「情動」の版間の差分

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 末梢起源説と中枢起源説は、情動の由来の説明について互い対立する一方で、外部刺激による末梢反応が、定式化した情動体験をもたらす考える点で共通する。言い換えるならば、両者の仮説は、同一の身体の生理的変化から異質の情動体験が生じうることを説明できないという弱点を有するのである。こうした批判を基に心理学者のスタンレー・シャクター(Stanley Schachter)とジェローム・シンガー(Jerome Singer)は、情動二要因説(two factor theory of emotion)を提唱した。  
 末梢起源説と中枢起源説は、情動の由来の説明について互い対立する一方で、外部刺激による末梢反応が、定式化した情動体験をもたらす考える点で共通する。言い換えるならば、両者の仮説は、同一の身体の生理的変化から異質の情動体験が生じうることを説明できないという弱点を有するのである。こうした批判を基に心理学者のスタンレー・シャクター(Stanley Schachter)とジェローム・シンガー(Jerome Singer)は、情動二要因説(two factor theory of emotion)を提唱した。  


 情動二要因説において、情動は、知覚された非特異的な覚醒(arousal)を、自身を取り巻く状況についての情報や既存の知識に基づいて解釈するという二つの要因によって生じるとされる。その具体例として、心理学者のドナル・ドダットン(Donald Dutton)とアーサー・アロン(Arthur Aron)により示された「つり橋効果」が有名である。これは高所にあるつり橋を渡る際の生理的反応(不安に伴う心拍数の増加等)を、ともにつり橋を渡る異性への恋愛感情として誤って解釈・理解(帰属)しがちであるというものである。生理的な覚醒状態が同様であっても、その原因に対する帰属の結果に応じて、異なる情動が生じるのである。
 情動二要因説において、情動は、知覚された非特異的な覚醒(arousal)を、自身を取り巻く状況についての情報や既存の知識に基づいて解釈するという二つの要因によって生じるとされる。その具体例として、心理学者のドナル・ドダットン(Donald Dutton)とアーサー・アロン(Arthur Aron)により示された「つり橋効果」が有名である。これは高所にあるつり橋を渡る際の生理的反応(不安に伴う心拍数の増加等)を、ともにつり橋を渡る異性への恋愛感情として誤って解釈・理解(帰属)しがちであるというものである。生理的な覚醒状態が同様であっても、その原因に対する帰属の結果に応じて、異なる情動が生じうる。


== <br>'''情動の神経科学的基盤'''  ==
== <br>'''情動の神経科学的基盤'''  ==