「パーソナリティ障害」の版間の差分

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===生物学的要因===
===生物学的要因===
 精神障害の生物学的要因の基底には、遺伝的要因がある。パーソナリティ障害の遺伝的要因は、その特性が同じ家系の人に見出されることが多い、[[一卵性双生児]]で[[二卵性双生児]]よりも一致しやすい、といった臨床遺伝学的研究によって確認されている。Torgersen, S.らの[[双生児研究]]<ref><pubmed> 11086146 </pubmed></ref>では、パーソナリティ障害の遺伝性が0.5~0.6であると算出されている。Silverman, J.M.らの家族研究(1991)では、境界性パーソナリティ障害の感情不安定と衝動性とに家族集積性のあることが認められている<ref name=ref8><pubmed>18638645</pubmed></ref>。
 精神障害の生物学的要因の基底には、遺伝的要因がある。パーソナリティ障害の遺伝的要因は、その特性が同じ家系の人に見出されることが多い、[[一卵性双生児]]で[[二卵性双生児]]よりも一致しやすい、といった臨床遺伝学的研究によって確認されている。Torgersen, S.らの[[双生児研究]]<ref><pubmed> 11086146 </pubmed></ref>では、パーソナリティ障害の遺伝性が0.5~0.6であると算出されている。Silverman, J.M.らの家族研究<ref><pubmed>1897620 </pubmed></ref>では、境界性パーソナリティ障害の感情不安定と衝動性とに家族集積性のあることが認められている<ref name=ref8><pubmed>18638645</pubmed></ref>。


 神経生理学的研究でもパーソナリティ障害と生物学的特性との間の様々な関連が見いだされている<ref name=ref8 />。例えば、反社会性、境界性パーソナリティ障害では、その衝動性が[[セロトニン]]系の機能低下と関連しているという知見の報告がある。中枢神経系の画像研究でも多くの知見がもたらされている。例えば、境界性パーソナリティ障害では、[[帯状束]]のセロトニン系の反応低下といった[[辺縁系]]と[[前頭葉]]の回路の機能低下の報告が多くなされている。また、虐待を受けてきた境界性パーソナリティ障害患者において[[脳下垂体]]、[[海馬]]が小さいという所見も注目されている。
 神経生理学的研究でもパーソナリティ障害と生物学的特性との間の様々な関連が見いだされている<ref name=ref8 />。例えば、反社会性、境界性パーソナリティ障害では、その衝動性が[[セロトニン]]系の機能低下と関連しているという知見の報告がある。中枢神経系の画像研究でも多くの知見がもたらされている。例えば、境界性パーソナリティ障害では、[[帯状束]]のセロトニン系の反応低下といった[[辺縁系]]と[[前頭葉]]の回路の機能低下の報告が多くなされている。また、虐待を受けてきた境界性パーソナリティ障害患者において[[脳下垂体]]、[[海馬]]が小さいという所見も注目されている。