「大脳皮質」の版間の差分

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 例えば「赤いりんごが落ちる」という情景を目にした時、脳はその機能局在により「赤い」という色認識、「りんご」という物体認知、そして「落ちる」という視覚運動情報処理を、それぞれ脳の異なる機能局在を有するさまざまな領域でほぼ同時に行なっている。大脳皮質一次感覚野では感覚入力の特徴抽出などすでに相当の情報処理が行われているが、それらの情報は一般には隣接する大脳皮質領域に投射され、その領域ではより広範な入力を統合するなどしてさらなる特徴抽出が行われている。このように、それぞれの感覚には一次感覚野と、そこから順に投射を受け、より高度な情報処理が行われる二次、三次、さらにそれ以降の多数の感覚野が大脳皮質に存在しており、それぞれが機能特異性を有している。またより高次の感覚野では複数の感覚が統合され「連合野」と呼ばれるゆえんである。下位から上位への階層構造は脳内に複数存在しており、それらが同時並列的に機能することにより、複雑な情報を短時間で処理することが可能になっている。このことは、例えば宇宙飛行士が月面で興味深い月の石をサンプルとして拾い上げるといった行動に有効に機能していると考えられる。同じ機能を再現しようとすると巨大なスーパーコンピューターが必要かもしれない。
 例えば「赤いりんごが落ちる」という情景を目にした時、脳はその機能局在により「赤い」という色認識、「りんご」という物体認知、そして「落ちる」という視覚運動情報処理を、それぞれ脳の異なる機能局在を有するさまざまな領域でほぼ同時に行なっている。大脳皮質一次感覚野では感覚入力の特徴抽出などすでに相当の情報処理が行われているが、それらの情報は一般には隣接する大脳皮質領域に投射され、その領域ではより広範な入力を統合するなどしてさらなる特徴抽出が行われている。このように、それぞれの感覚には一次感覚野と、そこから順に投射を受け、より高度な情報処理が行われる二次、三次、さらにそれ以降の多数の感覚野が大脳皮質に存在しており、それぞれが機能特異性を有している。またより高次の感覚野では複数の感覚が統合され「連合野」と呼ばれるゆえんである。下位から上位への階層構造は脳内に複数存在しており、それらが同時並列的に機能することにより、複雑な情報を短時間で処理することが可能になっている。このことは、例えば宇宙飛行士が月面で興味深い月の石をサンプルとして拾い上げるといった行動に有効に機能していると考えられる。同じ機能を再現しようとすると巨大なスーパーコンピューターが必要かもしれない。
(執筆者:蔵田潔 担当編集委員:伊佐正)