「多発性硬化症」の版間の差分

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 [[誘発電位検査]]は、当該伝導路に存在する潜在性病巣の検出に有用である。[[視覚誘発電位]](visual evoked potential)、[[体性感覚誘発電位]](somatosensory evoked potential)、[[聴性脳幹誘発反応]] (auditory brainstem evoked potential)などがある。[[錐体路]]病巣の検出には、磁気刺激装置を用いた[[運動誘発電位]](motor evoked potential)が用いられる。  
 [[誘発電位検査]]は、当該伝導路に存在する潜在性病巣の検出に有用である。[[視覚誘発電位]](visual evoked potential)、[[体性感覚誘発電位]](somatosensory evoked potential)、[[聴性脳幹誘発反応]] (auditory brainstem evoked potential)などがある。[[錐体路]]病巣の検出には、磁気刺激装置を用いた[[運動誘発電位]](motor evoked potential)が用いられる。  


 血液検査ではMSに特異的な所見は乏しく、主に[[wikipedia:ja:膠原病|膠原病]]などによる中枢神経病巣を鑑別診断するために各種[[wikipedia:ja:自己抗体|自己抗体]]を[[検索]]する。MSは[[wikipedia:ja:抗核抗体|抗核抗体]]が弱陽性になる例があるが、それ以外の特異的な自己抗体は検出されない。視神経と脊髄が選択的に侵される視神経脊髄炎では、[[アストロサイト]]の足突起に存在する[[水チャネル]]である[[aquaporin-4]]に対する自己抗体が約半数で検出される。[[髄液]]細胞数と総タンパク質量は、再発期には軽度の細胞増多([[wikipedia:ja:単核球|単核球]])と総タンパク質量増加がみられることがある。髄鞘の破壊を反映した[[髄鞘塩基性タンパク質]] ([[myelin basic protein]], MBP)の上昇、[[wikipedia:ja:IgG|IgG]] indexの上昇,髄液中の[[wikipedia:ja:オリゴクローナルIgGバンド|オリゴクローナルIgGバンド]]陽性などがみられることもある。オリゴクローナルIgGバンドは、欧米白人のMSの90%、日本人MSの約60%で陽性となり、比較的本症に特徴的といえる<ref name=ref3,4/>。  
 血液検査ではMSに特異的な所見は乏しく、主に[[wikipedia:ja:膠原病|膠原病]]などによる中枢神経病巣を鑑別診断するために各種[[wikipedia:ja:自己抗体|自己抗体]]を[[検索]]する。MSは[[wikipedia:ja:抗核抗体|抗核抗体]]が弱陽性になる例があるが、それ以外の特異的な自己抗体は検出されない。視神経と脊髄が選択的に侵される視神経脊髄炎では、[[アストロサイト]]の足突起に存在する[[水チャネル]]である[[aquaporin-4]]に対する自己抗体が約半数で検出される。[[髄液]]細胞数と総タンパク質量は、再発期には軽度の細胞増多([[wikipedia:ja:単核球|単核球]])と総タンパク質量増加がみられることがある。髄鞘の破壊を反映した[[髄鞘塩基性タンパク質]] ([[myelin basic protein]], MBP)の上昇、[[wikipedia:ja:IgG|IgG]] indexの上昇,髄液中の[[wikipedia:ja:オリゴクローナルIgGバンド|オリゴクローナルIgGバンド]]陽性などがみられることもある。オリゴクローナルIgGバンドは、欧米白人のMSの90%、日本人MSの約60%で陽性となり、比較的本症に特徴的といえる<ref name=ref3/><ref name=ref4/><ref name=ref6/><ref name=ref7/>。  


== 治療 ==
== 治療 ==
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== 疫学 ==
== 疫学 ==


 MSは欧米白人に多く、かつ同じ人種では緯度が高いほど有病率が高い。[[wikipedia:ja:北欧|北欧]]では、人口10万人あたり100人を超える有病率となっている。日本人においてもMSはこの30年間で患者数が約4倍増加した(推定患者数9,900人、有病率7.7/100,000人)。増加の理由は不明であるが、遺伝的背景は変わらないので、乳幼児期の衛生環境の改善や欧米型の食生活が免疫系を介して発症を高めていると推定されている。平均発症年齢は約30歳と若年成人に好発する。男女比は1:3前後である。我が国では発症年齢のピークが30歳代から20歳代に若年化した。女性の比率が約2 倍増え、男女比は1:2.9となった。
 MSは欧米白人に多く、かつ同じ人種では緯度が高いほど有病率が高い。[[wikipedia:ja:北欧|北欧]]では、人口10万人あたり100人を超える有病率となっている。日本人においてもMSはこの30年間で患者数が約4倍増加した(推定患者数9,900人、有病率7.7/100,000人)。増加の理由は不明であるが、遺伝的背景は変わらないので、乳幼児期の衛生環境の改善や欧米型の食生活が免疫系を介して発症を高めていると推定されている。平均発症年齢は約30歳と若年成人に好発する。男女比は1:3前後である。我が国では発症年齢のピークが30歳代から20歳代に若年化した。女性の比率が約2 倍増え、男女比は1:2.9となった<ref name=ref5/>。


==関連項目==
==関連項目==
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==参考文献==
==参考文献==
<references/>
 
1. '''Lisak R, Kira J'''<br>
1. '''Lisak R, Kira J'''<br>
Multiple sclerosis. International Neurology. <br>
Multiple sclerosis. International Neurology. <br>