「機能的結合」の版間の差分

(ページの作成:「福嶋 誠 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 情報科学領域 英:functional connectivity 独:funktionelle Konnektivität 仏…」)
 
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 また、より高次の統計量(相関係数は二次統計量)や非線形の統計的依存性までを反映する指標には相互情報量<ref name=Shannon1948>Shannon, C.E. (1948).<br> A mathematical theory of communication. The Bell system technical journal, 27(3), 379-423. [https://doi.org/10.1002/j.1538-7305.1948.tb01338.x PDF]</ref>[6]が、周波数空間における統計的依存性を定量化する指標にはコヒーレンス<ref name=Walter1963><pubmed>20191690</pubmed></ref>[7]、位相ロック値(phase locking value)<ref name=Lachaux1999><pubmed>10619414</pubmed></ref> [8]などがある。
 また、より高次の統計量(相関係数は二次統計量)や非線形の統計的依存性までを反映する指標には相互情報量<ref name=Shannon1948>Shannon, C.E. (1948).<br> A mathematical theory of communication. The Bell system technical journal, 27(3), 379-423. [https://doi.org/10.1002/j.1538-7305.1948.tb01338.x PDF]</ref>[6]が、周波数空間における統計的依存性を定量化する指標にはコヒーレンス<ref name=Walter1963><pubmed>20191690</pubmed></ref>[7]、位相ロック値(phase locking value)<ref name=Lachaux1999><pubmed>10619414</pubmed></ref> [8]などがある。


 上に挙げた指標は、すべて因果性を仮定しない向きなしの統計的依存性の定量化に用いられる指標であるが、向きありの統計的依存性を定量化する際に用いられる代表的な因果性の定義としてはグレンジャー因果性<ref name=Granger1969>'''Granger, C.W. (1969).'''<br>Investigating causal relations by econometric models and cross-spectral methods. Econometrica: journal of the Econometric Society, 37(3), 424-38. [https://doi.org/10.2307/1912791 PDF]</ref> [9]が挙げられる。グレンジャー因果性の定義では、「AとBの過去の値を用いた場合のBの値の予測精度が、Bのみの過去の値を用いた場合のBの値の予測精度よりも高いとき、AはBの原因である(A causes B)」とされる。グレンジャー因果性を計算する際には、ベクトル自己回帰モデルによって多変量時系列がモデル化され、本モデルに基づいた統計量からグレンジャー因果性の評価に用いられるさまざまな定量化指標<ref name=Geweke1984><pubmed>'''Geweke, J.F. (1984).'''<br>Measures of conditional linear dependence and feedback between time series. Journal of the American Statistical Association, 79(388), 907-15.</pubmed></ref> <ref name=Baccala2001><pubmed>11417058</pubmed></ref> [10, 11]が計算される。
 上に挙げた指標は、すべて因果性を仮定しない向きなしの統計的依存性の定量化に用いられる指標であるが、向きありの統計的依存性を定量化する際に用いられる代表的な因果性の定義としてはグレンジャー因果性<ref name=Granger1969>'''Granger, C.W. (1969).'''<br>Investigating causal relations by econometric models and cross-spectral methods. Econometrica: journal of the Econometric Society, 37(3), 424-38. [https://doi.org/10.2307/1912791 PDF]</ref> [9]が挙げられる。グレンジャー因果性の定義では、「AとBの過去の値を用いた場合のBの値の予測精度が、Bのみの過去の値を用いた場合のBの値の予測精度よりも高いとき、AはBの原因である(A causes B)」とされる。グレンジャー因果性を計算する際には、ベクトル自己回帰モデルによって多変量時系列がモデル化され、本モデルに基づいた統計量からグレンジャー因果性の評価に用いられるさまざまな定量化指標<ref name=Geweke1984>'''Geweke, J.F. (1984).'''<br>Measures of conditional linear dependence and feedback between time series. Journal of the American Statistical Association, 79(388), 907-15.</pubmed></ref> <ref name=Baccala2001><pubmed>11417058</pubmed></ref> [10, 11]が計算される。


 グレンジャー因果性とは異なりベクトル自己回帰モデルを仮定せずに、情報量ベースで向きありの統計的依存性を定量化する指標には移動エントロピー<ref name=Vicente2011><pubmed>20706781</pubmed></ref>[12]がある。なお、因果性を仮定した向きありの統計的依存性を定量化するこれらの指標は、後述する有効結合の推定値としてみなされる場合がある<ref name=Vicente2011 /><ref name=Friston2011><pubmed>22432952</pubmed></ref> [12, 13]。
 グレンジャー因果性とは異なりベクトル自己回帰モデルを仮定せずに、情報量ベースで向きありの統計的依存性を定量化する指標には移動エントロピー<ref name=Vicente2011><pubmed>20706781</pubmed></ref>[12]がある。なお、因果性を仮定した向きありの統計的依存性を定量化するこれらの指標は、後述する有効結合の推定値としてみなされる場合がある<ref name=Vicente2011 /><ref name=Friston2011><pubmed>22432952</pubmed></ref> [12, 13]。