「座標系」の版間の差分

663 バイト除去 、 2014年5月21日 (水)
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 この運動を実現するためには、[[wj:関節|関節]]や[[wj:|筋肉]]の動きの運動学的変数とそこに発生する力の向きや大きさなどの動力学的変数の両方を決める必要がある。関節においては、運動学的には手先につながる複数の関節の角度と手先の位置との関係がプロットされる。また、力学的には、関節のトルクベクトルと手先の力ベクトルの関係がプロットされる。これが関節座標系である。また、筋肉では、筋長(短縮方向が正)と関節角との関係、及び筋力(短縮方向が正)と関節トルクとの関係がプロットされる。これが筋空間である。それぞれの次元数は、関節と筋肉の数に相当する。これは、自由度が非常に大きく、冗長なシステムとなる。このため、この際、関節・筋座標系における冗長な自由度をへらすために、適切な拘束条件をみいだし筋や関節レベルのインピーダンス調整が行われている<ref name=ref7>'''伊藤 宏司'''<br>身体知システム論 ― ヒューマンロボティクスによる運動の学習と制御<br>''共立出版'' 2005</ref>
 この運動を実現するためには、[[wj:関節|関節]]や[[wj:|筋肉]]の動きの運動学的変数とそこに発生する力の向きや大きさなどの動力学的変数の両方を決める必要がある。関節においては、運動学的には手先につながる複数の関節の角度と手先の位置との関係がプロットされる。また、力学的には、関節のトルクベクトルと手先の力ベクトルの関係がプロットされる。これが関節座標系である。また、筋肉では、筋長(短縮方向が正)と関節角との関係、及び筋力(短縮方向が正)と関節トルクとの関係がプロットされる。これが筋空間である。それぞれの次元数は、関節と筋肉の数に相当する。これは、自由度が非常に大きく、冗長なシステムとなる。このため、この際、関節・筋座標系における冗長な自由度をへらすために、適切な拘束条件をみいだし筋や関節レベルのインピーダンス調整が行われている<ref name=ref7>'''伊藤 宏司'''<br>身体知システム論 ― ヒューマンロボティクスによる運動の学習と制御<br>''共立出版'' 2005</ref>
 このときの姿勢(関節角)は、筋や関節などからの固有感覚や皮膚からの[[触覚]]によって、[[体性感覚野]]あるいは[[運動野]]にマップされる<ref name=ref32>'''内藤栄一、 et al.'''<br>感覚刺激と運動学習 特集 運動学習と理学療法<br>''理学療法ジャーナル''、2012. 46(1): p. 25-35.</ref>。この情報は視覚や[[前庭覚]]などの情報と共に統合されて身体の表現として頭頂連合野にも表現されている。このような、脳内の身体表現は[[身体図式]](Body schema)ないしは身体イメージ(body image)と呼ばれる。


 脳内で空間座標から関節座標、筋座標への変換過程しめす神経活動が、[[上頭頂葉]]、[[腹側運動前野]]、[[一次運動野]]などの領域で知られている。例えば、手首の屈曲伸展運動を考える場合に、手掌が上向きか下向きの姿勢によって、外部空間内での手首の動きの向きと、関節や筋肉が表現するベクトルを区別することができる。このとき、サルの頭頂連合野のニューロンは、関節の屈曲か伸展か表現するニューロンが存在する。これは[[固有感覚]]の入力に依る物であるが、関節の座標系の動きである。一方、手のひらの向きに関わらず、(暗闇の中で)空間内の手のうごきの方向を表現するニューロンが見つかっており、これは外部座標系での動きを表現する<ref name=ref34>'''Tanaka, M., et al.'''<br>Monkey postcentral joint neurons responding to visual stimuli.<br>in Annual meeting of the Japan neuroscience society. 1999. Osaka: Elsevier.</ref>。また、腹側運動前野でも、関節の屈曲・伸展に関わらず手の動きを外部座標系の動きで表現するニューロンが多い。[[一次運動野]]では、空間内の向きとともに筋のベクトルで表現するニューロンがあることがわかっている<ref name=ref35><pubmed>    10497133</pubmed></ref> <ref name=ref36><pubmed>11547338</pubmed></ref>。
 脳内で空間座標から関節座標、筋座標への変換過程しめす神経活動が、[[上頭頂葉]]、[[腹側運動前野]]、[[一次運動野]]などの領域で知られている。例えば、手首の屈曲伸展運動を考える場合に、手掌が上向きか下向きの姿勢によって、外部空間内での手首の動きの向きと、関節や筋肉が表現するベクトルを区別することができる。このとき、サルの頭頂連合野のニューロンは、関節の屈曲か伸展か表現するニューロンが存在する。これは[[固有感覚]]の入力に依る物であるが、関節の座標系の動きである。一方、手のひらの向きに関わらず、(暗闇の中で)空間内の手のうごきの方向を表現するニューロンが見つかっており、これは外部座標系での動きを表現する<ref name=ref34>'''Tanaka, M., et al.'''<br>Monkey postcentral joint neurons responding to visual stimuli.<br>in Annual meeting of the Japan neuroscience society. 1999. Osaka: Elsevier.</ref>。また、腹側運動前野でも、関節の屈曲・伸展に関わらず手の動きを外部座標系の動きで表現するニューロンが多い。[[一次運動野]]では、空間内の向きとともに筋のベクトルで表現するニューロンがあることがわかっている<ref name=ref35><pubmed>    10497133</pubmed></ref> <ref name=ref36><pubmed>11547338</pubmed></ref>。
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