概念形成

提供:脳科学辞典
2012年4月23日 (月) 10:44時点におけるKenjikansaku (トーク | 投稿記録)による版

ナビゲーションに移動 検索に移動

英:concept formation

 概念形成(concept formation)とは、対象から概念を作り出す過程である。哲学、心理学、さらには認知言語学等の関連分野でも扱われてきたが、脳科学では、対象から概念を作り出す際の脳内情報処理過程についてを主に扱う。概念を作り出す際の特に学習に着目した場合は、概念学習(concept learning)と呼ばれる。また、脳科学においては、対象のひとまとまりをカテゴリー(category)と呼ぶことも多い。


動物の脳内機構を対象とした研究

 「動物」や「食べ物」といった具体的なものから「数・量」といった抽象的なものまで、種々のタイプの概念やカテゴリーに関する脳内情報処理に対して、覚醒サルに対する単一細胞電位記録手法を用いた実験的研究等が行われ、下側頭皮質、前頭前皮質や後部頭頂皮質、さらには皮質線条体ループ等の役割が明らかとされてきた[1][2][3]

ヒトの脳内機構を対象とした研究

 神経心理学の研究、さらには神経画像手法を用いた近年の研究により、ヒト脳内における、概念やカテゴリーの種類に対応した脳内情報処理過程が、視覚による物体認知における腹側経路の役割等を手掛かりとして明らかとされてきた[4]。また、視覚等の単感覚入力だけでなく視覚と聴覚といった複数の感覚入力を統合させ概念を形成する過程を評価すると、広範囲の多感覚野が関与することが必要であることが示唆されるなど[5]、神経画像手法を用いた研究が展開するにつれて、より広範囲の脳領域間の結合性との関係が注目されている[6]

関連項目

  • 概念学習(concept learning)
  • カテゴリー学習(category learning)
  • 数・量の概念(concept of number/quantity)

参考文献

  1. Tanaka, K. (1996).
    Inferotemporal cortex and object vision. Annual review of neuroscience, 19, 109-39. [PubMed:8833438] [WorldCat] [DOI]
  2. Miller, E.K., Nieder, A., Freedman, D.J., & Wallis, J.D. (2003).
    Neural correlates of categories and concepts. Current opinion in neurobiology, 13(2), 198-203. [PubMed:12744974] [WorldCat] [DOI]
  3. Seger, C.A., & Miller, E.K. (2010).
    Category learning in the brain. Annual review of neuroscience, 33, 203-19. [PubMed:20572771] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  4. Mahon, B.Z., & Caramazza, A. (2009).
    Concepts and categories: a cognitive neuropsychological perspective. Annual review of psychology, 60, 27-51. [PubMed:18767921] [PMC] [WorldCat] [DOI]
  5. Bushara, K.O., Hanakawa, T., Immisch, I., Toma, K., Kansaku, K., & Hallett, M. (2003).
    Neural correlates of cross-modal binding. Nature neuroscience, 6(2), 190-5. [PubMed:12496761] [WorldCat] [DOI]
  6. Mahon, B.Z., & Caramazza, A. (2011).
    What drives the organization of object knowledge in the brain? Trends in cognitive sciences, 15(3), 97-103. [PubMed:21317022] [PMC] [WorldCat] [DOI]


(執筆者:神作 憲司、担当編集委員:定藤 規弘)