「ヒスタミン」の版間の差分

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== ヒスタミン神経系と中枢機能 ==
== ヒスタミン神経系と中枢機能 ==
 ヒスタミンニューロン細胞体は、視床下部乳頭体(tuberomamillary nucleus)に集まっている。E1, E2, E3, E4, E5の5つの亜核に分類されている[27,28]。そこから脳内の各部位に投射している[29,30]。大脳皮質、扁桃体、黒質、線条体、海馬、視床、視床下部、小脳、脳幹部、脊髄などである。ヒスタミン神経の終末部位はバリコシティ(varicosity)と呼ばれるこぶ上の膨らみを多数形成し、そこのシナプス小胞からヒスタミンが遊離される。密接なシナプスの形成は殆ど見られない。
 [[ヒスタミンニューロン細胞体]]は、[[視床下部乳頭体]](tuberomamillary nucleus)に集まっている。E1, E2, E3, E4, E5の5つの[[亜核]]に分類されている<ref><pubmed>14656302</pubmed></ref><ref>'''千葉政一, 森脇千夏, 伊奈啓輔, 藤倉義久'''<br>摂食と肥満における視床下部神経ヒスタミンの役割<br>''創薬へ向けて 日本薬理学雑誌: 147:48-55 '':2016</ref>[27,28]。そこから脳内の各部位に投射している<ref><pubmed>12563283</pubmed></ref><ref name=Haas2008><pubmed>18626069</pubmed></ref>[29,30]。[[大脳皮質]]、[[扁桃体]]、[[黒質]]、[[線条体]]、[[海馬]]、[[視床]]、[[視床下部]]、[[小脳]]、[[脳幹部]]、[[脊髄]]などである。ヒスタミン神経の終末部位は[[バリコシティ]](varicosity)と呼ばれるこぶ上の膨らみを多数形成し、そこの[[シナプス小胞]]からヒスタミンが遊離される。密接なシナプスの形成は殆ど見られない。


 ヒスタミンニューロンに発現している受容体として、GABAA receptor、GABAB receptor、nACh receptor、5-HT2 receptor、AMPA receptor、NMDA receptor、orexin receptor、TRH receptor、glycine receptor、P2X receptor、P2Y receptor、galanin receptorが判っている[30]。
 ヒスタミンニューロンに発現している受容体として、GABAA receptor、GABAB receptor、nACh receptor、5-HT2 receptor、AMPA receptor、NMDA receptor、orexin receptor、TRH receptor、glycine receptor、P2X receptor、P2Y receptor、galanin receptorが判っている<ref name=Haas2008/>[30]。
ヒスタミンニューロンは自発発火をしている [30]。主な投射先である視床下部において、ヒスタミン遊離量は活動期に多く、休息期に少ないという日内リズムを示す[31]。


 上述のように、ヒスタミンニューロンは様々な脳部位からの入力を受け、神経線維を脳のほとんどすべての部位に送っている。ヒスタミンニューロンは均一ではなく、入力を受ける脳部位、投射部位に従って種々のタイプが存在すると考えられる[32]。
 ヒスタミンニューロンは[[自発発火]]をしている<ref name=Haas2008/> [30]。主な投射先である視床下部において、ヒスタミン遊離量は活動期に多く、休息期に少ないという[[日内リズム]]を示す<ref><pubmed>1313592</pubmed></ref>[31]。


 H1受容体は、主として視床下部、脳幹、視床、大脳皮質に発現が見られ、H2受容体は、大脳基底核、扁桃体、海馬、大脳皮質に発現が見られる[30]。H3受容体は各種の神経系のシナプス前膜に存在し、ヒスタミンの他、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン、グルタミン酸、GABAの遊離を抑制する。
 上述のように、ヒスタミンニューロンは様々な脳部位からの入力を受け、神経線維を脳のほとんどすべての部位に送っている。ヒスタミンニューロンは均一ではなく、入力を受ける脳部位、投射部位に従って種々のタイプが存在すると考えられる<ref><pubmed>22586376</pubmed></ref>[32]。
 
 H1受容体は、主として視床下部、脳幹、視床、大脳皮質に発現が見られ、H2受容体は、[[大脳基底核]]、扁桃体、海馬、大脳皮質に発現が見られる<ref name=Haas2008/>[30]。H3受容体は各種の神経系のシナプス前膜に存在し、ヒスタミンの他、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミン、グルタミン酸、GABAの遊離を抑制する。


 ヒスタミンの中枢機能は、2つに大別される。
 ヒスタミンの中枢機能は、2つに大別される。
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#ニューロン終末部位のH3受容体に作用し、ヒスタミン、ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの遊離抑制による作用
#ニューロン終末部位のH3受容体に作用し、ヒスタミン、ドパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの遊離抑制による作用


 H1受容体、H2受容体を介した機能としては、睡眠・覚醒[33]、学習記憶[34]、食欲調節[35]などがある。これらの機能を担う神経回路の特定のニューロンに、H1受容体、あるいはH2受容体が発現していて、ヒスタミンが作用することによりニューロン活動を調節(modulate)していると考えられる。
 H1受容体、H2受容体を介した機能としては、[[睡眠]]・[[覚醒]]<ref><pubmed>21318261</pubmed></ref>[33]、[[学習記憶]]<ref><pubmed>28838882</pubmed></ref>[34]、[[食欲調節]]<ref><pubmed>16584790</pubmed></ref>[35]などがある。これらの機能を担う神経回路の特定のニューロンに、H1受容体、あるいはH2受容体が発現していて、ヒスタミンが作用することによりニューロン活動を調節(modulate)していると考えられる。


 H3受容体を介した機能としては、各種伝達物質の遊離調節によるものが考えられる。H3受容体がもともとconstitutive activityが高い受容体であることを考えると、正常時は脳全般の活動を大まかに調節していると考えてよい。むしろ、H3受容体拮抗薬(インバースアゴニスト)の作用が重要であり、各種伝達物質の遊離量を増やすことで、種々の病態の改善が期待できる[36,37]。
 H3受容体を介した機能としては、各種伝達物質の遊離調節によるものが考えられる。H3受容体がもともとconstitutive activityが高い受容体であることを考えると、正常時は脳全般の活動を大まかに調節していると考えてよい。むしろ、H3受容体拮抗薬(インバースアゴニスト)の作用が重要であり、各種伝達物質の遊離量を増やすことで、種々の病態の改善が期待できる<ref><pubmed>21414671</pubmed></ref><ref><pubmed> 23109919</pubmed></ref>[36,37]。


== 精神疾患との関連 ==
== 精神疾患との関連 ==

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