「夢」の版間の差分

サイズ変更なし 、 2016年2月17日 (水)
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明晰夢は、被験者が現在夢を見ていることを覚醒後の言語報告ではなくリアルタイムに知ることができるという意味で新たな夢の実験的研究法として1980年代に注目を浴びた。さらに夢の研究にとどまらず、意識がどのように生み出されるのかという観点からも非常に興味深い現象であるが、誰にでも頻繁に生じる現象ではないことから、研究自体は下火になった。近年になってVossらは、被験者の両側の前頭部と側頭部に電極を装着し,レム睡眠時に2~100Hzの閾値下の微弱な電流刺激(250 μA)を30秒間与え(経頭蓋交流電気刺激, transcranial alternative current stimulation: tACS)、その後に覚醒させて夢内容を聴取した。その結果、40および25Hzの刺激を与えた条件においてのみ、前頭~側頭領域に刺激周波数に対応したガンマ波が出現するとともに明晰夢を報告する割合が高くなった<ref><pubmed>24816141</pubmed></ref>。tACSの問題点として、陽極と陰極の間で電流が脳内のどの部位を流れるかが不明であり、結果の再現性の問題も含めてさらなる検証が必要ではあるが、明晰夢のみならず、意識の発生メカニズムという観点からも興味深い知見である。
明晰夢は、被験者が現在夢を見ていることを覚醒後の言語報告ではなくリアルタイムに知ることができるという意味で新たな夢の実験的研究法として1980年代に注目を浴びた。さらに夢の研究にとどまらず、意識がどのように生み出されるのかという観点からも非常に興味深い現象であるが、誰にでも頻繁に生じる現象ではないことから、研究自体は下火になった。近年になってVossらは、被験者の両側の前頭部と側頭部に電極を装着し,レム睡眠時に2~100Hzの閾値下の微弱な電流刺激(250 μA)を30秒間与え(経頭蓋交流電気刺激, transcranial alternative current stimulation: tACS)、その後に覚醒させて夢内容を聴取した。その結果、40および25Hzの刺激を与えた条件においてのみ、前頭~側頭領域に刺激周波数に対応したガンマ波が出現するとともに明晰夢を報告する割合が高くなった<ref><pubmed>24816141</pubmed></ref>。tACSの問題点として、陽極と陰極の間で電流が脳内のどの部位を流れるかが不明であり、結果の再現性の問題も含めてさらなる検証が必要ではあるが、明晰夢のみならず、意識の発生メカニズムという観点からも興味深い知見である。


=== レム睡眠時の休息眼球運動と夢の関連(走査仮設) ===
=== レム睡眠時の急速眼球運動と夢の関連(走査仮設) ===
1953年にAserinskyとKleitmanがレム睡眠を発見した直後から、「なぜ睡眠中に目が動くのか?」ということが問題になった。レム睡眠中に水平方向の眼球運動が規則正しく出現した被験者を起こして夢内容を聴取したところ、「卓球の試合の夢を見ていた。卓球台の真ん中に立って、球の行方を目で追っていた」という言語報告が得られたことから、「レム睡眠時の急速眼球運動は,覚醒時のサッケードと同様に夢の視覚像を追う(走査する)ために出現する」という説(走査仮説,Scanning hypothesis)が唱えられた[3, 15]。
1953年にAserinskyとKleitmanがレム睡眠を発見した直後から、「なぜ睡眠中に目が動くのか?」ということが問題になった。レム睡眠中に水平方向の眼球運動が規則正しく出現した被験者を起こして夢内容を聴取したところ、「卓球の試合の夢を見ていた。卓球台の真ん中に立って、球の行方を目で追っていた」という言語報告が得られたことから、「レム睡眠時の急速眼球運動は,覚醒時のサッケードと同様に夢の視覚像を追う(走査する)ために出現する」という説(走査仮説,Scanning hypothesis)が唱えられた[3, 15]。


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