「外傷後ストレス障害」の版間の差分

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===    英語:posttraumatic stress disorder、英略語:PTSD  ===
===      英語:posttraumatic stress disorder、英略語:PTSD  ===


同義語:心的外傷後ストレス障害  
同義語:心的外傷後ストレス障害  
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  診断基準はDSM‐Ⅳ‐TRとICD‐10共に収載されているが、前者の診断基準が用いられることが多い。  
  診断基準はDSM‐Ⅳ‐TRとICD‐10共に収載されているが、前者の診断基準が用いられることが多い。  


  尚、PTSDは他の精神障害とは異なり、診断基準にトラウマ体験への暴露が含まれている。症状、持続期間、機能障害が診断基準を満たしても、トラウマ体験がA基準を満たさなければ、適応障害と診断するべきである。その一方で、トラウマ体験がA基準を満たしていても、トラウマ体験後に出現した症状が他の精神障害の診断基準を満たしたときはその診断を下す、もしくはPTSDと併記しなければならない。  
  尚、PTSDは他の精神障害とは異なり、診断基準にトラウマ体験への暴露が含まれている。症状、持続期間、機能障害が診断基準を満たしても、トラウマ体験がA基準を満たさなければ、適応障害と診断するべきである。その一方で、トラウマ体験がA基準を満たしていても、トラウマ体験後に出現した症状が他の精神障害の診断基準を満たしたときはその診断を下す、もしくはPTSDと併記しなければならない。
<pre>[[Image:Tsutsui file1.jpg|center|DSM‐Ⅳ‐TRの診断基準]] </pre>
&nbsp; [[Image:Tsutsui file1.jpg|center|945x697px|DSM‐Ⅳ‐TRの診断基準]]


A.その人は、以下の2つがともに認められる心的外傷的な出来事に暴露されたことがある。
&nbsp; [[Image:Tsutsui file1.jpg|center|945x697px|DSM‐Ⅳ‐TRの診断基準]]
 
(1)実際にまたは危うく死ぬまたは重傷を負うような出来事を、1度または数度、あるいは自分または他人の身体の保全に迫る危険を、その人が体験し、目撃し、または直面した。
 
(2)その人の反応は強い恐怖、無力感または戦慄に関するものである。
 
&nbsp;
 
B.心的外傷的な出来事が、以下の1つ(またはそれ以上)の形で再体験され続けている。
 
(1)出来事の反復的、侵入的な苦痛を伴う想起で、それは心像、思考、または知覚を含む。
 
(2)出来事についての反復的で苦痛な夢
 
(3)心的外傷的な出来事が再び起こっているかのように行動したり、感じたりする(その体験を再体験する感覚、錯覚、幻覚、および解離性フラッシュバックのエピソードを含む、また、覚醒時または中毒時に起こるものを含む)。
 
(4)心的外傷的出来事の1つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合に生じる、強い心理的苦痛
 
(5)心的外傷的出来事の1つの側面を象徴し、または類似している内的または外的きっかけに暴露された場合の生理学的反応性
 
&nbsp;
 
C.以下の3つ(またはそれ以上)によって示される、(心的外傷以前には存在していなかった)心的外傷と関連した刺激の持続的回避と、全般的反応性の麻痺
 
(1)心的外傷と関連した思考、感情、、または会話を回避しようとする努力
 
(2)心的外傷を想起させる活動、場所または人物を避けようとする努力
 
(3)心的外傷の重要な側面の想起不能
 
(4)重要な活動への関心または参加の著しい減退
 
(5)他の人から孤立している、または疎遠になっているという感覚
 
(6)感情の範囲の縮小
 
(7)未来が短縮した感覚
 
&nbsp;  
 
D.(心的外傷以前には存在していなかった)持続的な覚醒亢進症状
 
(1)入眠、または睡眠維持の困難
 
(2)いらだたしさまたは怒りの爆発
 
(3)集中困難
 
(4)過度の警戒心
 
(5)過剰な驚愕反応
 
&nbsp;
 
E.障害(基準B,CおよびDの症状)の持続期間が1ヵ月以上
 
F.障害は、臨床上著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
 
 
抜粋であること(小児、例示を除いた)、引用許可必要?


=== &nbsp;症状評価方法  ===
=== &nbsp;症状評価方法  ===
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==== 抗けいれん薬  ====
==== 抗けいれん薬  ====
<pre>====抗けいれん薬====</pre>  
<pre>====抗けいれん薬====</pre>  
有効性に関して一致した結論には至らないが、治療薬としては推奨されていない。
有効性に関して一致した結論には至らないが、治療薬としては推奨されていない。  


== &nbsp;疫学&nbsp;&nbsp; [[Image:Tsutsui file 2.jpg|right|406x261px|原因による有病率の違い]] ==
== &nbsp;疫学&nbsp;&nbsp; [[Image:Tsutsui file 2.jpg|right|406x261px|原因による有病率の違い]] ==
<pre>==疫学==</pre>  
<pre>==疫学==</pre>  
&nbsp; 1995年にKesslerらが行った全米疫学調査<ref><pubmed>7492257</ref>ではPTSDの生涯有病率は男性5.0%、女性10.4%、現在有病率は男性1.5%、女性3.0%だった。また、性暴力などの犯罪被害者のPTSD発症率が自然災害被災者よりも高いことが示された。  
&nbsp; 1995年にKesslerらが行った全米疫学調査<ref><pubmed>7492257</ref>ではPTSDの生涯有病率は男性5.0%、女性10.4%、現在有病率は男性1.5%、女性3.0%だった。また、性暴力などの犯罪被害者のPTSD発症率が自然災害被災者よりも高いことが示された。  
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<u></u>&nbsp;  
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=== 併存障害  ===
=== 併存障害  ===
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=== &nbsp;&nbsp;神経心理的知見  ===
=== &nbsp;&nbsp;神経心理的知見  ===
<pre>===神経心理的知見===</pre>  
<pre>===神経心理的知見===</pre>  
 PTSDの再体験、過覚醒症状は トラウマ体験に対する[[恐怖条件づけ]]とみなすと理解しやすく、暴露療法が有効であることも恐怖条件づけの消去現象と考えると理解しやすい。[[恐怖条件づけ]]を司る[[扁桃体]]と内側前頭前野との連絡についての解剖学的知見や内側前頭前野の破壊が恐怖の消去を阻害することを示した動物実験からの知見などが集積され、現在は[[扁桃体]]、内側前頭前野、[[海馬]]などを含んだ神経回路モデルが想定されている<u>。(図挿入:「PTSDとは何か」</u>から 許可申請必要?)&nbsp;。神経回路モデルに関して形態学的な研究も行われている。扁桃体と[[海馬]]の体積が減少を認めたという報告がある一方で、認めなかったとする報告もある。内側前頭前野の一部である前帯状皮質の体積減少が複数報告されている。<br>    
[[Image:Tutsui file 3.jpg|right|579x347px|fear circuit]] PTSDの再体験、過覚醒症状は トラウマ体験に対する[[恐怖条件づけ]]とみなすと理解しやすく、暴露療法が有効であることも恐怖条件づけの消去現象と考えると理解しやすい。[[恐怖条件づけ]]を司る[[扁桃体]]と内側前頭前野との連絡についての解剖学的知見や内側前頭前野の破壊が恐怖の消去を阻害することを示した動物実験からの知見などが集積され、現在は[[扁桃体]]、内側前頭前野、[[海馬]]などを含んだ神経回路モデルが想定されている。神経回路モデルに関して形態学的な研究も行われている。扁桃体と[[海馬]]の体積が減少を認めたという報告がある一方で、認めなかったとする報告もある。内側前頭前野の一部である前帯状皮質の体積減少が複数報告されている。<br>    


  その他、PTSDがストレス反応であるとの視点からストレス系ホルモンについての研究がなされている。24時間血漿コルチゾール値で夜間と早朝のベースラインレベルがうつ病患者や健常対照群と比較して有意に低く、視床下部-下垂体-副腎皮質系機能(hypothalamic-pituitary-adrenal:HPA系)の調節異常が示唆されている。また、デキサメタゾン試験によるコルチゾール分泌の過剰抑制、リンパ球グルココルチコイド受容体の数の増加と感受性亢進と視床下部におけるコルチコトロピン放出因子の分泌亢進が示唆されている。  
  その他、PTSDがストレス反応であるとの視点からストレス系ホルモンについての研究がなされている。24時間血漿コルチゾール値で夜間と早朝のベースラインレベルがうつ病患者や健常対照群と比較して有意に低く、視床下部-下垂体-副腎皮質系機能(hypothalamic-pituitary-adrenal:HPA系)の調節異常が示唆されている。また、デキサメタゾン試験によるコルチゾール分泌の過剰抑制、リンパ球グルココルチコイド受容体の数の増加と感受性亢進と視床下部におけるコルチコトロピン放出因子の分泌亢進が示唆されている。  
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