「機能的磁気共鳴画像法」の版間の差分

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independent component analysis
independent component analysis


 独立成分分析はデータ駆動型の解析でありブラインド信号分離の技術として多くの分野で活用されている。[[wj:主成分分析|主成分分析]](principle component analysis, PCA)と比べ、データマイニングの手法として柔軟であると考えられている。主成分分析では無相関、つまりベクトルとして直交する成分のセットが解析的に一意に定まる。これに対し独立成分分析では、互いに他の情報を持たないという特性(独立性)が大きくなるよう成分を分離する。無相関であっても独立ではないことがあるから、独立性は相関性よりも柔軟な条件である。確率変数としてデータの空間的な分布を採るか、経時変化を採るかによって、空間的独立成分分析と時間的独立成分分析が可能である。fMRIデータが空間的に高次元であることから、初期のfMRIでの活用は空間的独立成分分析により数十個の独立成分を求めるものであった。神経解剖学的に解釈可能な皮質ネットワークを得ることができデフォルトモードネットワークの同定にも使用される('''図6''')。独立成分分析は従前から脳波など電気生理データのノイズ除去に利用されてきたが、機械学習判別によって個人レベルのfMR元データから構造ノイズ成分を除去する前処理過程にも独立成分分析が利用されている(fMRIデータの前処理の項参照)。
 [[wj:独立成分分析|独立成分分析]]はデータ駆動型の解析でありブラインド信号分離の技術として多くの分野で活用されている。[[wj:主成分分析|主成分分析]](principle component analysis, PCA)と比べ、データマイニングの手法として柔軟であると考えられている。主成分分析では無相関、つまりベクトルとして直交する成分のセットが解析的に一意に定まる。これに対し独立成分分析では、互いに他の情報を持たないという特性(独立性)が大きくなるよう成分を分離する。無相関であっても独立ではないことがあるから、独立性は相関性よりも柔軟な条件である。確率変数としてデータの空間的な分布を採るか、経時変化を採るかによって、空間的独立成分分析と時間的独立成分分析が可能である。fMRIデータが空間的に高次元であることから、初期のfMRIでの活用は空間的独立成分分析により数十個の独立成分を求めるものであった。神経解剖学的に解釈可能な皮質ネットワークを得ることができデフォルトモードネットワークの同定にも使用される('''図6''')。独立成分分析は従前から脳波など電気生理データのノイズ除去に利用されてきたが、機械学習判別によって個人レベルのfMR元データから構造ノイズ成分を除去する前処理過程にも独立成分分析が利用されている(fMRIデータの前処理の項参照)。
   
   
 また、空間的標準化を行った後、複数の個人の安静時fMRIに空間的独立成分分析を適応することで、個人間に共通のネットワークを同定し(グループ独立成分分析)、グループとしての安静状態神経ネットワークを検出することも可能である。さらにこのグループRSNの各個人のデータへのあてはめ(一般線形モデル)を、時間と空間について2回行うことで、個人毎のRSNが得られる。この個人毎の安静状態神経ネットワークを用いた集団解析が可能であり<ref><pubmed> 28348512</pubmed></ref>、病態解明への応用研究も進んでいる。最近は時間分解能の高いfMRIデータが取得されるようになってきたことで、時間的ICAの応用も進み、空間的に重なり合う成分や神経連絡性とも合致する成分の抽出<ref><pubmed> 22323591</pubmed></ref>や、脳全体の広範なノイズの検出に有用であることが分かってきている。ただし独立成分分析の結果の解釈には数学的な仮定(例えば次元数や線形性等)と脳のシステム・神経-血管連関・画像ノイズの妥当性や検証に留意する必要がある<ref><pubmed> 11559959</pubmed></ref>。
 また、空間的標準化を行った後、複数の個人の安静時fMRIに空間的独立成分分析を適応することで、個人間に共通のネットワークを同定し(グループ独立成分分析)、グループとしての安静状態神経ネットワークを検出することも可能である。さらにこのグループRSNの各個人のデータへのあてはめ(一般線形モデル)を、時間と空間について2回行うことで、個人毎のRSNが得られる。この個人毎の安静状態神経ネットワークを用いた集団解析が可能であり<ref><pubmed> 28348512</pubmed></ref>、病態解明への応用研究も進んでいる。最近は時間分解能の高いfMRIデータが取得されるようになってきたことで、時間的ICAの応用も進み、空間的に重なり合う成分や神経連絡性とも合致する成分の抽出<ref><pubmed> 22323591</pubmed></ref>や、脳全体の広範なノイズの検出に有用であることが分かってきている。ただし独立成分分析の結果の解釈には数学的な仮定(例えば次元数や線形性等)と脳のシステム・神経-血管連関・画像ノイズの妥当性や検証に留意する必要がある<ref><pubmed> 11559959</pubmed></ref>。