「腸管神経系」の版間の差分

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 消化管運動の局所反射は、粘膜への機械的・化学的刺激や腸管壁への伸展刺激により誘発される。腸管の伸展刺激による反射は粘膜と粘膜下組織を除去しても発生するので、伸展刺激に反応する内在性一次求心性神経線維は筋層に存在し、筋層間神経叢に存在する介在神経と運動神経により、反射が誘発されることを示している。しかしながら、ヒトを含む大動物では、縦走筋や輪走筋を支配する運動神経は粘膜下神経叢にも存在し、運動反射に関与している<ref name=ref1 />。内在性運動反射に関与する内在性一次求心性神経は介在神経とslow EPSPによりシナプス結合し、運動神経は平滑筋に分布している。
 消化管運動の局所反射は、粘膜への機械的・化学的刺激や腸管壁への伸展刺激により誘発される。腸管の伸展刺激による反射は粘膜と粘膜下組織を除去しても発生するので、伸展刺激に反応する内在性一次求心性神経線維は筋層に存在し、筋層間神経叢に存在する介在神経と運動神経により、反射が誘発されることを示している。しかしながら、ヒトを含む大動物では、縦走筋や輪走筋を支配する運動神経は粘膜下神経叢にも存在し、運動反射に関与している<ref name=ref1 />。内在性運動反射に関与する内在性一次求心性神経は介在神経とslow EPSPによりシナプス結合し、運動神経は平滑筋に分布している。


 空腹期伝播性収縮運動(IMMC))は、食後に残った残渣や過剰に増殖した小腸の腸内[[細菌]]などを取り除き、次の食事に備えるための運動と考えられている。ヒトでは食間期に強い収縮波が90分間隔で胃前庭部から回腸末端まで移動するが、移動速度は1分間に1~4cmと遅い。小腸におけるIMMCはTTXの局所投与やニコチン様受容体の阻害薬であるヘキサメソニウムにより抑制されるため、腸管神経系により制御されていることが考えられる。大腸運動も内容物を輸送するために腸管神経系により制御されている。実際、ヒルシュスプリング病のような先天的に直腸と大腸の腸管神経叢が欠損している患者では、大腸運動はうまく機能しない<ref name=ref38/ >。
 空腹期伝播性収縮運動(IMMC))は、食後に残った残渣や過剰に増殖した小腸の腸内[[細菌]]などを取り除き、次の食事に備えるための運動と考えられている。ヒトでは食間期に強い収縮波が90分間隔で胃前庭部から回腸末端まで移動するが、移動速度は1分間に1~4cmと遅い。小腸におけるIMMCはTTXの局所投与やニコチン様受容体の阻害薬であるヘキサメソニウムにより抑制されるため、腸管神経系により制御されていることが考えられる。大腸運動も内容物を輸送するために腸管神経系により制御されている。実際、ヒルシュスプリング病のような先天的に直腸と大腸の腸管神経叢が欠損している患者では、大腸運動はうまく機能しない<ref name=ref38 />。


==水や電解質の輸送および血流の制御==
==水や電解質の輸送および血流の制御==
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 小腸と大腸における水と電解質の輸送は、腸管神経系により制御されている。この反射は脳幹にある循環中枢を介した血圧や血流量の変化に反応する抑制性交感神経経路から独立している。電解質や水の輸送および[[イオン]]に対する透過性の調節は、神経伝達物質としてVIPとAChを利用する分泌運動神経により制御されている。ほとんどの分泌運動神経の細胞体は粘膜[[下神経節]]に存在する。また、水や電解質の分泌には分泌される水や電解質を供給するための血管拡張を伴う。
 小腸と大腸における水と電解質の輸送は、腸管神経系により制御されている。この反射は脳幹にある循環中枢を介した血圧や血流量の変化に反応する抑制性交感神経経路から独立している。電解質や水の輸送および[[イオン]]に対する透過性の調節は、神経伝達物質としてVIPとAChを利用する分泌運動神経により制御されている。ほとんどの分泌運動神経の細胞体は粘膜[[下神経節]]に存在する。また、水や電解質の分泌には分泌される水や電解質を供給するための血管拡張を伴う。