機能獲得実験

2012年12月7日 (金) 22:36時点におけるTakahirohirabayashi (トーク | 投稿記録)による版


英:gain of function

 ある遺伝子の機能を調べる際にその遺伝子の機能や発現量を増強させることで機能を類推する実験手法。逆に遺伝子の機能や発現量を減弱させる実験は機能欠失実験と呼ばれる。 また、機能欠失実験によって得られた表現型を機能獲得実験により正常な表現型を回復する実験を特にrescue実験と呼ぶ。

機能獲得実験とは

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機能獲得実験の手法

発現量の増加

動物個体あるいは細胞に外来遺伝子を導入することで任意の遺伝子発現量を増加することができる。 外来遺伝子を導入した動物個体はトランスジェニック動物と呼ばれ現在ではあらゆる動物種で作製が可能となっている。


導入する遺伝子

 この外来遺伝子は遺伝子発現制御するプロモーター配列の下流に目的の遺伝子、さらにpolyA付加配列という構造をもつものが一般的である(図)。この外来遺伝子を構築する際、どのプロモーター配列を選択するかにより目的遺伝子の発現部位、発現時期、発現量が決まる。


遺伝子導入の方法

現在では遺伝子の導入方法として主に以下の方法が用いられている。

リン酸カルシウム法

導入する遺伝子とリン酸カルシウムで形成された複合体 特殊な装置を必要としない。

リポフェクション法

リン酸カルシウム法と同様に特殊な装置を必要とぜず、また各社から試薬が市販されているため培養細胞では広く用いられている。

エレクトロポレーション法

高電圧パルスを細胞に与えることで細胞膜構造に小孔をあけ、遺伝子を導入する方法。遺伝子導入効率は比較的高い反面、細胞生存率は低い。



パーティクルガン法

金などの高比重かつ科学的に安定な金属粒子を導入したい遺伝子でコーティングしたものを高圧ガスで射出し細胞内に物理的に導入する方法。ジーンガンとも呼ばれる。


ウイルスベクター法

マイクロインジェクション法

微細なガラス管をを介し細胞に直接遺伝子を導入する方法。 個々の細胞に対して作業が必要であるため対象とする細胞数に制限が生じるが、導入効率が高いためトランスジェニック動物作製時においては受精卵に遺伝子をマイクロインジェクション法で導入するのが一般的である。

機能の増強

アミノ酸置換による疑似リン酸化

目的のタンパク質が持つアミノ酸がリン酸化されることでその機能が増強する場合、そのアミノ酸をGlu, またはAspに置換した変異体を発現することで恒常的なリン酸化状態を擬似的に再現できる場合がある。 これはリン酸化アミノ酸が水溶液中では負電荷をもつが、Glu, Aspなどの酸性アミノ酸も負電荷をもつためである。