「外傷後ストレス障害」の版間の差分

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==== 抗うつ薬  ====
==== 抗うつ薬  ====
<pre>====抗うつ薬====</pre>  
<pre>====抗うつ薬====</pre>  
PTSDに対する薬物療法として、sertraline、paroxetine、fluoxetineといった[[選択的セロトニン再取り込阻害薬]](selective serotonine reuptake inhibitor:SSRI)が複数のランダム化比較試験でPTSDの3つの中核症状(DSM-Ⅳ-TRの基準B,C,D)全てと抑うつなどの合併する精神症状に有効性が証明され、第一選択として推奨されている。また、[[選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬]](selective serotonine norepinephrine&nbsp;reuptake inhibitor:SNRI)であるvenlafaxineもSSRIと共に第一選択として推奨されている。三環系抗うつ薬であるimpramine、amitriptylineも効果が認められているが、SSRI、SNRIと比較して一般的に副作用の出現や忍容性が懸念される薬剤である。その他、mirtazapine、bupropion、nefadozodone、torazodoneに関しての研究報告がある。  
PTSDに対する薬物療法として、sertraline、paroxetine、fluoxetineといった[[選択的セロトニン再取り込阻害薬]](selective serotonine reuptake inhibitor:SSRI)が複数のランダム化比較試験でPTSDの3つの中核症状(DSM-Ⅳ-TRの基準B,C,D)全てと抑うつなどの合併する精神症状に有効性が証明され、第一選択として推奨されている。また、[[選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬|セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬]](serotonine norepinephrine&nbsp;reuptake inhibitor:SNRI)であるvenlafaxineもSSRIと共に第一選択として推奨されている。三環系抗うつ薬であるimpramine、amitriptylineも効果が認められているが、SSRI、SNRIと比較して一般的に副作用の出現や忍容性が懸念される薬剤である。その他、mirtazapine、bupropion、nefadozodone、torazodoneに関しての研究報告がある。  


==== 抗アドレナリン作動薬  ====
==== 抗アドレナリン作動薬  ====
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==== 非定型抗精神病薬  ====
==== 非定型抗精神病薬  ====
<pre>====非定型抗精神病薬====</pre>  
<pre>====非定型抗精神病薬====</pre>  
非定型抗精神病薬であるrisperidone、olamzapine、quetiapineはSSRIで症状が残存した時の増強療法として複数の小規模なランダム化比較試験で有効性が報告されている。
非定型抗精神病薬であるrisperidone、olanzapine、quetiapineはSSRIで症状が残存した時の増強療法として複数の小規模なランダム化比較試験で有効性が報告されている。


==== Benzodiazepine系薬  ====
==== Benzodiazepine系薬  ====
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== &nbsp;疫学&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;  ==
== &nbsp;疫学&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;  ==
<pre>==疫学==</pre>  
<pre>==疫学==</pre>  
&nbsp; 1995年にKesslerらが行った全米疫学調査<ref><pubmed>7492257</ref>ではPTSDの生涯有病率は男性5.0%、女性10.4%、現在有病率は男性1.5%、女性3.0%だった。また、性暴力などの犯罪被害者のPTSD発症率が自然災害被災者よりも高いことが示された(図1)。 [[Image:Tsutsui file 2.jpg|center|392x284px|原因による有病率の違い]]&nbsp; 日本国内のデータも川上が9つの市町村の住民を対象に調査を行い、12か月有病率0.70%、生涯有病率1.27%と報告している<ref>'''川上憲人'''<br>トラウマティックイベントと心的外傷後ストレス障害のリスク:閾値下PTSDの頻度とイベントとの関連.大規模災害や犯罪被害等による精神科疾患の実態把握と介入方法の開発に関する研究<br>''平成21年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)分担研究報告書'':17-25,2010</ref>。。
&nbsp; 1995年にKesslerらが行った全米疫学調査<ref><pubmed>7492257</ref>ではPTSDの生涯有病率は男性5.0%、女性10.4%、現在有病率は男性1.5%、女性3.0%だった。また、性暴力などの犯罪被害者のPTSD発症率が自然災害被災者よりも高いことが示された(図1)。 [[Image:Tsutsui file 2.jpg|center|392x284px|原因による有病率の違い]]&nbsp; 日本国内のデータも川上が9つの市町村の住民を対象に調査を行い、12か月有病率0.70%、生涯有病率1.27%と報告している<ref>'''川上憲人'''<br>トラウマティックイベントと心的外傷後ストレス障害のリスク:閾値下PTSDの頻度とイベントとの関連.大規模災害や犯罪被害等による精神科疾患の実態把握と介入方法の開発に関する研究<br>''平成21年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)分担研究報告書'':17-25,2010</ref>


 発症の危険因子については、以前のトラウマ体験、女性、若年者、人種的少数派、社会経済的困窮、低学歴、社会的支援が受けられない、別の精神疾患の既往歴と家族歴がある<ref><pubmed>19169189</ref>。  
 発症の危険因子については、以前のトラウマ体験、女性、若年者、人種的少数派、社会経済的困窮、低学歴、社会的支援が受けられない、別の精神疾患の既往歴と家族歴がある<ref><pubmed>19169189</ref>。  
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=== &nbsp;&nbsp;神経心理的知見  ===
=== &nbsp;&nbsp;神経心理的知見  ===
<pre>===神経心理的知見===</pre>  
<pre>===神経心理的知見===</pre>  
[[Image:Tutsui file 3.jpg|right|579x347px|fear circuit]] PTSDの再体験、過覚醒症状は トラウマ体験に対する[[恐怖条件づけ]]とみなすと理解しやすく、暴露療法が有効であることも恐怖条件づけの消去現象と考えると理解しやすい。[[恐怖条件づけ]]を司る[[扁桃体]]と内側前頭前野との連絡についての解剖学的知見や内側前頭前野の破壊が恐怖の消去を阻害することを示した動物実験からの知見などが集積され、現在は[[扁桃体]]、内側前頭前野、[[海馬]]などを含んだ神経回路モデルが想定されている(図2)。神経回路モデルに関して形態学的な研究も行われている。扁桃体と[[海馬]]の体積が減少を認めたという報告がある一方で、認めなかったとする報告もある。内側前頭前野の一部である前帯状皮質の体積減少が複数報告されている。<br>    
[[Image:Tutsui file 3.jpg|right|579x347px|fear circuit]] PTSDの再体験、過覚醒症状は トラウマ体験に対する[[恐怖条件づけ]]とみなすと理解しやすく、暴露療法が有効であることも恐怖条件づけの消去現象と考えると理解しやすい。[[恐怖条件づけ]]を司る[[扁桃体]]と内側前頭前野との連絡についての解剖学的知見や内側前頭前野の破壊が恐怖の消去を阻害することを示した動物実験からの知見などが集積され、現在は[[扁桃体]]、内側前頭前野、[[海馬]]などを含んだ神経回路モデルが想定されている(図2)。神経回路モデルに関して形態学的な研究も行われている。PTSDと診断された者で扁桃体と[[海馬]]の体積が減少を認めたという報告がある一方で、認めなかったとする報告もある。内側前頭前野の一部である前帯状皮質の体積減少が複数報告されている。<br>    


  その他、PTSDがストレス反応であるとの視点からストレス系ホルモンについての研究がなされている。24時間血漿コルチゾール値で夜間と早朝のベースラインレベルがうつ病患者や健常対照群と比較して有意に低く、視床下部-下垂体-副腎皮質系機能(hypothalamic-pituitary-adrenal:HPA系)の調節異常が示唆されている。また、デキサメタゾン試験によるコルチゾール分泌の過剰抑制、リンパ球グルココルチコイド受容体の数の増加と感受性亢進と視床下部におけるコルチコトロピン放出因子の分泌亢進が示唆されている。  
  その他、PTSDがストレス反応であるとの視点からストレス系ホルモンについての研究がなされている。24時間血漿コルチゾール値で夜間と早朝のベースラインレベルがうつ病患者や健常対照群と比較して有意に低く、視床下部-下垂体-副腎皮質系機能(hypothalamic-pituitary-adrenal:HPA系)の調節異常が示唆されている。また、デキサメタゾン試験によるコルチゾール分泌の過剰抑制、リンパ球グルココルチコイド受容体の数の増加と感受性亢進と視床下部におけるコルチコトロピン放出因子の分泌亢進が示唆されている。  


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