「座標系」の版間の差分

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 物体の中での目標の相対的位置。目標とする物体の中での位置(前後左右上下)を表現する。前述の座標系は、原点が身体のどこかに存在するが、この場合には原点は環境の中に存在する。3次元的に複雑な構造を認知する場合にも、こうした相対的位置の記述が必要である。また、そのような3次元的形状をした物体のある部分に働きかけるためには、物体を中心としてその位置がどこにあるのかを表現しておく必要がある。自己の身体を中心とした座標系のみでは、自分が動いたときにその都度、表現モデルを変更しなければならないが、物体を中心とした座標系で対象物を記述しておけば、身体中心座標系の原点が移動しても、あるいは座標軸が傾いてしまっても影響されない内部表現を得ることができる<ref name=ref7 />。例えば、キーボードを操作する場合にもキーそのものの身体中心座標系の位置よりも、キーボードの全体の中でのキーの位置が重要である。ターゲットの周囲に枠などの空間情報があるかないかによって、到達運動の精度があがることが知られている。
 物体の中での目標の相対的位置。目標とする物体の中での位置(前後左右上下)を表現する。前述の座標系は、原点が身体のどこかに存在するが、この場合には原点は環境の中に存在する。3次元的に複雑な構造を認知する場合にも、こうした相対的位置の記述が必要である。また、そのような3次元的形状をした物体のある部分に働きかけるためには、物体を中心としてその位置がどこにあるのかを表現しておく必要がある。自己の身体を中心とした座標系のみでは、自分が動いたときにその都度、表現モデルを変更しなければならないが、物体を中心とした座標系で対象物を記述しておけば、身体中心座標系の原点が移動しても、あるいは座標軸が傾いてしまっても影響されない内部表現を得ることができる<ref name=ref7 />。例えば、キーボードを操作する場合にもキーそのものの身体中心座標系の位置よりも、キーボードの全体の中でのキーの位置が重要である。ターゲットの周囲に枠などの空間情報があるかないかによって、到達運動の精度があがることが知られている。
 
 
 サルの[[7a野]]や[[前側頭頂間野]] (AIP)では物体内での相対的位置や物体中心座標系に関わると考えられる神経活動がみつかっている<ref name=ref26><pubmed>17389630</pubmed></ref> <ref name=ref27><pubmed>15635058</pubmed></ref> <ref name=ref28>'''WinNyiShein, et al.'''<br>サル頭頂葉の手操作目標の相対的位置の選択性<br>''日大医誌''、1999. 58: p. 558-569.</ref>。またこうした座標系は物体の構造の記述にも必要であり、把持運動に関わるAIPや[[F5]]では、把持運動の対象となる三次元的物体を表現している<ref name=ref29><pubmed>10805659</pubmed></ref>が、これらの領域のニューロンが[[両眼視差]]に応答することが明らかになっている<ref name=ref30><pubmed>21456959</pubmed></ref>。
 サルの[[7a野]]や[[前側頭頂間野]] (AIP)では物体内での相対的位置や物体中心座標系に関わると考えられる神経活動がみつかっている<ref name=ref26><pubmed>17389630</pubmed></ref> <ref name=ref27><pubmed>15635058</pubmed></ref> <ref name=ref28>'''WinNyiShein, et al.'''<br>サル頭頂葉の手操作目標の相対的位置の選択性<br>''日大医誌''、1999. 58: p. 558-569.</ref>。またこうした座標系は物体の構造の記述にも必要であり、把持運動に関わるAIPや[[F5]]では、把持運動の対象となる三次元的物体を表現している<ref name=ref29><pubmed>10805659</pubmed></ref>が、これらの領域のニューロンが[[両眼視差]]に応答することが明らかになっている<ref name=ref30><pubmed>21456959</pubmed></ref>。


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