「成長円錐」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
101行目: 101行目:
===== 細胞内カルシウムシグナル  =====
===== 細胞内カルシウムシグナル  =====


Zengらはケージドカルシウム光解離法を用いて、成長円錐内の局所的なカルシウムシグナルが成長円錐の旋回運動を誘導することを示した。その後、ネトリン-1やMAGの濃度勾配に対して成長円錐内で非対称なカルシウムイオン濃度上昇が起きることも報告され、現在、多くの軸索ガイダンス因子による成長円錐の誘引-反発の誘導に局所的なカルシウムシグナルが中心的役割を担っていると考えられている。多くの軸索ガイダンス因子は、電位依存性カルシウムチャネルやTRPチャネルを介した細胞外からのカルシウムイオンの流入、リアノジン受容体やIP3受容体などを介した小胞体からのカルシウムイオンの放出を促進し成長円錐内のカルシウムイオン濃度を上昇させるが、このカルシウムシグナルは旋回方向の決定に寄与すると考えられている。例えば、ネトリン-1に対する成長円錐の誘引は、L型電位依存性カルシウムチャネル、あるいはリアノジン受容体を選択的に阻害することで反発に変わる。また、TRPC1チャネルの機能を抑制することで、ネトリン-1とBDNFに対する誘因が反発に逆転する。誘引-反発のカルシウムシグナルの下流因子として、誘引性カルシウムシグナルにはカルモジュリン依存性リン酸化酵素であるCaMキナーゼⅡ(CaMKⅡ)が、反発性カルシウムシグナルには脱リン酸化酵素であるカルシニューリン(calcineurin)がそれぞれ関与することが報告されている。
ケージドカルシウム光解離法を用いて、成長円錐内に局所的なカルシウムシグナルを励起すると、成長円錐の旋回運動を誘導することができる。また、様々な軸索ガイダンス因子の濃度勾配に遭遇した成長円錐内で非対称なカルシウムイオン濃度上昇が観察されること、成長円錐内のカルシウムシグナルを遮断すると成長円錐の誘引-反発応答が消失することから、局所的なカルシウムシグナルは誘引性、反発性を問わず軸索ガイダンスシグナルの中心的役割を担っていると考えられている。


カルシウムシグナルにおける誘引-反発の決定機構として、現在2つのモデルが提唱されている。一つは成長円錐内で上昇するカルシウムイオン濃度の絶対量による差が誘引-反発を決定するというモデルで、高カルシウムイオンの流入はCaMKⅡを介して誘引性応答を、低カルシウムイオン流入はカルシニューリンを介して反発性応答を誘導するというものである。2つ目は誘引-反発は流入するカルシウムチャネルの種類に依存するというモデルで、各種カルシウムチャネルの近傍に存在するカルシウム感受性分子の種類の違いが誘引-反発の応答を決定するというものである。  
成長円錐の誘引、反発という全く逆の応答の両方にカルシウムシグナルが必要であることは非常に興味深く、その分子メカニズムを説明するために多くの研究が行われてきたが、現在誘引-反発の決定機構として、2つのモデルが提唱されている。一つは成長円錐内で上昇するカルシウムイオン濃度の絶対量による差が誘引-反発を決定するというモデルで、高カルシウムイオンの流入は誘引性応答を、低カルシウムイオン流入は反発性応答を誘導するというものである。2つ目は誘引-反発は流入するカルシウムチャネルの種類に依存するというモデルで、各種カルシウムチャネルの近傍に存在するカルシウム感受性分子の種類の違いが誘引-反発の応答を決定するというものである。  
 
例えば、ネトリン-1に対する成長円錐の誘引は、L型電位依存性カルシウムチャネル、あるいはリアノジン受容体を選択的に阻害することで反発に変わるが、1つ目の仮説では、カルシウム流入源の選択的阻害によりカルシウムシグナルが小さくなり誘引が反発に転換すると考えられる。一方、2つ目の仮説では、それぞれのチャネル近傍に存在するカルシウム下流分子の活性化状態の差により誘引から反発へと応答性が変化したと説明できる。
 
誘引-反発のカルシウムシグナルの下流因子として、誘引性カルシウムシグナルにはカルモジュリン依存性リン酸化酵素であるCaMキナーゼⅡ(CaMKⅡ)が、反発性カルシウムシグナルには脱リン酸化酵素であるカルシニューリン(calcineurin)がそれぞれ関与することが報告されている。


<br>
<br>
161

回編集