機能局在

提供:脳科学辞典
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蔵田 潔
弘前大学 大学院医学研究科 統合機能生理学講座
DOI XXXX/XXXX 原稿受付日:2012年12月6日 原稿完成日:2013年月日
担当編集委員:田中 啓治(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

図 ブロードマンの脳地図
文献[1]より

英語名:Functional localization 独:funktionelle Lokalisierung 仏:localisation fonctionnelle

 脳は共通素子である神経細胞で構成される神経回路によって機能を発揮しているが、特に大脳皮質では細胞構築を基本とする多くの領域から構成され、それぞれの領域には固有の機能が局在していることが知られている。機能局在は大脳皮質に限らず、脳の基本構成であると考えられる。例えば、脊髄においても、分節ごとに頚髄では手の、また腰髄では足の体性感覚および運動機能を有するという機能の体部位局在を有している。このような機能局在は中枢神経の全領域にわたって存在しているが、機能分化が著しいのは大脳皮質である。

 霊長類ではより高等になるほど新皮質の発達が著明であり、新皮質が大脳皮質の大半を占めているが、新皮質内では機能局在の多様な分化が進んでいる。新皮質は基本的に6層の細胞構築からなっているが、層構造は部分ごとに少しずつ異なっている。細胞構築分類と呼ばれる大脳新皮質の分類は19世紀の初頭以来、多くの研究者によって行われてきているが、ヒト脳の細胞構築分類は複数の報告があるが、その中で最も有名なのはブロードマン(Brodmann)の分類であり、今日に至るまで広く用いられている文献[1]。Brodamann分類によればヒト大脳皮質は52の領域に分類されているが、その後の電気刺激や傷害実験に始まる様々な研究により、Brodmann分類による個々の領域が機能的に特異性を有していることが確認されている。同様の細胞構築分類はサルの脳でも使われているが、いくつかの細胞構築分類があることに加え、シトクローム酸化酵素などの標識物質による分類や、解剖学的な神経結合に基づく分類などが併用されている[2]<文献4,5>。

 ヒトを含む霊長類の大脳皮質における機能局在として最も明らかになっているのは、後頭葉一次視覚野をはじめとして、後頭葉のみならず側頭葉頭頂葉に数多くの視覚領域が存在することであり、それぞれの視覚野には形態や色情報の処理から物体認知、また視覚空間の位置や運動情報の処理など独自の機能を有していることである。さらに、ヒトでは左右半球間に機能差があることが知られている。そのうち最も有名なのは、大多数のヒトでは左半球に言語野が存在することである。左中大脳動脈の血管障害によって前頭前野が傷害されることで発語傷害(運動性失語)が生じることをフランスの神経学者のブローカが報告し、この領域がブローカの運動言語中枢と呼ばれている。言語中枢を含め<文献6>、ヒト脳の多彩な機能局在が近年の機能的MRIによるイメージングなどによって報告されている<文献6>。

関連項目

参考文献

  1. 1.0 1.1 Brodmann, K.
    Vergleichende Lokalizationlehre der Grosshirnrinde in ihren Prinzipien dargestellt auf Gund des Zellenbaues
    J.A. Barth, Leipzig.1909
  2. von Bonin, G., and P. Bailey
    The Neocortex of Macaca Mulatta
    University of Illinois Press, Urbana.1947

4. Rizzolatti, G. & Luppino, G.
The cortical motor system.
Neuron; 2001, 31, 889-901.

5. Van Essen, D.C., Anderson, C.H. & Felleman, D.J.
Information processing in the primate visual system: an integrated systems perspective.
Science; 1992, 255, 419-423.

6. Hashimoto, R. & Sakai, K.L.
Specialization in the left prefrontal cortex for sentence comprehension.
Neuron; 2002, 35, 589-597.