「放出確率」の版間の差分

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===神経筋接合部終板の構造===
===神経筋接合部終板の構造===
[[image:放出確率1.png|thumb|350px|'''図1.神経筋接合部終板の構造図(左)と電子顕微鏡像(右)'''<br>運動神経が骨格筋にシナプスを形成する際、終板という特殊構造をとる。(左)運動神経終末は40 μmほどに膨大し、シュワン細胞 Schwann cellに取り囲まれた終板End plateを形成する。神経終末には活性帯Active zoneと[[カルシウムチャネル]]が並列する<ref name=ref5><pubmed>1980068</pubmed></ref>。50 nmほどのシナプス間隙Synaptic cleftを挟んで[[骨格筋]]は接合部ひだJunctional fold構造をとる。(右)運動[[神経終末]]内に多数存在するシナプス小胞のうち、いくつかが活性帯active zoneに接合している<ref name=ref6><pubmed>17573397</pubmed></ref>。]]
[[image:放出確率1.png|thumb|350px|'''図1.神経筋接合部終板の構造図(左)と電子顕微鏡像(右)'''<br>運動神経が骨格筋にシナプスを形成する際、終板という特殊構造をとる。(左)運動神経終末は40 μmほどに膨大し、シュワン細胞 Schwann cellに取り囲まれた終板End plateを形成する。神経終末には活性帯Active zoneと[[カルシウムチャネル]]が並列する<ref name=ref5><pubmed>1980068</pubmed></ref>。50 nmほどのシナプス間隙Synaptic cleftを挟んで[[骨格筋]]は接合部ひだJunctional fold構造をとる。(右)運動[[神経終末]]内に多数存在するシナプス小胞のうち、いくつかが活性帯active zoneに接合している<ref name=ref6><pubmed>17573397</pubmed></ref>。]]
図1


===神経筋接合部終板の素量的放出確率(Katzの素量的放出確率)===
===神経筋接合部終板の素量的放出確率(Katzの素量的放出確率)===
 Bernard Katz によって提唱された素量的(量子的)放出確率 quantum release probability(1954)は、神経筋接合部での物理的現象を指標として解析された小胞[[開口放出]]確率である。伝達物質素量の放出(1つのシナプス小胞開口放出)は確率的な事象であり、単発インパルスが引き起こす応答は個々の伝達物質素量を放出するか、しないかである。この事象は、二項分布あるいはベルヌーイ試行 (例えば硬貨を投げて表面が出るか裏面が出るかを繰り返してみること) と似ている。 
 Bernard Katz によって提唱された素量的(量子的)放出確率 quantum release probability<ref name=ref1 />は、神経筋接合部での物理的現象を指標として解析された小胞[[開口放出]]確率である。伝達物質素量の放出(1つのシナプス小胞開口放出)は確率的な事象であり、単発インパルスが引き起こす応答は個々の伝達物質素量を放出するか、しないかである。この事象は、二項分布あるいはベルヌーイ試行 (例えば硬貨を投げて表面が出るか裏面が出るかを繰り返してみること) と似ている。 


 単発インパルスによってある素量が放出される確率は、そのインパルスによる他の素量放出確率には依存しない。したがって、放出可能な素量の集団にとって、それぞれのインパルスは一連の独立した二項試行 (例えば、手に握った多数の硬貨を投げて、何枚のコインの表が出るかをみること)をあらわしている。
 単発インパルスによってある素量が放出される確率は、そのインパルスによる他の素量放出確率には依存しない。したがって、放出可能な素量の集団にとって、それぞれのインパルスは一連の独立した二項試行 (例えば、手に握った多数の硬貨を投げて、何枚のコインの表が出るかをみること)をあらわしている。
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===中枢シナプスの構造===
===中枢シナプスの構造===
[[image:放出確率2.png|thumb|350px|'''図2.中枢シナプスの電子顕微鏡像(左)と構造図(右)'''<br>興奮性神経は樹状突起スパインにシナプスを形成する。(左)海馬CA1領域のシナプス前終末には250 nμmほどの活性帯Active zoneにシナプス小胞を繋ぎ止める三角錐状構造物が認められる。シナプス間隙Synaptic cleftを挟んで樹状突起スパインはPSD [[Postsynaptic density]]構造をとる。(右)シナプス前終末内に存在するシナプス小胞のいくつかが活性帯に接合(青い小胞し、三角錐状構造物(ピンク)に繋ぎ止められている(黄色い小胞)<ref name=ref7><pubmed>17573397</pubmed></ref>。]]
[[image:放出確率2.png|thumb|350px|'''図2.中枢シナプスの電子顕微鏡像(左)と構造図(右)'''<br>興奮性神経は樹状突起スパインにシナプスを形成する。(左)海馬CA1領域のシナプス前終末には250 nμmほどの活性帯Active zoneにシナプス小胞を繋ぎ止める三角錐状構造物が認められる。シナプス間隙Synaptic cleftを挟んで樹状突起スパインはPSD [[Postsynaptic density]]構造をとる。(右)シナプス前終末内に存在するシナプス小胞のいくつかが活性帯に接合(青い小胞し、三角錐状構造物(ピンク)に繋ぎ止められている(黄色い小胞)<ref name=ref7><pubmed>17573397</pubmed></ref>。]]
図2


===中枢シナプスでの伝達物質放出確率===
===中枢シナプスでの伝達物質放出確率===