「水道周囲灰白質」の版間の差分

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 PAGの背側および背外側部への電気刺激やグルタミン酸作動薬の投与によって、攻撃(aggression)、防御(defence)、威嚇(rage)などの反応が誘発される。その尾側の領域の刺激によって逃走反応(flighting)が、腹外側の刺激では、すくみ反応(freezing)が誘発される。防御反応には、排尿(micturition)、脱糞(defecation)、眼球突出(exophthlmus)などが伴うことがある。  情動の中枢とされる大脳辺縁系(海馬、扁桃体、中隔核)や分界条床核から直接に、あるいは視床下部を介して入力を受ける<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。ネコでは、視床下部外側部からPAGへの入力は、攻撃反応を促進し、視床下部内側部からの入力は、防御/威嚇反応の促進、攻撃反応の抑制に関与する <ref name=ref7><pubmed>7633640</pubmed></ref>。これらの入力系はNMDAレセプターを介したグルタミン酸作動性ニューロンが主であるが、視床下部内側部からは、サブスタンスP作動性ニューロンも、防御/威嚇反応の促進と、攻撃反応の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。  扁桃体基底核群(basal complex)からは、グルタミン酸作動性ニューロンがPAGに直接に入力し、防衛/威嚇反応を促進する<ref name=ref7 />。一方、扁桃体中心核(central amygdale)からはオピオイド作動性ニューロンが投射し、μレセプターを介して防御/威嚇反応を抑制する。<ref name=ref7 />。扁桃体内側核(medial amygdala)からは、サブスタンスP作動性ニューロンが視床下部内側部に投射し、視床下部内側部―PAGの防御/威嚇反応の促進、攻撃行動の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。ラットでは、doesal PAGへのセロトニンは5HT1Aレセプターを介して防御反応を抑制し<ref><pubmed>1410130</pubmed></ref>、マウスでは、dorsal PAGへのCRFが防御反応を促進する<ref><pubmed> 17095103</pubmed></ref>。  情動行動の発現系は、他の行動の発現系と相互抑制の関係にあり、たとえば上記のように攻撃行動とそれに対する防御/威嚇反応は、PAGのレベルで拮抗関係にある。この抑制にはGABA作動性ニューロンが関与すると考えられている<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。また、マウスでは、PAG吻外側部へのモルフィンの投与によって、生きた昆虫への狩猟行動(hunting)が促進し、育児行動が抑制される<ref><pubmed>16510737</pubmed></ref>。コレシストキニン(CCK)は、モルフィンの作用に拮抗的に働く<ref><pubmed>17194502</pubmed></ref>。  
 PAGの背側および背外側部への電気刺激やグルタミン酸作動薬の投与によって、攻撃(aggression)、防御(defence)、威嚇(rage)などの反応が誘発される。その尾側の領域の刺激によって逃走反応(flighting)が、腹外側の刺激では、すくみ反応(freezing)が誘発される。防御反応には、排尿(micturition)、脱糞(defecation)、眼球突出(exophthlmus)などが伴うことがある。  情動の中枢とされる大脳辺縁系(海馬、扁桃体、中隔核)や分界条床核から直接に、あるいは視床下部を介して入力を受ける<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。ネコでは、視床下部外側部からPAGへの入力は、攻撃反応を促進し、視床下部内側部からの入力は、防御/威嚇反応の促進、攻撃反応の抑制に関与する <ref name=ref7><pubmed>7633640</pubmed></ref>。これらの入力系はNMDAレセプターを介したグルタミン酸作動性ニューロンが主であるが、視床下部内側部からは、サブスタンスP作動性ニューロンも、防御/威嚇反応の促進と、攻撃反応の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。  扁桃体基底核群(basal complex)からは、グルタミン酸作動性ニューロンがPAGに直接に入力し、防衛/威嚇反応を促進する<ref name=ref7 />。一方、扁桃体中心核(central amygdale)からはオピオイド作動性ニューロンが投射し、μレセプターを介して防御/威嚇反応を抑制する。<ref name=ref7 />。扁桃体内側核(medial amygdala)からは、サブスタンスP作動性ニューロンが視床下部内側部に投射し、視床下部内側部―PAGの防御/威嚇反応の促進、攻撃行動の抑制に関与する<ref><pubmed>14642448</pubmed></ref>。ラットでは、doesal PAGへのセロトニンは5HT1Aレセプターを介して防御反応を抑制し<ref><pubmed>1410130</pubmed></ref>、マウスでは、dorsal PAGへのCRFが防御反応を促進する<ref><pubmed> 17095103</pubmed></ref>。  情動行動の発現系は、他の行動の発現系と相互抑制の関係にあり、たとえば上記のように攻撃行動とそれに対する防御/威嚇反応は、PAGのレベルで拮抗関係にある。この抑制にはGABA作動性ニューロンが関与すると考えられている<ref><pubmed>11263761</pubmed></ref>。また、マウスでは、PAG吻外側部へのモルフィンの投与によって、生きた昆虫への狩猟行動(hunting)が促進し、育児行動が抑制される<ref><pubmed>16510737</pubmed></ref>。コレシストキニン(CCK)は、モルフィンの作用に拮抗的に働く<ref><pubmed>17194502</pubmed></ref>。  
自律神経系の変動(血圧、心拍の調節)
情動行動の発現に伴って、心拍、血圧の変動など、交感神経系の活性化が伴う。PAGの背側から背外側部への電気刺激、NMDA、ホモシステイン酸などのグルタミン酸作動薬によって、交感神経活動の上昇、血圧、心拍数の上昇などが誘発され(8202441)(20504909)、PAG腹外側部への刺激によって、血圧、心拍数の低下が起こる(8202441)。
視床下部背内側核 (dorsomedial hypothalamic nucleus: DMH)への電気刺激によって、腎交感神経活動や血圧の上昇が誘発されるが、これらの反応は、PAG背外側部へのエンドカンナビノイド(ECB)拮抗剤や、セロトニンの投与によって減弱する(21228344、19303372)。したがって、DMHからPAGへの交感神経性入力に、ECBを介しており、セロトニンはPAGにおける自律神経系の亢進に抑制的に作用すると言える。 


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