる。この能力が実際に訪れている場所ではなく、現在見ている景観に反応する景観細胞を形成していると考えられる。
Rollsらは、霊長類の海馬では場所ではなく、視点の先にある景観に反応する細胞が多く存在することを報告し、景観細胞(Spatial view cell)と名づけた。げっ歯類とは異なり、霊長類では視覚系と動眼制御系が発達しているため、実際に訪れなくともその場所についての情報を想起したり探索したりできる。この能力が実際に訪れている場所ではなく、現在見ている景観に反応する景観細胞を形成していると考えられる。


<references />
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(執筆者:高橋晋、櫻井芳雄、担当編集委員:藤田一郎)
(執筆者:高橋晋、櫻井芳雄、担当編集委員:藤田一郎)
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