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<font size="+1">住谷 昌彦</font><br> | |||
''東京大学 医学部附属病院''<br> | |||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年8月8日 原稿完成日:2012年8月27日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/atsushiiriki 入來 篤史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | |||
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英語名:phantom limb pain 独:Phantomschmerz 仏:douleur du membre fantôme | |||
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四肢切断後の患者が、失った四肢が存在するような[[錯覚]](phantom limb awareness)や失った四肢が存在していた空間に[[温冷感]]や[[痺れ感]]などの感覚(phantom sensation)を知覚する現象を幻肢と総称する。幻肢は四肢切断でなくても、[[脳卒中]]、[[脊髄損傷]]や[[末梢神経損傷]]などの[[運動麻痺]]や[[感覚遮断]]によっても発症し、これらは[[余剰幻肢]]と呼ばれる。また、[[wikipedia:ja:乳房|乳房]]や[[wikipedia:ja:陰茎|陰茎]]、[[眼球]]などの切除後にも幻身体は現れる。幻肢に痛みを感じる現象を特に幻肢痛と呼ぶ。 | 四肢切断後の患者が、失った四肢が存在するような[[錯覚]](phantom limb awareness)や失った四肢が存在していた空間に[[温冷感]]や[[痺れ感]]などの感覚(phantom sensation)を知覚する現象を幻肢と総称する。幻肢は四肢切断でなくても、[[脳卒中]]、[[脊髄損傷]]や[[末梢神経損傷]]などの[[運動麻痺]]や[[感覚遮断]]によっても発症し、これらは[[余剰幻肢]]と呼ばれる。また、[[wikipedia:ja:乳房|乳房]]や[[wikipedia:ja:陰茎|陰茎]]、[[眼球]]などの切除後にも幻身体は現れる。幻肢に痛みを感じる現象を特に幻肢痛と呼ぶ。 | ||
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== 幻肢と幻肢痛 == | == 幻肢と幻肢痛 == | ||
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幻肢痛の発症機序は、末梢神経の損傷によって出来た[[神経腫]]由来の異常[[インパルス]]や脊髄レベルでの神経細胞の易興奮性など様々な要因によって誘発されることが考えられており、これらの分子生物学的なメカニズムは幻肢痛に限らず[[神経障害性疼痛]]全般に共通していると考えられる<ref name=ref1><pubmed>17053811</pubmed></ref>。 | 幻肢痛の発症機序は、末梢神経の損傷によって出来た[[神経腫]]由来の異常[[インパルス]]や脊髄レベルでの神経細胞の易興奮性など様々な要因によって誘発されることが考えられており、これらの分子生物学的なメカニズムは幻肢痛に限らず[[神経障害性疼痛]]全般に共通していると考えられる<ref name=ref1><pubmed>17053811</pubmed></ref>。 | ||
== 幻肢痛の臨床的特徴 == | == 幻肢痛の臨床的特徴 == | ||
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知覚‐運動ループには体性感覚のうち皮膚表在感覚はあまり関与せず[[深部知覚]]のみが関与しており、鏡療法のような知覚‐運動ループを再統合させる治療では幻肢痛のうち深部知覚に関連するような疼痛(例:腕が捻じれるような疼痛、腕を押し潰されているような疼痛)には著効するが皮膚表在感覚に関連するような疼痛(例:針で刺されるような疼痛、電気が走るような疼痛)には効果がほとんどない<ref name=ref15 />。これらのことから、知覚‐運動ループの破綻は幻肢痛の発症機序の少なくとも一部を成すものと考えられる。 | 知覚‐運動ループには体性感覚のうち皮膚表在感覚はあまり関与せず[[深部知覚]]のみが関与しており、鏡療法のような知覚‐運動ループを再統合させる治療では幻肢痛のうち深部知覚に関連するような疼痛(例:腕が捻じれるような疼痛、腕を押し潰されているような疼痛)には著効するが皮膚表在感覚に関連するような疼痛(例:針で刺されるような疼痛、電気が走るような疼痛)には効果がほとんどない<ref name=ref15 />。これらのことから、知覚‐運動ループの破綻は幻肢痛の発症機序の少なくとも一部を成すものと考えられる。 | ||
== | == 参考文献 == | ||
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