「変換症」の版間の差分

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==危険因子==
==危険因子==
 ジャネは解離と幼児期の外傷体験との関連を指摘していたが、変換症の患者には小児期の虐待やネグレクトがみられるという報告はいくつかある<ref name=ref6>'''Singh, S.P., Lee, A.S.'''<br>Conversion disorders in Nottingham: alive, but not kicking.<br>J''. Psychosom. Res'' : 1997, 43; 425-430</ref>。Rolofsらは、変換症の患者54名と感情障害の患者50名を比較した結果、変換症群は虐待の頻度がより高く、性的虐待がより長期間にわたり、近親姦の回数がより多かったこと報告した。また変換症の症状は、心的外傷体験に対する防衛反応としての自己催眠により生じるという理論があるが、虐待後の変換症の発症に催眠感受性がある程度影響することは、この理論を支持していると考えられる<ref name=ref7><pubmed> 12411227 </pubmed></ref>。
 ジャネは解離と幼児期の外傷体験との関連を指摘していたが、変換症の患者には小児期の虐待やネグレクトがみられるという報告はいくつかある<ref name=ref6>'''Singh, S.P., Lee, A.S.'''<br>Conversion disorders in Nottingham: alive, but not kicking.<br>J''. Psychosom. Res'' : 1997, 43; 425-430</ref>。Rolofsらは、変換症の患者54名と感情障害の患者50名を比較した結果、変換症群は虐待の頻度がより高く、性的虐待がより長期間にわたり、近親姦の回数がより多かったこと報告した。また変換症の症状は、心的外傷体験に対する防衛反応としての自己催眠により生じるという理論があるが、虐待後の変換症の発症に催眠感受性がある程度影響することは、この理論を支持していると考えられた<ref name=ref7><pubmed> 12411227 </pubmed></ref>。


==併存症==
==併存症==
 変換症の併存診断には、[[気分障害]]、[[パニック症]]、[[全般不安症]]、[[外傷後ストレス障害]]、解離症、[[社交不安症]]、[[強迫症]]などが多い。変換症の1/3に[[大うつ病]]が併存しているという報告もある<ref name=ref8><pubmed> 7872143 </pubmed></ref>。大うつ病と診断されたならば、[[抗うつ剤]]などで治療することが望ましい。[[パーソナリティ障害]]が変換症に認められることは多い。神経疾患あるいは他の医学的疾患もまた変換症とよく併存する。
 変換症の併存診断には、[[気分障害]]、[[パニック症]]、[[全般不安症]]、[[外傷後ストレス障害]]、解離症、[[社交不安症]]、[[強迫症]]などが多い。変換症の1/3に[[大うつ病]]が併存しているという報告もある<ref name=ref8><pubmed> 7872143 </pubmed></ref>。大うつ病と診断されたならば、[[抗うつ薬]]などで治療することが望ましい。[[パーソナリティ障害]]が変換症に認められることは多い。神経疾患あるいは他の医学的疾患もまた変換症とよく併存する。


 非てんかん性発作の患者の併存症としては、[[うつ病]]が12—100%、[[不安症]]が11—80%、解離症が90%、他の身体症状症が42—93%、パーソナリティ障害が33—66%である<ref name=ref9><pubmed> 10496238 </pubmed></ref>。Reuberらは、非てんかん性発作の患者にはパーソナリティ障害が多くみられ、転帰はパーソナリティの特徴によって異なることを示した<ref name=ref10><pubmed> 15090571 </pubmed></ref>。
 非てんかん性発作の患者の併存症としては、[[うつ病]]が12—100%、[[不安症]]が11—80%、解離症が90%、他の身体症状症が42—93%、パーソナリティ障害が33—66%である<ref name=ref9><pubmed> 10496238 </pubmed></ref>。Reuberらは、非てんかん性発作の患者にはパーソナリティ障害が多くみられ、転帰はパーソナリティの特徴によって異なることを示した<ref name=ref10><pubmed> 15090571 </pubmed></ref>。
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==治療==
==治療==
 変換症の予後は症状の持続期間と大いに関連しているため、神経科医は時期を失せずに早期に精神科医に紹介することが望まれる。変換症に対しては、[[認知行動療法]]や[[行動療法]]、[[精神分析療法]]、[[抗うつ剤]]療法、[[経頭蓋磁気刺激法]](transcranial magnetic stimulation:TMS)などの効果が報告されており、薬物療法、精神療法、理学療法などを適宜組み合わせることが推奨される。しかし、現状ではそれらを支持する経験的データは乏しいといわざるをえない。臨床家は過剰な検査や不適切な医学的治療による医原性の問題に注意しながら治療することが必要である。
 変換症の予後は症状の持続期間と大いに関連しているため、神経科医は時期を失せずに早期に精神科医に紹介することが望まれる。変換症に対しては、[[認知行動療法]]や[[行動療法]]、[[精神分析療法]]、[[抗うつ薬]]療法、[[経頭蓋磁気刺激法]](transcranial magnetic stimulation:TMS)などの効果が報告されており、薬物療法、精神療法、理学療法などを適宜組み合わせることが推奨される。しかし、現状ではそれらを支持する経験的データは乏しいといわざるをえない。臨床家は過剰な検査や不適切な医学的治療による医原性の問題に注意しながら治療することが必要である。


==疫学==
==疫学==

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