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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0046287 金生 由紀子]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0046287 金生 由紀子]</font><br> | ||
''東京大学大学院医学系研究科''<br> | ''東京大学大学院医学系研究科''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年6月3日 原稿完成日:2015年6月5日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
</div> | </div> | ||
英語名:attention-deficit/hyperactivity disorder 独:Aufmerksamkeitsdefizit-/Hyperaktivitätsstörung 仏:trouble du déficit de l'attention | 英語名:attention-deficit/hyperactivity disorder 独:Aufmerksamkeitsdefizit-/Hyperaktivitätsstörung 仏:trouble du déficit de l'attention/hyperactivité | ||
略語:ADHD | 略語:ADHD | ||
同義語:注意欠陥・多動性障害、注意欠如・多動症 | |||
{{box|text= 注意欠如・多動性障害は、不注意、多動性、衝動性という症状で定義され、12歳以前から症状を認める発達障害である。様々な精神疾患を併発することも特徴の一つである。成人後も機能障害が残存する場合が少なくないことが明らかになり、成人での診断・治療にも関心が高まっている。歴史的に早い時期から脳機能障害と認識されており、それを踏まえた病態モデルが検討されてきた。実行機能及び報酬系の障害に加えて、最近では時間的処理や情動制御の障害も想定されている。治療は、本人及び親をはじめとする周囲の人々がADHDの特性を適切に理解して対応できるようにする心理社会的治療と薬物療法が中心である。}} | {{box|text= 注意欠如・多動性障害は、不注意、多動性、衝動性という症状で定義され、12歳以前から症状を認める発達障害である。様々な精神疾患を併発することも特徴の一つである。成人後も機能障害が残存する場合が少なくないことが明らかになり、成人での診断・治療にも関心が高まっている。歴史的に早い時期から脳機能障害と認識されており、それを踏まえた病態モデルが検討されてきた。実行機能及び報酬系の障害に加えて、最近では時間的処理や情動制御の障害も想定されている。治療は、本人及び親をはじめとする周囲の人々がADHDの特性を適切に理解して対応できるようにする心理社会的治療と薬物療法が中心である。}} | ||
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==診断・鑑別診断== | ==診断・鑑別診断== | ||
不注意および/または多動性―衝動性が持続的に認められて、機能または発達の妨げとなっている場合、ADHDと診断される。DSM-5の診断基準は、以下のとおりである<ref name=ref1>American Psychiatric Association, 2013. <br>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed. <br>''American Psychiatric Association'', Arlington, VA.</ref>。 | 不注意および/または多動性―衝動性が持続的に認められて、機能または発達の妨げとなっている場合、ADHDと診断される。DSM-5の診断基準は、以下のとおりである<ref name=ref01>'''高橋三郎、大野裕(監訳)染矢俊幸、神庭重信、尾崎紀夫、三村將、村井俊哉(訳)'''<br>日本精神神経学会(日本語版用語監修):DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル<br>''医学書院''、2014</ref> <ref name=ref1>American Psychiatric Association, 2013. <br>Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed. <br>''American Psychiatric Association'', Arlington, VA.</ref>。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+表. ADHDの診断基準 DSM-5に基づく<ref name=ref1/> | |+表. ADHDの診断基準 DSM-5に基づく<ref name=ref01 /> <ref name=ref1/> | ||
|- | |- | ||
| '''A. (1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動性ー衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの'''<br> | | '''A. (1)および/または(2)によって特徴づけられる、不注意および/または多動性ー衝動性の持続的な様式で、機能または発達の妨げとなっているもの'''<br> | ||
'''(1) | '''(1) 不注意:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである'''<br> | ||
''注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。'' | ''注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。'' | ||
:(a) 学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)<br> | :(a) 学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)<br> | ||
47行目: | 47行目: | ||
:(h) しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では、無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう<br> | :(h) しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では、無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう<br> | ||
:(i) しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい<br> | :(i) しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい<br> | ||
'''(2) | '''(2) 多動性および衝動性:以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである'''<br> | ||
''注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。'' | ''注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。'' | ||
:(a) しばしば手足をそわそわと動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。<br> | :(a) しばしば手足をそわそわと動かしたりトントン叩いたりする。またはいすの上でもじもじする。<br> | ||
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:(i) しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)。<br> | :(i) しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)。<br> | ||
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|'''B. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。''' | |'''B. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。''' | ||
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|'''C. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。''' | |'''C. 不注意または多動性―衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場;友人や親戚といるとき;その他の活動中)において存在する。''' | ||
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|'''D. これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。''' | |'''D. これらの症状が、社会的、学業的または職業的機能を損なわせているまたはその質を低下させているという明確な証拠がある。''' | ||
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|'''E. その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。''' | |'''E. その症状は、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患(例:気分障害、不安症、解離症、パーソナリティ障害、物質中毒または離脱)ではうまく説明されない。''' | ||
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