水道周囲灰白質

2012年5月24日 (木) 20:12時点におけるYoshimasakoyama (トーク | 投稿記録)による版

中脳周囲灰白質 (periaqueductal gray)

解剖

第三脳室と第四脳室を結ぶ細い管(中脳水道)を取り巻くハート形の細胞集団。水道周囲灰白質ともいう。ヒトでは、外側、内側、および背側部に分けられ、外側部は、さらに背外側部と腹外側部に細分される。ラットでは、外側、内側の区別はなく、背側部(背内側部、背外側部)とその腹側の、外側部に分けられる。中脳周囲灰白質の正中腹側部には、吻側からDarkschewisch核、Edinger-Westphal核 (エディンガー・ウェストファル核)(動眼神経副核)、動眼神経核、滑車神経核などが続く。正中腹側後半部には、背側縫線核が拡がる。

痛覚抑制作用

上行性抑制系と下行性抑制系があり、上行性抑制系は、背側縫線核から視床腹側基底核群や髄板内核に投射するセロトニン作動性ニューロンが痛覚受容ニューロンの反応を抑制する(*****)。 視床髄板内核には、モルフィンが作用し、痛覚受容ニューロンの反応を抑制する(*****)。 

下行性抑制系は、A5、A6、A7を起始とするノルアドレナリン作動性ニューロン群と、大縫線核(Raphe Magnus: RMn)からのセロトニン作動性ニューロン群からなり、いずれも、脊髄後核の痛覚受容ニューロンを抑制する。PAGの背内側部(dmPAG)、腹外側部(vmPAG)からRMnにグルタミン酸作動性ニューロンが投射する。このPAGニューロンは、PAG内のGABA作動性ニューロンの抑制を受けており[1]、視床下部から投射するβエンドルフィンニューロン、PAG内のエンケファリン作動性ニューロンは、このGABA作動性ニューロンを抑制することにより、痛覚抑制を引き起こす(1450948)。そのほか、PAGではさまざまなペプタイドが痛覚抑制に関与している。RMnに投射するPAGニューロンの一部は、ニューロテンシンを伝達物質にもち、RMnに興奮性に作用する(6518391)。ニューロテンシン作動性ニューロンは、PAG内の介在ニューロンとしても存在し、RMnに投射するグルタミン酸作動性ニューロンに興奮性に(11287471)、GABA作動性ニューロンには抑制性に作用することによって(19359367)、痛覚抑制を起こす。

  1. Li, A.H., Hwang, H.M., Tan, P.P., Wu, T., & Wang, H.L. (2001).
    Neurotensin excites periaqueductal gray neurons projecting to the rostral ventromedial medulla. Journal of neurophysiology, 85(4), 1479-88. [PubMed:11287471] [WorldCat] [DOI]